【最終章】悪の組織
カイル十七歳
この一年でエンペス村は相変わらずの成長を遂げていた
人口は約二千五百人から約四千人に増えた
人口が増えた要因として、出生率が高く元々の街民が子供をたくさん産んでくれたことが一つ
それから貿易で物や人の行き来が増大したことで、働き口を探しに来る者が跡を絶たなかったことが二つ
最後にカイル兵団へと加入希望者が殺到していることだ
まず子供が増えたことで学校を増やした
ドウェイン校長は働き過ぎで顔色が悪かったが、何とか成し遂げてくれた
職業訓練校から卒業した人が、学校運営側や先生になってくれているので、今後は改善していく見込みだ
パン屋や蒸し風呂も人口増に合わせて適宜増やしている
また宿の需要も確実に増えており、おやじの宿やケイホスピスも順調に店舗を増やしている
さらに海辺の保養地でも宿泊需要が高まり、ケイリゾーツという富裕層向けの宿を始めた
それを聞き付けた王陛下から今度行ってみたいと言われたが、色々大変そうなのでご遠慮願った
貿易の方も順調で、ギャラクシー船は二隻から四隻に増えた
二隻は灼熱の国、一隻はモデオ共和国、最後の一隻はモンゴリアン王国の航路となっている
灼熱の国からは胡椒や金を輸入、モデオ共和国からは果実酒を輸入している
果実酒に関しては、タルト村での実績が評価され、王陛下より許可を貰い正式に販売出来るようになった
モンゴリアン王国とはボーズの名前を借りて取引をしていて、銅鉱石と鉄鉱石を輸入している
金は宝石職人によって、金細工へ変貌している
銅に関しては、王国内でも貴重な資源のため王陛下へのみ販売することとした
鉄鉱石はエンペスの高炉で質の良い武具や農具に変えられ、貿易の主力となっている
木炭販売についても順調に推移しており、王都までの販売網は強固なものとなった
今後西側の販売を強化するのであれば、輸送コストを考えると、大森林から調達した方が良いとエイルムからアドバイスを受けた
アンリ達の高速運搬騎兵は百人から百五十人まで増やした
これにより、アンリ達と騎兵半数を大森林に投入し、トレント材及び木炭の生産を始めることとなった
タルト村の人口はあまり変わりないとのこと
ただ蒸し風呂に関しては、デールにまで出店はしたが、木炭が足りず店舗を増やせなかったため、客が殺到してしまい長蛇の列が出来て、客同士が揉めてしまう事件が起きたらしい
そのため、現在デールのお店は閉めて、木炭が確保出来た段階で再出店する予定とのこと
今後アンリ達によって木炭が供給されるようになるため、再開は近いだろう
最後にカイル兵団は、五百人から千人に倍増した
特に海兵団でギャラクシー船の増船があったため、人手が必要であった
単純にギャラクシー船二隻増えたため、六十人は必要となったが、休みのローテーションが取れるよう百人補充し、海兵団は全部で約三百人となった
それから人口が爆発的に増えたため、街の中で大小の犯罪が頻繁に起こるようになってしまった
そのため、治安維持に人手が必要となり、ここにも五十人程投入し、森林開拓班と高速運搬騎兵を合わせると約六百人となった
それからウィンブルを治めるようになったため、タイラーテイラーを兵士長として、約百人程ウィンブルに派遣した
元々のウィンブルに居た兵士は一旦解雇し、タイラーテイラーの面接を突破した二十人が残った
そしてカイル達は何処にいるかというと…
「エリサ
良いのか?
ひと段落したし、エリサの夢だった魔導士団に入らなくて」
「僕はずっと側に居て欲しいよ!」
「ボーズ…
魔導士団もとてもやりがいのある所だったわ
でも…
私は二人が心配だし、今まで関わってくれた人を守りたいの
だから魔導士団には入らないって決めた
私は二人とこれからも生きて行く」
「おれもエリサが居てくれるなら嬉しい
これからも宜しくな」
「エリサ…
ぼょくゅも、ズルズルッ
ゔれぢぃよぉぉぉ」
「ボーズ
泣き過ぎよ…」
「そうと決まれば、ウィンブルを立て直すぞ」
ウィンブルに来たメンバーは
カイル、ボーズ、エリサ、タイラー・テイラー、エッジ
それからセダ
タルト村はジダンに任せて、エッジには臨時で来て貰った
なぜセダが居るかって?
それはセダに聞いてくれ
ウィンブルは人口約五千人居る
大規模商会には税を優遇し、中小規模の商会には重い税を課している
また貧富の差が激しく、裏路地に行くと物乞いや子供が残飯を漁っている
ここは伯爵邸
「カイル
ウィンブルはどうする?」
「そうだなぁ
おれの街だし、この街を一回ぶっ潰すか」
「街を潰すって、大丈夫なの?」
「エリサ
カイルか言うなら何か考えがあるんだ
絶対大丈夫だよ!」
「カイル
私に出来ることなら何でも手伝うから言ってね、ふふふ」
「おいらも商売に関することなら、任せてくれよ」
「みんな頼もしいな
では大規模商会と商業ギルドの幹部を集めてくれ」