追撃と逆襲
【第十部】グリッジ帝国編
後書きもお楽しみ下さい
一日一話投稿していきます
しかしこの時既に三割の団艦を失っていた
メリルグラウンドの指令によりバラバラになりながら、オールで漕いで突破を図ろうとする
「アステアさん
敵がオールで漕いで突破しようとしています」
「カイル大丈夫
瞬時の速度は彼らの方が速いけど、人間が漕いでるんだ
いつかは疲れるさ、その隙にこっちも追い付いて、後続の団艦から沈めていくよ」
ギャラクシー船は船団から徐々に引き離されていく
アステアは一度沖に出ることにして、風を利用して後を追う
そのまま辺りは暗くなり、夜になる
夜になると海面が見えないため座礁してしまう可能性がある
お互い夜には停泊し、明るくなるまで体を休めた
「全員聞け!
今日も全力で漕ぐんだ!
じゃないと追い付かれて沈められるぞ!」
メリルグラウンドの号令により、日の出と共に一斉に漕ぎ始める
同じ頃、カイル達のギャラクシー船も碇を引き上げ、帆を張って進む
帝国船団は午前中は順調に進むが、昼を過ぎると脱落する団艦も出て来た
「みんな見てくれ
脱落して置いていかれてる団艦が見える
一隻ずつ沈めていくぞ」
「でもアステアさん
あれだけ沈めたら乗組員は溺れて死んでしまわないですか?」
「そうだね
しかし戦だし、仕方ないよ
この団艦に乗せるにしても全員は乗せれない」
「でも…
そうだ
エリサではなくおれにやらせて下さい
おれならあの団艦を停めて見せます」
「分かった
カイルに任せる」
「ありがとうございます
ではあの団艦の後方につけて下さい」
ギャラクシー船はゆっくり進む団艦の後方につく
団艦とギャラクシー船は距離にして五十メートル
団艦からは弓矢が放たれるがボーズ、エリサ、アステアが撃ち落とす
「みんなありがとう
じゃあ相手の行動を封じる」
カイルはオークキングの剣を構えて、船の先頭に立つ
そして上段の構えから振り下ろし、風の刃を飛ばす
そのまま帝国団艦から出ているオールを全て斬り落とす
続いて二撃目を放ち、逆側のオールも全て斬り落とす
最後に一本だけあるマストを風の刃で斬り倒した
団艦は全ての推進力を失い、潮の流れに身を任せている
「これであの団艦はエンペスには行けないと思います」
「確かにオールもマストもなければ進む手立てはないね
岸までなら何とかなるだろうし
さすがカイルだ」
「ありがとうございます
では次の団艦に行きましょう」
その日は約十隻ほど戦闘不能にした
次の日はもう十隻
さらに次の日にも十隻
本艦メリルグラウンド
「メリルグラウンド様
もう約三十隻ほどしか残っておりませぬ
これでは侵攻するのに少々兵が足りませぬ
そしてあと三日程度でエンペスに着く予定です…」
「おぉぉのぉぉぉれぇぇぇ
今日の夜は陸に寄せて停泊し、俺は小船で別行動を取る
奴らが朝方狙ってきたところで、横から強襲してあのデカい船を沈める」
「分かりました
仰せのままに」
夜になると約三十隻は陸に上がって停泊した
メリルグラウンド含めた魔法団は小船で別行動をし、夜が明けるのを待った
ボーズが明け方船の外を見ていると
「あの人達まだ陸に停泊してるよ!」
「ついに諦めたかな?
一気に畳み掛けるよ!」
薄明かりの中、ギャラクシー船が停泊している団艦に近付くと、乗組員は陸で横になって休んでいるようだった
しかしその中の何人かがギャラクシー船の存在に気付き声を上げる
乗船しようと動くが、こちらとの距離は五十メートルにまで迫る
「ここまで近付けたら俺のテリトリーだ」
『サンダーストーム』
アステアは雷の竜巻を発生させて、船団に向かって放つ
巻き込まれた団艦はバリバリに引き裂かれてたように粉々になっていく
そのすぐ後に、敵の兵士達も火矢で応酬してくる
「火矢か
帆に燃え移ったら厄介だ
一度距離を取る」
ギャラクシー船は沖に出ようとした時
小船が一隻ギャラクシー船の背後に近付く
「ハッハッハ
このメリルグラウンド様に楯突いた報いを受けよ
これで終わりだ!」
『ダークブレス』
メリルグラウンドは手から紫色の煙を発生させて、その煙は風に乗りギャラクシー船を包み込む
「なんだこの霧は…」
(ぐぁぁ)
(ゴホゴホゴホッ)
乗船員が苦しみ出して倒れ込んでしまう
「ボーズ
お前は大丈夫か!」
「うん
僕は大丈夫だけど、これはなんだ…
エリサッ!」
「ボーズ…
く、苦しい…」
エリサとアステアも苦しみ出して、その場に倒れ込んでしまう
「これはなんだ!
なぜおれとボーズは無事なんだ」
「カイル…
これはきっと闇…「そうだ
死ぬお前らに特別に教えてやろう
これは闇魔法だ」
カイルとボーズが声の聞こえた方に目を向けると、そこには帝国の軍服を着た男が立っていた
「この毒霧を吸った者は喉が腫れて呼吸が出来なくなる
そして数分後には死ぬんだ、ハッハッハ
散々この俺様をコケにしやがって
死にさらせ!」
カイルとボーズは目を見やる
そしてボーズは倒れている者に順々とヒールをかけて回る
「光魔法使いか!
そうはさせんぞ」
『ダークアロー』
メリルグラウンドの手のひらから、魔力で創り上げられた紫色の弓矢がボーズに飛んでいくが…
パキンッ
メリルグラウンドの弓矢は途中で何者かによって真っ二つに斬られる
「な、なんだと!?
俺の弓矢を斬っただと?」
「残念だがおれには闇魔法は効かないし、光属性の攻撃で弓矢を斬らせて貰った
時間がないようだし、次はこちらから行くぞ」
「ま、まだダァァァ」
カイルは腰を落としてオークキングの剣を垂れ下ろし、斜めに斬り上げ風の刃を飛ばす
しかしメリルグラウンドも弓矢を放ち相殺させる
「ハッハッハ
大したことはなかったな」
『瞬脚』
キンッ
右手をかざしていたメリルグラウンドの肘から先が宙に舞う
「なっ」
斬られた肘から大量の血しぶきが舞う
「ぐぁぁぁぁ
う、腕ががぁぁぁぁ」
そしてカイルは容赦なく左腕も斬り飛ばした
「俺のう、う…で…が…」
【人物紹介】
メリルグラウンド
年齢:四十九歳
生い立ち:生まれも育ちも帝都イシュタンレリオ
家族構成:父親はテセウスの元部下で侵攻開始時から仕えていた
バツイチ独身、子供が一人居るが妻と離縁してから会っていない
特技:闇魔法、酒豪
episode:父親がとても優秀でテセウスの幹部であった、帝国領の北方の海域を統括していたが数年前に一線を退く
息子のメリルグラウンドは親のコネで帝国第三連隊海兵団長に着任、北方海域で敗戦国民を勝手に徴兵し大勢死なすが、成果が上げられず更迭
その後父親のコネで参戦復帰し今回のカンタラス王国侵略の担当となる




