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ヒックス商会

【最終章】悪の組織

一日一話投稿していきます

翌日、街の権力者達が伯爵邸に集まる


「皆さん

改めまして、辺境伯のカイルです

これからウィンブルはおれが治めさせて貰いますので宜しくお願いします」

「これはこれはカイル辺境伯

お久しゅうございます

支部長のツイードです

その節はお力になれず申し訳ございません

今後はカイル辺境伯を第一に動きますので」

「お初にお目にかかります

わたくしは一応この街で一番大きい商会をやっております

ヒックス商会の会長のヒックスと申します」


他の商会も続々と挨拶をしていく


「それで、何のお話でしょうか

着任パーティーならぜひこのツイードにお任せ下さい」

「いえ

今日はこの街の今後について皆さんに伝えておくことがあり、呼ばせて頂きました」

(ふん、若造が!)

「ツイードさん

お下がりなさい」


ヒックスは心の底から笑っていない笑顔で取り繕う


「今商業ギルドを通じて大規模商会の皆さんが運営している以下の商売は、辺境伯直轄の運営と変更します

業種は製粉、パン屋、武具防具農具調理具などの製造業、それから貿易に関することも全てこちらに申請の上、輸出入を許可することとします

また税については、今日来ている商会の皆さんには売上の三割とし、それ以外の商会には一割とします」

「は?

今なんと?」

「ツイードさん

今言った通りです」

「この街は我々が回しているのです

我々抜きでは街が崩壊しますよ?

そんなこと出来る訳ない!」

「多分回せると思います」

「そんな簡単なっ

「ツイードさん

およしなさい

辺境伯が出来ると言っているのですから、お任せしてみましょう」

「で、でもヒックスさん…」


ヒックスはツイードを睨み付けると、ツイードは大人しく椅子に座った


「ああ

あと皆さんの帳簿を見せて下さい

今日中に持って来て下さいね」

「カイル辺境伯

今日中というのは少し乱暴ではないですか?」

「ええーと

皆さん何か勘違いしてると思います

おれは辺境伯です

伯爵と違って、犯罪を犯さなければ全権任されています

なのでおれが今日と言えば今日なのです

それとも帳簿がない適当な商会なので?」

「分かりました…」


それから夕方には全ての商会から帳簿が上がってきた


「カイル

だいぶ大勢の人を敵に回したね

とりあえずこの屋敷の周りには兵士を配置しておいたよ」

「大丈夫なの?

まぁ武力で来るようなら私がぶっ飛ばしてやるわ」

「カイルったらこんなに逞しくなっちゃって…うふふ」

「おいらそんな急に仕事回せるか不安になってきちゃったよ…」

「まぁ何とかなるさ!」


翌日になると早速街に昨日決まったことを、街に張り紙をして伝えた


まず製粉は水車を利用した物があり、徴税の対象となっていた

それを無税にした

それからパン屋は街に二十五店舗あったが、三店舗以外全て従業員が一斉に退職したとのことで、その日は運営することが出来なかった

製造業関連は各一、二店舗以外全て従業員が退職した


貿易関連は大規模商会はどこも申請がなく、中小の商会も僅かな申請に留まった


「カイル

街民から凄い苦情の嵐だよ」

「私も焼き立てパンが食べられないのは…」

「ああ

大丈夫だ

エッジ、今日ちゃんと働いてくれた商会を調べてくれ」

「あいよー」

「それから裏路地にまだ昔の仲間が居るだろう?

そいつらにこの内容を伝えてくれ」

「あいあいキャプテン!」


翌日も同じ状況が続く

そして夕方になると伯爵邸の前に継続営業をしてくれた小規模商会の代表と、ガラの悪いゴロツキや痩せ細った少年達が集まってきた


「今日は来てくれてありがとう

おれが辺境伯のカイルだ

今この街はピンチに陥っている

そこで今日ここに集まってくれた皆んなに助けて欲しいと思っている

パン屋や製造業は給金も払うし、衣服も提供しよう

このチャンスを掴むんだ

悪徳商会達に煮湯を飲まされた者も多いだろう

駆逐してやろう!」


その内の一人が叫ぶ


「やる!

おいらやる!

おいらの父ちゃんと母ちゃんの店があいつらに乗っ取られたんだ

それで…

二人とも働き口がなくなって、若くして病で死んちまったんだ

あいつらを倒すんだ!」

「おれも」

「「おれも、おれもだ!」」

「「「「「おぉぉぉぉぉ」」」」」


屋敷の周りは熱気に満ち溢れ

カイルはその中心に居た

その日はそれで解散となった


「カイル

これが狙いだったんだね」

「ああ

この街は貧富の差が激しい

貧しい者はほぼ必ず裕福な者から吸い上げられている

憎んでいるやつらも多いはずた

敵の敵は味方ってやつだな、ははは

さらに昨日今日としっかり営業した商会は大規模商会にも屈しない気概を持った商会だ

彼らを頭として、貧しい者達に職を与え、悪徳商会達を駆逐する」

「まさに一石二鳥ってやつだね」

「しかしエッジ

なかなか良い演技だったぞ」

「てへへ、ちゃんと出来たかな」

「まさかサクラを使っていたなんてね、私も驚いちゃったわ」

「まぁとにかく明日からこの街は生まれ変わるぞ」

「じゃあ解決したところで、カイルの大好物の魚介の塩スープを作ったからみんなで食べましょ♪」

「セダさんのご飯久しぶりだ

さぁみんな食べよう」


翌日は朝早くから街に出掛けるカイル達


まず製粉は大行列となっていた

パン屋が稼働し出したからだ

パン屋二十五店舗のうち、十三店舗は運営を始められた

そのうちの何店舗か見て回ったが、先日の小規模商会の指示によりゴロツキ達が大汗をかきながら木炭を焚べている

痩せ細った少年達は、一所懸命にパンをこねて不恰好なパンを焼いている

少し行列が出来てしまっているが、生きて行く分には何とかなるだろう


貿易関連については、パン屋の稼働を見た小規模商会がちらほらと申請を上げて来た

おそらく様子見をしていたのだろう

エッジには申請してきた小規模商会には無利子で貸付を実施させ、大きな取引が出来るよう取り計らって貰った


それから一週間

街は平穏を取り戻しつつあった


ここは商業ギルドの個室


「ヒックスさん!

どうなってるんですか!

やつら裏路地のやつらを使って人を補充してますよ!」

「うーん

あの辺境伯

若いのにあそこまで頭が切れるとわね…」

「そんな感心してる場合じゃないですよ

早く仕事に復帰させろってやつらが増えてきて、いずれ見限られてしまいますよ」

「まぁツイードさん

まだ手があります

ちょっとお金は掛かってしまいますけどね」


カイル達が伯爵邸でセダの作った朝食を食べていると…


「カイル!

大変だ!」

「エッジ

どうした?

確か前もこんなことあったな」

「今回は前回より酷いんだ…

パン屋を運営してくれてた小規模商会の会長が一人、今朝死体で見つかったんだ」

「なに!?」

「しかも…

拷問されたのか

体に無数の傷が…」

「カイル

犯人はもしかして…」

「クソッ

おれの責任だ

やつらがまさかこんなにも早く手を打ってくるなんて…」

「落ち着いて

とりあえず現場に行きましょう」

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