ロイロの探索
【第十部】グリッジ帝国編
後書きもお楽しみ下さい
一日一話投稿していきます
それからカイルは街を歩きながら、ダリオの部下に説明を受ける
この自治領はブリタニア連邦のリンゼン州という地域であった
帝国とは良好な関係を築いていたが、二十年近く前にテセウス皇帝によって征服され、多くの国民が亡くなってしまった
それ以来帝国の一部となっているが、一部の優秀な人材を除き、帝国に好意を持っている者は少ない
帝国によって征服された際、反乱の予防として州毎の分割自治領となり、現在ここはリンゼン自治領となっている
街の中心の建物はレンガ造りの建物がほとんどで、大通りはパン屋もあるが、食堂はお店の外にもテーブルが用意され、外でエールやビッツを愉しみながら話をしている人がたくさんいる
人頭税は一人月銀貨五枚と、初期征服国のため重税となっている
この重税が国民の負担となっているが、帝国の古参地域のため、自治領でも税率の変更は出来ない
ほとんどの国民は貧しい生活を強いられており、一番の娯楽はワインなどより金額の安いエールを片手に家族や仲間と話す事とのこと
このリンゼン自治領の特産物は大麦とアグー
それを加工したエールというお酒に、アグーの肉を詰めたビッツという肉だという
エールとビッツに関しては帝国内にも出荷し、一般的で気軽に食すことが出来るとのこと
貿易に関しては、海まで繋がっている川が通っているため、川を利用した貿易が盛ん
ただボレロ船のみのため、帝国内がほとんどとのこと
この街の兵士は百人程度
外国から攻められることもないため、見張りや街の警備がほとんどで、あまり実戦経験はない
大した高炉を保有してないため、精錬技術は低く、武具防具農具の質は低い
その後カイル達は宿屋を案内される
最初に案内された宿は貴族が使う高級宿だったが、この人数が無料で泊まると宿に負担を掛けてしまうため辞退した
結局街の外れに木造りの貸一軒家があり、それを借りてカイル達は泊まり、そのほかの兵士は野営することとした
翌日エンペスから持って来た金をダリオ伯爵に渡した
それから街の権力者達にも挨拶をし、概ね皆んな好意的に受け入れてくれた
「さてカイル
案外やることなくて暇になってしまったね」
「私はパンの種類が少なくてがっかりしたわ
異国のパンというのに期待し過ぎたかしらね」
「まぁ異国と言っても、大都市でない限りうちとそんなに変わらないな」
「そんなんだよね
寧ろエンペスの方が道はしっかり整備されてるし、魚介類が手に入るからお店もいっぱいあるし住みやすいよ」
「エールとやらはまだおれ達には美味しさが分からないしな」
「でもパンは残念だったけど、ビッツって食べ物は美味しかったわ」
「確かに
また軒先にテーブルを出して外で食べるのも楽しそうだった」
「今夜は僕たちも食べに行こうよ」
「「賛成」」
カイル達は二、三日街を楽しんだが、ダリオ伯爵からの連絡はまだない
「カイル
私蒸し風呂に入りたいわ」
「確かにね
僕も毎日のように入ってたから、数日入らないだけでちょっと臭いとか…」
「じゃあ蒸し風呂作ってしまうおうか
問題は木炭が確保出来るかだな」
「街の西側に森があって、そこで薪や木炭が確保出来るみたいだよ」
「よし
兵団の皆んなも手持ち無沙汰だし、魔物の狩りついでに木炭作って持ってこよう」
街で斧を購入し、その日のうちにカイル兵士団百人を連れて森に入る
海兵団百人は念のために街の警戒に当たらせる
森にはコボルト、ロック鳥、マンイーターなどが居て、カンタラス王国では見ない魔物の狩りをする事が出来た
ある程度討伐したところで、兵士団には木炭の製造に専念して貰い、カイル達は森の奥深くまで探索した
「カイル
見た事ない魔物がたくさんいるね
なんだかワクワクしちゃうよ」
「ああ
だけど魔物は魔物だし油断は禁物だ」
ドォーーーン
「二人とも見て!
トロールが居たわ
家にあった古い古書で小さい時に読んだことあるのよね」
「でもエリサ
僕も見たかったけど木っ端微塵じゃないか…」
「ごめんなさい
どれだけ強いか分からなかったから、かなり高圧縮してファイヤーボールを撃ったのよ」
「まぁトロールの棍棒が手に入ったから良いじゃないか
(ブンブンブンッ)
軽くてなかなか頑丈そうだ」
「それは僕好みの武器だね」
「ほら
ボーズにやるよ」
棍棒は長さ一メートル五十センチくらいで、手元は何かの革が巻き付けて握り易くなっており、先端にいくにつれ太くなっている
「こりゃ良い
なんか凄いしっくりくるよ」
「それなら私も倒して良かったわ」
「強い魔物で試してみたいな!」
「ボーズ
悪いけど、これから兵団の食料を確保しないといけないんだ
毎日街で外食してたらお金が尽きてしまうからな
また明日にしてくれ」
ボーズはがっかりして肩を落とし、人生二番目のなで肩を記録したのだった
それからはお馴染みのラビットやトットリーを中心に倒して、食料を確保した
夕方になると木も切り倒されていて、木炭用の簡易的な窯も造られていた
その日の夕飯はラビットの塩焼きやトットリーの肉団子スープ、それから焼き立てのパンを街から調達した
翌日になるとカイルはダリオ伯爵に蒸し風呂なるものを創りたいと申し出た
ダリオ伯爵からは街民のためなら大歓迎とのことだったため、街の権力者と相談しパン屋に併設する形で造らせて貰えることになった
それから数日カイル達は魔物の狩りや木炭の製造に励んだ
「カンタラス王国のカイルです
今日は皆さんお集まり頂きありがとうございます
街の皆さんに蒸し風呂を楽しんで頂ければと思い、様々な方に協力を得て造ることが出来ました
大人子供誰でも入れるよう大人銅貨二枚、子供銅貨一枚となっております
皆さんの社交の場になれば嬉しいです
では開店します」
蒸し風呂は開店初日から大行列となり、ひとまず成功を納めた
今後の要望次第では複数店舗の運営も検討していくこととした
そしてダリオ伯爵から屋敷に来て欲しいと連絡があり向かった




