後夜祭パニック!おにぎりは爆弾
後夜祭の夜。
体育館の裏で、俺たち杏仁豆腐は円になって座っていた。
生徒会が用意した「ありがとうおにぎり」を、完全にロシアン仕様にしたのは──言うまでもなく俺たちだ。
ユウ「さぁーて、どれが地雷かねぇ」
ダイキ「地雷というか兵器だろ」
カズ「なんだっけ?今回のラインナップ」
タクミ「イチゴジャム、カラシ、グミ、あと……何これ?」
ユウ「キムチ+板チョコの“融合系”」
カズ「お前、悪魔か」
じゃんけんもそこそこに、全員で一斉にかぶりつく。
──カラシ。
──グミ。
──イチゴジャム。
──キムチ+板チョコ。
タクミ「ッッッぶぁぁぁ!!!舌が燃えるっ!!」
ユウ「王子、見事な火力だな」
ダイキ「俺の歯、グミで折れるかと思った!」
カズ「ジャムは意外とアリ……いや、やっぱ無理!」
腹を抱えて笑ってると、背後からぬるりとした気配。
「……お前ら、なにしてんだ」
振り向くと、担任の佐久間先生。
腕を組んで仁王立ち。目が完全に“見抜くモード”。
ユウ「せ、先生!?えっとこれは、友情の証というか!」
先生「友情(食品テロ)か。ほう、なら一個もらおう」
先生、まさかの実食。
一瞬で顔がゆがむ。
先生「……ワサビだな。チューブごと入ってる」
ユウ「えっ、それ仕込んだの誰!?」
カズ「知らん、俺じゃない!」
ダイキ「俺も!てか入れてねぇよ!」
先生「……ユウ、お前だな」
ユウ「なんでわかるんすか!?」
先生「お前、バカな時ほど眉が上がる」
ユウ「観察眼エグいな先生!」
先生は苦しみながらも続ける。
先生「グミ入りは……ダイキ。カラシは……タクミ。イチゴジャムは……カズ」
全員「なんで全部当たるんだよ!!!」
先生「授業中にお前らの好物と悪巧みを観察してるからな」
ユウ「生徒観察スキル高っ!」
先生は涙目で、それでも少し笑った。
先生「まぁ……青春ってのは、くだらないほど、ちゃんと光るもんだ」
ユウ「先生、それ泣きながら言うセリフじゃないっすよ」
先生「ワサビが……効いてるだけだ」
俺たちは笑い転げた。
夜の冷たい空気の中、笑い声だけがずっと残っていた。