吉報来たる
【第十部】グリッジ帝国編
後書きもお楽しみ下さい
一日一話投稿していきます
次の日
再び屋敷に主要幹部が集まる
「ではカイル殿
ロイロはカイル兵団により占領され、カイル暫定領とします
私共は暫定領の領民を人質に取られ動けないということにして、帝国本国へ遣いを出します」
「はい
協力頂きありがとうございます」
「いえ
この後のテセウス皇帝の動き次第では、益々独立の機運が高まるでしょう」
カンタラス王国の宮殿にて
「王陛下!
カイル辺境伯より連絡がありました」
「やっとか!
それで上手くいったのか」
「はい
リンゼン自治領のロイロという街にカイル暫定領を打ち立てました」
王は静かに右手の拳を握り締める
「では帝国に使者を送る
それで良いな」
「はい
この私が出向きましょう
国家の一大事です
命を賭けて和平を勝ち取ってきます」
「ジャイロ…
任せたぞ!」
ジャイロはその日のうちに馬車に乗って、北側の国境に向かって走り出した
一方、帝国の帝都イシュタンレリオ
その宮殿内の皇帝執務室
「テセウス様
カンタラス王国侵攻について、ご報告がございます」
「なんだ
今さら降伏してきたか」
「いえ
それが…
わたくしめの作戦が失敗に終わりました
北側に意識を向けさせておいて、南側の海から侵攻して兵力を分散させる作戦でしたが、南側の海兵団が負けてしまったらしく」
「そんな小細工しているからだ
正面から攻め込めば良いのだ」
「それが海兵団が負けただけでなく、我が帝国の古参支配地域のブリタニア連邦のリンゼン自治領が逆侵攻を受け、カンタラス王国の支配地域になったとの連絡がありました」
「なんだと?
この帝国に攻め込むなど、この十年程記憶にないぞ
カンタラス王国め
すぐに本国を潰すのだ」
「テセウス様
リンゼン自治領は…」
「そんな小さい地域なぞ捨ておけ
本国を潰せば降伏するか、降伏しないなら攻め込めば良かろう」
「いえ
それが我が帝国の自治領で構成される元老院で、リンゼン自治領を無傷で取り返すためにカンタラス王国と和平を結ぶ方向に決まりました」
「なんて奴等だ
こちらの苦労など何も知らず」
「おっしゃる通りですが、元老院を無視すると資金面での支援が減り、これ以上支配地域を増やせなくなります
侵攻する地域はまだまだございます
ここで元老院と対峙すればテセウス様の悲願の大陸征服が叶わなくなります」
「しかし…
和平などすれば国内外への示しがつかん」
「そういう交渉事はわたくしめの得意分野でございます
お任せくださいませ」
「・・・分かった
お前に任せる」
話はカイル達に戻る
カイル達は三週間ぶりにロイロに戻って来ていた
「ダリオ伯爵
帝国との和平にも早くて一ヶ月、長くて二ヶ月程度掛かるとみてます
なのでもうしばらくこちらに滞在させて頂きます」
「ゆっくりしていって下さい
いや、寧ろこのままずっと…」
「そう言って貰えて嬉しいです
皆んなじっとしてるのも苦手なので、この街のために何かしたいと思ってます」
「それは期待せずにはいられないですね」
その日の夜は蒸し風呂に入る
「カイル
これからこの街をどうするつもりなの?」
「私に手伝えることなら何でも言ってね」
「そうだなぁ
とりあえず蒸し風呂は相変わらず大盛況だし、少し混み出してきてしまったから、複数店舗開店しようと思う
そうなると木炭が足りなくなるかもしれないから、まずはうちの兵団で確保する
その後は木炭が足りなくなると思うから、給金を払って働いてくれる人を募集してみようと思う」
「でも魔物相手もしなきゃだし大丈夫かな」
「それは戦える人が来てくれるのが一番だけどね
来ないようならうちの街で募集するしかないかな」
「分かったよ
とりあえず僕たちが居る間は大丈夫だから、その間に解決しときたいね」
「貿易に関しては、エンペスとの定期船を出そうと思う
塩と魚介類と胡椒、そらと衣服がメインだ
鉄製品は売れると思うけど、万が一武器として転用されても困るから今回はなしにする」
「そうなると、人の行き来が活発になって宿が必要になるね」
「少し遠いからどうなるか分からないけど、ケイさんにも聞いてみるのも良いか」
「おやじの宿の塩スープが恋しいよ」
「そうと決まれば急がないとだな」
次の日からカイルは精力的に動く
まず蒸し風呂を併設してくれるパン屋を募った
結果的に八つのパン屋が手を挙げてくれた
木炭とのセット販売は今後の人員次第で展開とした
次に木炭の製造とその周辺警護をしてくれる人間を募集した
給金を貰えるというともあり、まだ仕事に就いていない十代の若者を主体に約三十人の応募があった
しばらくは兵団に同行して貰い、適正を測ることにした
それから一週間もするとエンペスからの第一陣が到着した
「カイル辺境伯
お初にお目に掛かります
わたくしメルエムと申します
ドウェイン校長から勧められて来ました」
「遠くまでありがとうございます
ドウェインさんということは、職業訓練校からの?」
「はい
商人育成コースで学んでおりましたら声を掛けて頂きました
いつかは自分で商売をしてみたいと思っていたので、とても光栄なお話でした
でもまさか最初が他国とは、ははは」
「それでしたら思う存分力を発揮して貰いたいですね
基本的にはエンペスにもある蒸し風呂の運営と木炭の調達と貿易関連をお願いします」
「全てエンペスで実務経験させて貰いましたからお任せ下さい」
「それと運営元はこちらで新たに商会を作ろうと思ってます
良ければメルエム商会とさせて貰えればと」
「わ、わたくしの名前なんかで宜しいのでしょうか!?」
「はい
責任は全ておれが取りますので、心置きなく力を発揮して下さい」
「分かりました!
このメルエム命を掛けて頑張ります!」
【人物紹介】
バルガス
年齢:四十二歳
生い立ち:生まれも育ちも元祖グリッジ帝国
家族構成:父親は帝国の兵士
姉と妹が居て、二人とも結婚をしている
妻と子供が居たが、不慮の事故で死亡
特技:水魔法、元冒険者ランクB
episode:妻子が居て冒険者としてもbランクと順調に階段を上るも、ある日ダンジョンからままのが溢れ出すスタンピードによって妻子が亡くなる
生きる気力を無くし、妻の故郷であるゼッペルグに立ち寄った際に、偶然魔物討伐の緊急クエストがは辛いされ、死のうと参加するもトルドーを助けてしまう
以後トルドーからの熱烈な誘いを受け、兵団長に就任し後身の育成に当たる




