高速運搬騎兵
【第九部】大森林の攻略
後書きもお楽しみ下さい
一日一話投稿していきます
二十分ほど歩くと湖に着く
よく目を凝らして見ると、数十匹のビッグタートルの甲羅が湖のあちらこちらに見える
「ちゃっと多いけど大丈夫か?」
「あの数が一斉にこっちに来る気持ち悪さの方が怖いわ…」
湖に近付くとビッグタートルの一匹がこちらに気付く
(ブォォォォ)
ビッグタートルが叫ぶと、大きな甲羅がたくさんこちらに寄ってくる
ただしかしボーズは違うことを考えていた
(亀ってあんな声で鳴くんだ…)
「エリサ頼むぞ!」
カイルは一応戦闘体勢に入る
エリサは手に魔力を溜める
五本指からそれぞれ魔力を集めているようだ
そして拳より一回り小さい火の塊を、手のひらに創り上げる
『ファイヤーボール』
エリサは火の塊をビッグタートルに向かって放つ
ビッグタートルはそれに気付き、甲羅の中に隠れてしまう
「エリサ!
その甲羅はちょっとやそっとの魔法じゃ弾かれて意味がないぞ!」
エリサから放たれた火の塊は、ビッグタートルの甲羅に当たり、そのまま甲羅を突き破って貫通する
そして後ろに居たビッグタートルをも貫通する
「・・・」
カイルとボーズは驚く
エリサはこの僅か一年で、当時の三本指から現在は五本指まで魔力を圧縮出来るようになっていた
その威力はただのファイヤーボールの域を越えており、もはやファイヤーボールではない
それからビッグタートルが数十匹迫ってくるが、エリサのファイヤーボールなるものに全て撃ち抜かれて絶命する
「終わったわね」
「エリサ
あんだけ魔力使ったのに、魔力切れの気配もないな」
「これくらいなら何度も修羅場を潜り抜けて来たわ
私の魔力量だけで言えば、コビー先生を越えてるかもしれない
ただ実践経験がまだまだ足りなくて、ここでもう一段階上に上がるわ」
「そうだな
おれ達はまだまだ強くなる
大森林を攻略するぞ」
それから約三ヶ月
カイル達はカンタラス王国側の大森林で魔物という魔物を倒しまくっていた
そしてそれと共に大森林での資源の選定も行なっていた
その間にカイルとボーズは十五歳になっていて、区切りの良いところで一旦アンリ達の元に帰ることにした
そして大森林の入口まで戻ってきて、高速運搬騎兵達の訓練をするアンリ達を見付ける
「アンリさん!」
「カイル殿!
帰られましたか」
「はい!
この三ヶ月でおおよその魔物の把握と討伐は出来ました
さらに資源になりそうな物も選定を終えたので、一度戻ってアンリさん達の力を借りれればと
騎兵隊の訓練はどうですか?」
「それはもう見てくだされ」
「団!」
アンリが声を掛けると、五十人の騎兵隊が綺麗に等間隔を空けて全員並び立つ
縦横七人づつでアンリを入れて合計五十人
「隊!」
今度は十人を一隊とする五隊に分かれて固まる
「班!」
その十人がさらに五人づつの二班に分かれる
「団!」
そして最初の陣形に戻って全員集まる
「アンリさん
カッコいいです
凄いです!」
「実践経験はまだまだですが、いつでも戦場には出られるレベルです」
「あとは大森林の中で経験を積んで下さい
ところであれは…」
「あれは資源回収班が建てた巨大倉庫が二つと我々が暮らす家になります」
「想像以上の出来栄えです…
これなら心置きなく資源を回収出来ます」
カイルから資源回収の作戦が告げられる
ここから馬で二時間ほど行ったところに、露天掘りで採れる鉄鉱石の鉱床を見つけた
通常それを運び出すのに荷馬車を用意して、その周辺を警護してながら大森林を移動する
しかし整ってない道に荷馬車は使えず、またスピードも出ないため魔物の餌食になってしまう
そこでカイルは考えた
騎兵に鉄鉱石を乗せて走る、高速運搬騎兵を編成するという
重さ百キロほどであれば難なく積めるが、そうするとスピードが落ちてしまう
そのため一頭につき積載量を五十キロとして、隊列は十人の隊を横並びにし、五人の班が遊撃として先頭を走る
なるべく魔物を避けて高速で駆け抜けるが、避けられない魔物を見つけた場合は遊撃が対応し、本隊の中の五人が先頭に立ち遊撃となる
最初の遊撃は後方から本隊に合流し、再び隊となる
編成は午前と午後に団の半数ずつが運搬を交代し、運搬をしない半日はトレント狩りに充てる
これにより実践経験を積めて、お金が掛かる騎兵を維持しながら活動資金を得ることが出来るようになる
資源回収班の半数は鉄鉱石の採掘
半数はトレントが一番浅い層で狩れるため、高速運搬騎兵が狩ったトレント材集めをすることになった
回収した鉄鉱石とトレント材はウィンブルの商業ギルドに買い取って貰う予定だ
「という訳で、アンリさん達には資源回収という仕事もして貰います」
「それは構いません
我々は人の役に立てれば大丈夫です
はなから変なプライドは持ち合わせていません
しかし、この量の鉄鉱石を持ち帰って我々の維持費を捻出出来るのでしょうか」
「おれの計算上では大丈夫です
しかもこれからもっと騎兵を増やしていきたいので、維持費だけでなく新しく人を増やす資金も確保する予定です」
「それは頼もしい
より人数が増えればやれる陣形も増えますからね」
それからカイル達は大森林攻略作戦を決行した
カイル達と資源回収班を乗せた高速運搬騎兵隊の半数が、馬で大森林の中を駆け抜けて、鉄鉱石の鉱床に辿り着く
道中魔物に遭遇したが、馬の方がスピードが速く、数回遊撃が入れ替わるだけで戦闘を避けることが出来た
「こちらです
ここは露天掘りで鉄鉱石が採れますので、資源回収班の皆さんはこちらで採掘お願いします
高速運搬騎兵の皆さんは運搬をお願いします」
「カイル殿
分かりました、お任せ下さい」
資源回収班が早速採掘を始める
その間にカイルとアンリ達は周辺への警戒にあたる
するとオーク数匹とヒュージベアやグレイトニードルボアなどの魔物が居て、狩れるだけ狩る
お昼前には採掘と馬への積載が終わる
馬へは鐙の後ろの左右に、ブルーフロッグの皮袋を付けて、片方約二十五キロづつ合計五十キロの鉄鉱石を入れる
「カイル殿
では先発隊は出発します」
「はい、気を付けて下さい
重ければ途中で捨ててしまって良いので、命優先でお願いします」
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