落ち葉と焼き芋と青春の煙。
校庭の隅。
放課後、俺たちはほうきと熊手を手にして立っていた。
ユウ「……で、これは何の儀式?」
先生「お前らが撒いた笑いの種を、自分で掃除しろ」
ダイキ「それ、いい話っぽく言ってますけど罰なんすよね?」
先生「気づくの遅ぇよ」
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◆ 落ち葉との戦い
ユウ「おい、カズ、そっちまとめすぎ!山が富士山だぞ!」
カズ「整理整頓は心の鏡だよ」
ダイキ「うるせぇ、男子校の鏡になれ!」
タクミ「いや共学だろ、うちら」
ユウ「(あ、そうだった)」
落ち葉が風で舞い上がり、
まるで秋そのものが俺たちをからかってるようだった。
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◆ 悪ノリ、発動。
ダイキ「なぁ……この量、もったいなくね?」
ユウ「……確かに」
カズ「ちょっと待て、その目はやめろ」
タクミ「火をつける気だな?」
ユウ「いや違う、“愛”を灯すんだよ」
ダイキ「お前、詩人か放火魔かどっちかにしろ!」
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◆ 焼き芋、はじまる。
気づけばダイキが家から持ってきたホイルを取り出していた。
「サツマイモ、常備してるから」
「どんな生活スタイルだよ!」
落ち葉を集め、火をつけ、香ばしい煙が立ちのぼる。
その瞬間——
先生「おい!!校内で何燃やしてんだ!!」
ユウ「焼き芋です!!」
先生「どの口が言ってんだ!!」
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◆ 逃げる杏仁豆腐
煙が校舎にまで流れこみ、
女子の悲鳴と購買のおばちゃんの怒号が響く。
タクミ「これ完全に火災騒ぎだろ!!」
カズ「ユウ!水!水!!」
ユウ「そんな都合よく水なんて──あった!!自販機の隣!!」
ダイキ「ペットボトル水!?買うの!?!?」
ユウ「青春は課金制だ!!!」
全員「ばっかじゃねぇの!!!」
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◆ そして伝説へ
結局、火はすぐに消し止められた。
焼き芋は半分炭。
先生は完全にブチギレ。
先生「お前ら、学習能力ゼロか!」
ユウ「でも、焼き芋うまいっす」
先生「……ちょっとよこせ」
もぐ。
先生「……悪くねぇな」
全員「食ったァァァァァ!!!」
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◆ 夕暮れの校庭で。
ユウ「なぁ、バカやって怒られて、それでも笑ってさ」
カズ「きっと、こういうのが青春なんだよ」
ダイキ「……焼き芋の味、忘れねぇわ」
タクミ「いや、炭の味だろ」
ユウ「青春はちょっと焦げてるくらいがいいんだよ」
燃えカスの煙が、秋空にゆらめいて消えていった。