恋するおにぎり大作戦!
後夜祭、二日目の夜。
俺たち杏仁豆腐は、再びおにぎりを握っていた。
前回の“地獄ロシアンおにぎり”からまったく反省していない。
ダイキ「なぁ、今回はイタズラじゃなくて“夢”を詰めようぜ」
ユウ「夢?」
カズ「どうせまたくだらないこと考えてるんだろ」
ダイキ「フッフッフ……“連絡先入りおにぎり”だ」
タクミ「バカじゃねぇの?」
ユウ「いや待て、嫌いじゃないぞ、その発想」
つまり──
女子に渡すおにぎりの中に、自分のLINE IDやメッセージをこっそり仕込む。
当たった子と仲良くなれるかも!?という、男子高校生脳100%の作戦である。
ユウ「で、どうやって入れる?紙入れたらバレるよな」
カズ「米粒でQRコード作る?」
ダイキ「お前、天才か狂人かどっちかだな」
タクミ「俺、筆で“タクミ参上♡”って書いて海苔に貼る」
ユウ「ダサっ!」
そんなくだらない話をしながら、俺たちは笑い転げつつ夜食を完成させた。
──そして翌日。
配布ブースに並ぶ女子たち。
男子たちはソワソワしながら様子を見守る。
カズ「……誰か、読んでるぞ」
ダイキ「マジか!?どの子!?」
タクミ「金髪っぽい子が海苔見てる!」
ユウ「えっ、それ俺の隣のクラスの!」
金髪の女子が、おにぎりをまじまじと見つめて──
眉をひそめた。
「……『タクミ参上♡』って何?」
タクミ「やべぇ、声に出された!!」
ユウ「はい死亡〜〜〜〜!!」
カズ「心の中で読まれる前提だったのに!」
ダイキ「もはや羞恥プレイ!!」
混乱の中、さらに悲劇は続く。
「……ねぇ、このおにぎり、なんか中に紙入ってる」
別の女子が、見事にユウ特製の「LINE ID入りおにぎり」を発掘。
中から出てきたのは、油まみれのメモ紙。
『ゆうです!一緒に音楽の話しませんか!』
カズ「うわぁぁぁ、湿ってる!!」
ユウ「もうやめて!俺の心が折れる!!」
タクミ「ていうかそれ、衛生的にアウトだから!」
最終的に、おにぎりブースは教師陣に回収された。
先生(例の佐久間)が現れて一言。
先生「……“恋も飯も、腹八分目”ってな」
ユウ「うまいこと言ってるけど、全部バレてる!!」
俺たちは机に突っ伏して笑った。
ロマンは爆死したけど、それでもなぜか胸の奥が熱かった。
こういうくだらない夜を、俺たちはきっと一生覚えてる。