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海兵士長アステアとザウザ

【第十部】グリッジ帝国編

後書きもお楽しみ下さい

一日一話投稿していきます

カイルがこの街に戻って来たのは、大森林の攻略を終えたと判断したからだ

粗方カンタラス王国側の魔物は倒すことが出来た

ヒュージベアやグレイトニードルボアなどの珍しい魔物も討伐し、グリフォンやサイクロプスというAランクパーティーが倒す魔物も攻略した


高速運搬騎兵のアンリ達はというと

エンペスの東側にある森林の管理をして貰っている

大森林より強い敵は少なく、内部にまで進んで行くと、トレントを発見した

トレントの討伐と運搬をアンリ達が担うことにより、トレント材の供給は続くことが出来た

鉄鉱石の産出は出来なくなったが、必要になれば大森林に潜れば良いし、パージの貿易でも確保出来るようになる予定だ


「久しぶりに帰って来たけど、本当にこの村、いやこの街は大きくなったなぁ」

「僕はカイルなら当然だと思うよ」

「私は正直ここまで栄えるとは思っていなかったわ」


三人は久しぶりにのんびり過ごし、ローズ村の両親やエンペスの仲間達と語らい合った

そして、正式にアンリ達の叙任式を行った

騎士としてはアンリ、プラティニ、ヴィエラ、リベリー、ジダンを任命した


そしてカイル兵団は組織変更を行った

カイル兵団の兵団長にカイル、陸の統括として兵士長にエル、タイラー、テイラー

騎馬の統括として騎士長にアンリ、プラティニ、ヴィエラ、リベリー

海の統括として海兵士長に、クルストの弟のアステアを抜擢した

アステアは兄のクルストと違って、雷魔法しか使えなかったが、より特化した高度な雷魔法を使えた


そして今日は、王都から海兵団士団長が一年に一度指導に来る日だ


(ガラガラガラ

ヒヒーン)


海兵団の紋章の付いた馬車が、エンペス辺境伯邸の前に着く

中からは軍服を着た恰幅の良い、髭をもっさり蓄えた男性が降りて来た


「私は海兵団士団長のザウザであーる

カイル辺境伯にお目通し願ーう」

「初めまして

カイルです

話は前もって手紙で王陛下より伺っていました

良ければ屋敷へどうぞ」

「いや

すぐにでも船を見たいのであーる

案内して貰えると助かるのであーる」

「分かりました

それでは一緒に歩いて行きましょう」


カイルとパージ、それとカイル兵団幹部は一緒に歩いていく


「ねぇねぇエリサ

あの人ずっとあの話し方なのかな」

「多分そうよ

海の男って陸の常識が通じないのよ」


港に着くとパージが説明を始める


「俺はつい最近このエンペスで男爵となったパージだ

敬語ってもんが苦手でそこは許してくれ

では俺とアステアが説明させて貰う」


パージは王直轄地になったタイミングで商業ギルドを辞めて、カイルによって男爵に陞爵されていた

仕事はエンペスの資金管理や事務的なことをお願いしている


「今エンペスにはボレロ船が大小合わせて四十隻ある

昔は五十隻はあったんだが、運搬効率が悪い古い船は廃止した

現在は四十隻のうち、衝角が付いて突撃攻撃出来る船は半分だ

それから厩舎を付けて、馬を運搬出来る船が十隻

残りの十隻は大型のボレロ船で、通常のボレロ船より高さがあるため、縄梯子を渡さないと登って来れないようになっている

それから弓を撃ち下ろせる船台も付いている

あと二隻ギャラクシー船という大型の外洋船があって、これはあと二ヶ月は帰って来ない予定だ」

「ふーむ

なかなかの規模であーる

これは指導のしがいがあるのであーる」

「一応言っておくが、普段は民間用として使っているからここには半分しか停泊していない」

「大丈夫であーる

もし戦になっても、四十隻同時に動かすなんて愚策はしないのであーる

では、あそこの灯台から灯台へオールを漕いで操船技術を見せて欲しいのであーる」

「分かりました」


アステアが各船長に説明し、停泊している船は出航する

そして灯台に着いた船から、順次オールで漕ぎ始めた


(ロー!)


一糸乱れず船は進んで行く


「想定していたより練度が高いのであーる

もう陣形の組み方へ行くのであーる」

「我々海兵団は日々川上りで鍛えてきました

そこいらの船と一緒にしないで頂きたい」


アステアが少し怒り気味に話す


「それは失礼したのであーる

次は船長を集めて欲しいのであーる

そして出来れば辺境伯邸を借りたいのであーる」

「分かりました、うちで良ければ使って下さい」

「恩に着るのであーる」


それからカイル邸でアステア及び船長達に海洋戦についての講義をする


船の識別は三つ

団艦、公用船、商用船

団艦であるかは戦闘能力は関係なく、団に所属しているかどうかとのこと

エンペスの船は普段は商用船だが、戦時には海兵団の指揮下に入るため、団艦と呼ぶらしい


陣形は基本的に三つ

縦陣形、横陣形、斜傾陣形

移動は縦に一列に並んで移動する縦陣形

攻撃は横並びになって一斉に突撃する横陣形か、斜傾陣形が一般的

ただ魔法での遠距離攻撃があるため、何の魔法使いが居るかによって、戦術が大きく変わるとのこと

そのため、まずは基本陣形三つを練習して、それからそれぞれの陣形になるべく早くなれるよう訓練するらしい


次に船間の命令伝達方法を確認した

カイル海兵団が現在使っている、数種類の旗を船の一番高いところに掲げる方法

この方法は緊急事態、良好航海など簡単な意思表示しか出来ない

海戦では頻繁な命令伝達が必要なため、視認性が良い日は手旗信号で連絡を取り合う

旗手が赤と白の旗を持ち、旗の上げ方でメッセージを送る

これにより、陣形の変換や速度の速い遅い、例えば右から突撃など細かい指示が出来るとのこと

ザウザが手旗信号を一覧にした洋皮紙を持って来ていたため、それを書き写す

今後各船に完備させることにした


そして最後に使える魔法の共有を行った

カイルが中距離風魔法

エリサが遠距離火魔法

アステアが雷魔法

ボーズは…投擲魔法が使えると言い張ったが、単純な力技なのはみんな察して流した


ザウザからは三人も中遠距離魔法が使えるのは心強いと言って貰えた

二人入れば攻防で分けられるため充分らしい

その日は机上で陣形変換の流れを想定訓練し終わった


次の日

約二十隻のボレロ船を動かして、実習訓練を行った


縦陣形で移動してからの横陣形に変換

そして手旗信号の合図と共に横一線突撃した

その後旋回を全艦で合わせて、違う角度から突撃を試みた

手旗信号の伝達速度と旋回時の角度が各艦バラバラで、明日への課題となった

それから次の日は敵艦隊への乗船訓練などを一通りこなし、三日間の実習訓練は無事終わった


「非常に有意義な訓練を行えたのであーる

ぜひまた来年もお願いしたいのであーる」

「ザウザさん

数日間の指導ありがとうございました」


そしてアステアが代表して答える


「我々も得るものが多かったです

内航と外航の違いにも気付きがありました

いざという時のために定期的に訓練はしていきたいと思います」

「それは頼もしいのであーる

ぜひ君を海兵団にスカウトしたいのであーる」

「いや俺は兄貴と違って、国のために仕事を出来るようなやつではないんです」

「それは残念であーる」


それからザウザは馬車で帰路に着いた

今後はエンペスの職業学校で、海兵団の幹部候補を育てられるように、ザウザから教師を派遣して貰う約束を取り付けた

【人物紹介】

アステア

年齢:十八歳

生い立ち:南西部にある貧しい村で生まれ育つ

家族構成:両親は農民で歳の離れた兄が居る

出来の良い兄と比較されるのが嫌で家出をしている

独身

特技:雷魔法

episode:幼少期から兄と比較され、兄に負けまいと努力を続ける努力家

しかし、兄があまりにも優秀過ぎてしまったため、十五歳の時にプレッシャーに勝てず家出をし、エンペスに辿り着く

職業訓練校で給金が貰えるパン屋に就職しようとしたところ、カイルから手紙を貰ったドゥエインによって、海兵としての才能を発掘される

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