ボーズ・ブンバルト
【第八部】ボーズの行方
後書きもお楽しみ下さい
一日一話投稿していきます
約一年前、ボーズは突如として現れた
そして下働きとして、兵士の食料確保や汚物の処理まで、生活に関することは何でもやってくれた
兵士達から絶大な信頼を得たボーズは、次に救護班に入ることになった
当初は負傷した兵士達にヒールを使って回復させていたが、戦場で多くの兵士が命を落としている現状を知り、体一つで戦場を駆け回って負傷者を救護した
そうしてボーズが戦場を駆け回ること数ヶ月
兵士の死亡確率が大幅に減り、慢性的に兵士不足に陥っていた国境警備隊だが、それを解消することに成功する
兵士が整ったカンタラス王国の国境警備隊の隊長は、功績が欲しくなり攻撃へと転じる
しかしボーズは死者が出てしまうことと、国境を守れば良いとの考えから争いを望まず、国境警備隊の隊長に直談判を試みた
すると反逆罪とみなされ、牢屋に入れられてしまう
それを知ったボーズに助けられた兵士達は衝撃を受けたが、命令に背く訳にもいかず、モンゴリアン王国へ攻め入った
最初は順調に支配地域を拡大出来たものの、次第に負傷兵士が増え、徐々に劣勢となる
劣勢となると、益々負傷兵が増える負のスパイラルに陥り、ついには元の国境すら攻め込まれ割り込んでしまう
そして兵士達の我慢は限界に達し、有志の兵士達でボーズを解放するよう直談判を行なった
しかし隊長はその者達をも反逆罪として、牢屋に入れてしまった
ただ今度は兵士達も黙って見過ごすことはなく、大半の兵士が立ち上がり、クーデターを起こした
そこでボーズ兵団と名乗り、ボーズを団長として勝手に立ててしまった
隊長は味方が少なかったこともあり、すんなり拘束される
それから兵士全員の嘆願書を王都に送り、ついにボーズ兵団が国境警備隊として認められてしまった
元の国境をかなり割り込んでしまっていたが、ボーズが救護班に復帰し、戦場で駆け回ると次第に盛り返すこととなった
しかしボーズは争いを好まず、必要以上に領土を取り戻すことはしなかった
モンゴリアン王国は、今がチャンスと果敢に攻めてきたが、ことごとく兵士が捕まってしまい、戦線を維持するのが難しくなる
戦線の維持が難しくなると、モンゴリアン王国の各部族長は撤退を決断した
そうして元の国境まで戻って来たボーズ兵団
そこで少し前に攻め込んで来て捕らえた捕虜達を、ボーズはヒールで治してから解放してあげた
するとモンゴリアン王国の部族長から感謝されることとなり、和平を結ぶこととなった
そして本日モンゴリアン王国へボーズが出向き、各部族長と和平交渉を行ない、明日帰還予定とのことだ
「あいつはとんでもないことをしてたな」
「ええ
まさかボーズ兵団を結成して団長になっていたなんてね
何だか笑ってしまうわ、ふふふ」
「まぁ何にせよ頼れる男になっているのは間違いないな」
「明日会えるのが楽しみね」
しかし明日になってもボーズは帰って来ない
その次の日も
「帰って来ないわね…」
「ああ、帰って来ないな…」
「何かあったわよね…」
「何かあっだろうな…」
すると見張りの兵士が話す
「心配するなよ!
あのボーズ団長のことだ
きっと向こうでも気に入られちゃって、熱烈歓迎を受けちまってるに決まってる、ハッハッハ」
「そんな気もするけど、明日になったら探しに行かせて貰う」
「分かった
多分大丈夫だと思うけどな」
そして次の日
カイルが朝の鍛錬をしていると
「おいカイル!
ドラゴンスレイヤーの嬢ちゃん!
モンゴリアン王国の方に砂煙が見えるぞ!」
「なに!?
やっと帰ってきたか!」
「全く
心配させ過ぎだわ…」
それから二時間もしないうちに姿がはっきりと見えてくる
「何かおかしいぞ」
「ええ
とってもね…」
砦まで帰ってきたボーズ
その格好は、明らかにおかしかった
額には鷲の羽根らしき物を三枚付け
服は家畜の皮で出来たようなベストに、ズボンも家畜の皮で繋ぎ合わせている物を履いている
顔には何らかの生き血のような赤い塗料で、両頬に三本づつと顎に一本線が入っている
「カイル!エリサ!」
「「ボーズ!」」
「二人とも元気にしてたかい?
迎えに来てくれたんだね!
僕嬉しいよ!」
「ああ
迎えに来たぞ!
おれ達は元気だ
また一回り体が大きくなったんじゃないか?」
「そうなんだよね
ヒールをたくさん使うと魔力がなくなってしまってさ
その分食べないとと思ってたら食欲が止まらなくて…
そんなカイル達は何だか少し大人になったというか雰囲気が変わったね」
「まぁ二人とも色々経験したからな
それはまた落ち着いて話そう
それよりボーズ、その格好はどうしたんだ?」
「ボーズ・ブンバルト…」
「え?」
「僕、向こうの国で名誉貴族の称号を貰って、苗字を貰ったんだ」
「ちょっと待って
どういうことだ」
「その…僕が捕虜の怪我を治して解放してあげたことは知ってる?」
「ああ、聞いた」
「そしたら向こうの部族長達が、ありがとうって、こんなに争ってきた相手なのに良いやつだってさ
それでその中の部族長が王様の親戚らしくて、領土を持たない名誉貴族にするって
こっちで言うと下級騎士みたいなものかな
それでその部族長からお祝いの宴をして貰ってね、三日三晩食えや飲めやの大騒ぎでね…」
「ボーズ、あなたって…
それ凄いことじゃない!
これで私達はモンゴリアン王国とパイプが出来たわ
きっと将来何かの役に立つわよ」
「そ、そうかな、へへへ」
「まぁ何にせよ無事帰って来れて良かった
積もる話もあるだろうから今日は砦で宴だ」
「げっ
また宴…
もう飲めないし寝たいよ…」
それから砦では食えや飲めやの宴が行われた
カイル達はみんなでこの一年あった事を語り合い、それはとても一日では語り尽くせるものではなかった
次の日
「ブン、ブンベルト君だっけ?」
「いや、ブンバルトな!」
「はっはっは
これでボーズも貴族の仲間入りだな」
「それ絶対イジってるよね?
本当にカイルは変わらないなぁ、ははは
でもエリサは何というか、大人になったというか色々大きくなったというか…」
エリサが右ストレートをボーズに放つ
(ひでぶーッ)
「全くどこ見てんのよ
体だけじゃなくて魔力も凄く成長したんだからね」
ボーズは鼻血を流しながら唱える
『ヒール』
「あなた自分にもヒールが使えるようになったのね」
「何度か死に掛けてね
使わざるを得なかったというのが正しいかもね、ははは」
「本当にボーズも成長したんだな
これでおれ達…
大森林の攻略に挑める!」
「うん」
「ええ」
それからボーズはボーズ兵団の解散を宣言した
しかしボーズ兵団千人のうち、約百五十人はボーズに付いて行きたいと言い出した
カイルは防衛が手薄になってしまうため、一度断った
ただボーズから一年間停戦の約束を取り付けて来たということをその時報告され、早く言えよとボーズに一発見舞ってから、その志願者の同行を認めた
カイル達はその場で何通か手紙を書き、残った兵士に託した
そのままどこへも寄らずにウィンブルに行く予定だ
志願した約百五十人の振り分けだが
まずヒールを使える者が二十人居た
その者達はカイル兵団内の救護班として任命した
そしてエンペス村に約五十人、そのうち救護班十人
それからタルト村に約百人、そのうち救護班十人と振り分けた
ヒールを使える者は貴重で、これてカイル兵団の戦略は大幅に広がることになった
【人物紹介】
ボーズ・ブンバルト
年齢:不詳
生い立ち:カンタラス王国
家族構成:妹がいるらしい
特技:ヒール
episode:紛争地帯に現れた英雄
戦いを好まず、人を癒す力を持っている
大部族長のナマンディバルディに気に入られ英雄の称号を与えられる
妹をナマンディバルディの息子と結婚させたいと言われている