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青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
14/31

歌詞持ち寄り会

放課後、音楽室に集まった俺たち。

「各自、歌詞を書いてきたか?」

カズが仕切りモードで言うと、全員ニヤニヤしながらプリントやノートを取り出した。



タクミ(イケメンボーカル)


「まずは俺からな」

タクミが堂々とノートを広げる。


『光の向こうに 未来が呼んでる

夢を掴むのは 今この瞬間』


「お前、王道すぎ!」

カズが即ツッコミ。

「いや、ボーカルはこれくらいポジティブじゃなきゃ!」

「少女漫画の巻頭カラーかよ!」



ダイキ(色黒ぽっちゃり・腐)


次はダイキ。

「俺のはちょっと大人っぽくした!」


『君の汗に濡れた背中が

僕の視線を奪っていく』


「やめろーーーーッ!」

全員が一斉に机を叩いた。

「腐ってる!完全に腐ってるぞ!」

「文化祭で歌えねぇだろ!」

「青春コメディじゃなくてBL劇場になるわ!」


ダイキはケラケラ笑って「狙い通り♪」。



カズ(ニコニコツッコミ)


カズはさらっと。


『放課後チャリで駆け抜けろ

笑い声は校舎を揺らす』


「……あれ?普通に良くない?」

「青春ソングっぽいな!」

「お前が一番安定してるのズルいわ」


カズは照れ笑い。

「いやいや、これくらいフツーでいいのよ」



ユウ(俺・リズム感壊滅)


全員の視線が俺に集まる。

俺はノートをゆっくり広げた。


『世界が灰色に沈む

僕は影に溶けて消えたい

笑う声が遠すぎて

ここに僕はいらない』


……シーン。


「お前、どうした!?」

「重い!めっちゃ重い!」

「ホラー映画のエンディングやん!」


俺は真剣に言う。

「いや、これが俺の魂なんだ」


全員が頭を抱える。

「杏仁豆腐って名前でこの歌詞はギャップがすごすぎる!」

「バンド名詐欺だろ!」



結果


結局、4人の歌詞を混ぜて1曲にする案が出る。


「光と夢で始まって」

「途中で汗だく背中出てきて」

「サビでチャリ全力疾走」

「最後に世界が灰色に沈む」


「まとまるわけねぇだろ!」


爆笑で終わった、歌詞持ち寄り会だった。



ネガティブの輝き


次の日のスタジオ。

昨日の「歌詞大爆笑大会」のノリを引きずりつつ、とりあえず音をつけてみることになった。


「ユウのやつ、どうせなら一回合わせてみようぜ」

タクミが笑いながら言う。

「えぇ……?あんな暗いのに?」

カズが首をひねる。

「いいじゃん、逆にカッコいいかも!」

ダイキはなぜかノリノリ。



試しに合わせてみたら


タクミが歌い出す。


『世界が灰色に沈む

僕は影に溶けて消えたい』


低めの声で歌った瞬間、空気が変わった。

ギターのリフが乗り、ベースが支え、ドラム(=俺)は必死でリズムを追う。


「……あれ?」

「意外と……良くね?」

「おいおい、ダークでカッコいいんだけど!」



ネガティブが武器に


「やべぇ、鳥肌立った」

カズが本気で驚いている。

「暗いけど、むしろインパクト強すぎ!」

「これ……杏仁豆腐の方向性、決まっちゃったんじゃね?」

タクミまで真顔で言う。


俺は照れ隠しに頭をかく。

「いや、俺の黒歴史ノートが武器になるとか思わんかったわ」



「ただし!」

カズが指を立てる。

「サビでいきなり『チャリで駆け抜けろ!』が入るのはどうしても笑う」

「そこは消せねぇだろ!杏仁豆腐らしさだから!」

「灰色の世界からチャリで脱出すんな!」


スタジオはまた爆笑に包まれた。



こうして――

俺のネガティブ歌詞は、バンドの大黒柱になってしまったのだった。

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