笑ったあとは、練習ターイム!
お化け屋敷の準備で大爆笑した放課後。
「……なぁ」
タクミが言った。
「このままじゃ文化祭のステージ、笑い者どころか事故だぞ」
一瞬静かになる教室。
笑いすぎて涙を流した俺たちも、現実を思い出した。
「……そうだった。俺たち、バンドだった」
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練習スタジオへ
全員でチャリを飛ばし、いつもの狭いスタジオに入る。
アンプの音、スティックを握る音、ベースの低音。
一気に空気が切り替わる。
「よし、合わせるぞ」
カズがギターを鳴らす。
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本気モード、でもやっぱりバカ
イントロからタクミが歌う。
「♪世界が灰色に沈む――」
お化け屋敷のタイツ姿を思い出して吹き出すダイキ。
「おい!笑うな!」
「ごめん、灰色って聞くと……!」
練習はすぐ中断。
再度仕切り直して演奏開始。
今度は俺がドラムを盛大にズレる。
「ユウ!リズム感どこ行った!」
「俺のリズムは心臓にしかない!」
「心停止寸前だわ!」
⸻
奇跡の瞬間
何度も崩れ、笑い、ツッコまれ。
でも、ふとした瞬間に全員の音がバシッと噛み合った。
「――っ!!」
スタジオに鳥肌が立つ。
「今の……やばくね?」
「マジで曲になってたぞ!」
「おいおい、これ本番決まるんじゃね?」
ほんの数秒の奇跡。
それだけで、俺たちはまた爆笑して、そして本気になれた。
⸻
「よし、文化祭まであと少し……」
「モジモジくんは忘れろ」
「忘れられるか!」
笑いと真剣がごちゃ混ぜの俺たち杏仁豆腐の練習は、今日も終わらなかった。