スネークアイズ
次で最終話になります!
カイル達が現場に向かうと見るも無惨な姿になった男の姿があった
「聞くのといざ見るのじゃ全然違うな…
こんなこと平気で出来るやつらだったのか」
「カイル
許せないね、こんなことしたやつらは絶対許さない!」
「こっちに手を出して来たら返り討ちにして取っ捕まえてやるわ!
でも…
これを知った他の商会の人達は、今後働いてくれるのかしら…」
「それはおれも思った
ただそう思うのも無理はないし、働くことを強制はしない」
「カイル
早急に犯人を捕まえよう!」
カイル達の杞憂は裏切られ、なんと昨日と変わらず店は開店した
どの店にも同じ言葉が書かれていた
『俺達は屈しない』
と
羊皮紙も決して安くない
それでも全部の店で同じ言葉が掲げられていた
カイル達はその言葉に勇気付けられ、それと同時にみんなを守る責任を感じたのだった
そして明日は四ヶ月に一回開催される武道大会の日だ
今日もいつにも増して街が賑わっている
カイルは小規模商会の会長全てに護衛を付けて、その日は警戒しながら眠りについた
翌朝、どの兵士からも報告はなくカイルはホッと胸を撫で下ろす
それも束の間でセダは寝坊したようで、今日はお手製の朝食がなく一同ガッカリした
武道大会には必ず伯爵が出る習わしがある
そして大会主催者は商業ギルドで、運営はヒックス商会が請け負っている
「カイル
武道大会には出るの?」
「ああ
必ず出る習わしのようだしな」
「敵が襲ってきたら焼き殺してやるわ!」
「エリサ
頼むから生捕りにしてくれ
まぁボーズの心配している通り、狙うならこの武道大会は絶好の機会だろう
見知らぬ人も沢山いるし、警備もしにくいしな
逆を言えば敵を炙り出すんだ」
「こんな時にごめんねカイル
私はちょっとお買い物があるから別行動するわね」
「分かったよ母さん
母さんも気を付けてね」
話は前日に戻る
「ヒックスさん
あんた…
本当に恐ろしい人だ」
「私が何か?
とても悲しい事件があったようですね
今夜も悲しい事件が起きないと良いのですが…」
「・・・」
話は戻り武道大会当日
「ツイードさん、おはようございます」
「ヒックスさん
今日の朝は何の事件も起きなくて良かったですね
色々と頭をよぎったのですが、なんか疑い深くなっているみたいです」
「そう…ですね
まぁ気を取り直して、今日の武道大会は成功させましょう」
「しかしヒックスさんも悪い人だ
今日突然参加者を数人捻じ込んで来たんだから
あの人達凄い強そうだし、優勝させる気なんでしょ?
俺はあの人達に賭けさせて貰いますよ、へっへっへ」
カイル達は会場に入り、ステージを見渡せる高い場所に案内された
冷たい飲み物付きだ
参加者は全部で百二十人
賭けの対象にもなっており、観客の熱量は凄い
三日で終わらせる必要があるため、続々と試合が始まっていく
「あの黒装束の一団は明らかに強いね」
「ああ素人の動きではないな」
「あーほら
あれじゃ死んじゃうよ
カイル
ちょっと救護室行ってくるね」
「退屈な試合ね
私はちょっとトイレに行ってくるわ」
カイル一人を残して、一同部屋を出る
エリサはトイレに行こうと廊下を歩く
すると向こうから黒装束の出場者が歩いてくる
そしてすれ違う瞬間
「…リサさん
ドラゴンスレイヤーのエリサさんですよね?」
「あら
私の事知ってるのね」
「はい
良ければ握手をお願いします」
「良いわよ」
エリサを握手する
その瞬間手に激痛が走る
「痛っ
あなた何を!?」
「毒をね
実に簡単な仕事だったわ」
「カ…イル…」
エリサは膝から崩れて、倒れないよう必死に耐える
「危険を…知らさないと…」
その頃ステージでは黒装束の出場者が戦っていた
カイルの目にはいつでも倒そうとすれば倒せるくらい実力差があったが、黒装束は何故か時間を稼いでるようだった
その時観客席で何かが光る
何か光った瞬間、黒装束は対戦相手と審判の首を刎ね飛ばす
カイルが驚いた瞬間、黒装束はカイルの目前にまで迫っていた
『ダークミスト』
黒装束が魔法を唱えた途端、ステージ周辺は黒い霧で覆われる
そして、黒装束は短剣の刃を自身に向けるように手に持ち、カイルの首を狙う
しかしカイルはそれに気付き、オークキングの剣を抜き、剣の根元付近で短剣を受ける
黒装束の攻撃は弾かれてしまうが、部屋内部に侵入し身構えている
カイルの意識がそっちにいったときに、背後からもう一人の黒装束が窓枠から入って来て、前後両方から一斉に攻撃を仕掛ける
カイルは最初の黒装束に魔法を放つ
『ウインドカッター』
オーガの剣から放たれた一撃は黒装束を一刀両断した…
かに思われたが黒装束のみが真っ二つに別れる
「カイル辺境伯
なかなかの速さと威力ですね」
黒装束を脱いだその人物は、上半身裸でズボンとブーツは動きやすいブルーフロッグ製のようだ
顔と上半身には無数のタトゥーが刻まれている
特徴的なのは蛇のタトゥーが上半身から顔にかけて繋がっている
「次はこっちから仕掛けますよ」
『ダークアロー』
上半身裸の男の手から複数の黒い矢が放たれるが、カイルはオークキングの剣で弾く
「これくらいでは通用しませんか
ではこれなら?」
『ダークブレイク』
上半身裸の男から今度は闇属性の炎が放たれカイルに直撃する
ボッッ
カイルは全身黒い炎に包まれてしまう
「ふっふっふ
それはただの炎ではありません
水などでは消えないのです
さぁ死になさい!」
うわぁァァァ
カイルは叫ぶ…
「し、死ぬ…」
カイルは膝から崩れ落ち四つん這いになる
「なんてね!」
カイルは黒い炎に包まれながら立ち上がる
そして黒い炎が消え失せる
「な、なぜだ!」
「悪いけど、おれには効かない
ちょっと光属性の魔法が使えるのでね」
「光属性だと!?
確か身体強化魔法と風魔法しか使えないって情報だったはずだ!」
「なるほど
色々と知っているようだな
では今度はこちらの番だ
おれの下手くそな演技で時間を稼がせて貰った」
カイルが扉に目をやり叫ぶ
「ボーズ、エリサ頼む!」
扉からボーズとエリサが飛び込んでくる
「カイル
遅くなってごめん
エリサの治療に少し戸惑った」
「いや良いんだ
二人はそっちの黒装束を!
おれはこいつをやる」
カイルは身体強化魔法を使いさらに風魔法を纏う
『瞬脚』
次の瞬間
上半身裸の男の目の前でオークキングの剣を振るう
上半身裸の男も辛うじて反応し短剣でガードする
しかし短剣が折れてしまい、男の右肩にオークキングの剣で深い傷を与える
ぐぁぁぁ
男は右肩から血を流し、右腕に力が入らず宙ぶらりんになっている
そして、うずくまって両膝をついたところでカイルは背後に周り首を手刀で殴り意識を刈り取る
次にもう一人の黒装束はボーズへ無数の針で刺すが、全く動じない
「こ、こいつ毒が効かないのか!」
「僕は一応ヒール以外にキュアも使えるからね」
ボーズはそのまま黒装束を掴み、壁に向かって投げる
黒装束は壁に叩き付けられるが、まだ戦意は失われてない
「くそっ
こうなったら最後の手段だ!」
黒装束が胸のポケットに手を掛けた瞬間
「何もさせはしないわ」
『ファイヤーボール』
黒装束は全身燃え広がって、悶え苦しむ
ぎゃぁぁぁ
「ボーズ
ヒールを」
「分かった」
『ヒール』
黒装束は一命を取り留める
そして男二人を拘束する
数分後
男二人は目を覚ますと、縄で拘束されていた
「さぁ
依頼人が誰か吐いて貰おうか」
「ふんっ
誰が喋るか!」
「それは残念だ」
男の両足のくるぶしから先が吹き飛ぶ
男達は悲鳴をあげるが、カイルは続ける
「ボーズ、ヒールを」
『ヒール』
そしてカイルは両腕を斬り飛ばす
またも男達は悲鳴をあげるが、再びヒールで治す
「さて、もう一度」
「ま、待ってください!
話す、話すからもう勘弁して下さい
ハァハァハァ」
「さぞ辛かったろう
おれもその痛みが痛い程分かる
さっさと黒幕を白状しろ」
男達は黒幕がヒックス商会のヒックス会長から直々に依頼を受けたという
彼らの組織はスネークアイズという、蛇のタトゥーをしているのが特徴で、カンタラス王国に蔓延ってる
「これでヒックス商会の尻尾を掴んだね」
「ああ
次は世直しといこうか」
カイルはその足で会場に来ていたヒックス会長の下に行った
「会長
黒装束の男達が白状してくれた」
「何事でしょうか?」
「シラを切ろうとしても無駄だ
おれの命を狙うとはな」
「私は何も知りません
あんな者達を信用するのですか?」
「ああ
証拠なんて必要ない
おれは辺境伯だ
貴方を死刑とする」
「そ、そんな…
お許しを…」
それからカイルはヒックス会長を死刑に
ヒックス商会は解体、またその繋がりのある商会は軒並み解体させた
後々分かったことだが、エンペスで小競り合いが増えたのもスネークアイズが進出して来たかららしい
カイルはその後スネークアイズを殲滅し、ウィンブルに平和をもたらした
それからヒックス商会とスネークアイズの支配から解放された街民は、仕事に戻ってくれて平穏な生活が戻る




