大森林
【第六部】それぞれの道編
後書きもお楽しみに下さい
一日一話投稿していきます
二日後カイル達は予定通り大森林に着く
大森林はカンタラス王国でいうと北西に広がっていて、数カ国に跨っている
莫大な資源が眠っているとされているが、広過ぎるのと出て来る魔物の強さから、各国ほとんど開拓が進んでいない
相手は魔物で、一度倒しても知らないうちに復活してしまうため、領地の維持に莫大なお金と人の犠牲が必要になってしまうためだ
「今日は大森林の中に入って少し索敵して、無理せず早めに切り上げて野営しましょう」
「アンリさんの判断にお任せします」
馬は大森林の入り口に繋いで、カイル達は歩いて大森林に入る
そして大森林に少し入った所で、グレートウルフの群れを見付ける
「カイル殿
グレートウルフの群れです
あまり大きくない群れなので、小生達の戦い方を見るにはちょうど良い相手かと」
「分かりました
いざとなったら一緒に戦います」
「では、スピリットファイヤ!」
四人はフルプレートに盾と剣を持ち、少し間隔を空けた菱形の陣形で進む
少し進んだ所でグレートウルフに気付かれ、こちらに走って来る
「密集!」
四人が密集し、背を合わせて盾を四方に構える
グレートウルフは四方から突撃してくるが、弾き返す
そして、唯一隙間のある菱形の真ん中上部に、グレートウルフが飛び付き顔を出す
すると中から剣を突き上げて刺し殺す
「回転!」
今度はその密集陣形の盾の隙間から剣を突き出して、回転しながら移動する
グレートウルフはそこに突進していくが、回転しながら突き出した剣に斬られたり、刺さって数を減らしていく
残り数匹となった所で、グレートウルフは逃げ出した
「ふぅ
何とか退治出来てよかった
よし、次、警戒体制!」
再度菱形になって警戒を強める
次に発見したのはトレントだ
「トレントが五体くらいいます
あやつらは硬くて、枝を伸ばした攻撃で手数も多い
カイル殿いかがでしょうか?」
「次はおれの番だね
任せて」
カイルは身体強化魔法を使って、トレントまで距離を一瞬で詰める
そして、素手でトレントの顔を殴り吹き飛ばす
残りのトレントがそれに気付いて、枝を自由に伸ばして波状攻撃をしてくる
カイルは腰に掛けてある短剣を抜いて全て弾き、剣から風の刃を四発出し、残りのトレントを真っ二つにしてしまった
「これは想像以上に強い
小生らC級パーティーメンバーでは収まらない器です」
「いえいえ、これくらいの魔物なら何とかいけそうです」
「では次は一緒に戦ってみましょうか」
カイル達は索敵を開始すると、次にオークの集団を発見する
「ゴブリンが彷徨くような感覚でオークがたくさんいますね」
「はい、ゴブリンの群れと同じように、オークの群れも大きいと、ハイオークやオークキングが居ます
そうなるとBランク以上のパーティーかCランクだと数パーティーでレイド攻略をする感じですかね」
「この大森林だとそんなのがうじゃうじゃ居る訳ですか…」
「そうですね
だからどの国も攻略を進めていません」
「とんでもない土地を貰ってしまいました、ははは」
「ただ開拓出来れば木材は当たり前ですが、トレント材や鉱石や魔物の素材、さらにダンジョンがあれば、よりレアな魔物の素材や鉱石が手に入りますからね」
「まぁ修行しつつ少しずつ攻略を進めていきますよ」
しばらくオークの群れを観察するが、群れは大きくないと判断し、戦闘に入る
「五匹居ます
とりあえず小生達でヘイトを引き付けますので、その隙に一匹づつ倒して下さい」
「分かりました
気付かれないようなら、風の刃で倒してみます」
カイル達はゆっくり近付く
オーク達は他の魔物を狩ったのか、そちらに意識が集中している
風の刃が当たる距離まで来て、カイルが二撃放つ
(ザシュッザシュッ
ぐうぉぉ)
オーク一匹の背中と腕に深い傷を与えるが、殺すには達しない
その他の四匹がこちらに気付き、槍を持って走って向かってくる
「シールドフォース!」
アンリ達は前衛を二人置き、その外側の少し下がった所に後衛二人が構える形を取る
「流星!」
走ってくるオークに向かって、盾を構えながら四人は走っていく
そしてオークと正面衝突する
前衛の二人は矢尻の様に二人で盾を合わせて先端を作る
そこにオークが体当たりするが、前衛の二人は受け流し、後衛も前衛の構えた盾に合わせるように矢尻のような形を完成させて、オークを受け流す
するとオークは前衛の盾に当たった右側と左側で二匹と二匹に分断される
「よし
二対二!」
前衛と後衛が背中を合わせて、オークと二対二の状況を作る
そして片方のオーク達の背後からカイルが斬り込む
カイルは一匹の肩を深く斬るが、またしても倒すに至らない
斬られたオークは後ろを振り向き、槍を振り回す
カイルは振り回した槍を剣で受け止めるが、弾き飛ばされてしまう
(くっ)
しかしすぐさまアンリ達がオークへ盾でぶつかる
オークはアンリ達に再度意識が向く
カイルは身体強化魔法を使い、さらに自身に風魔法を纏わせる
「瞬脚」
その瞬間カイルはオークの背後に迫っており、その勢いを利用して、肩を怪我しているオークの首をはねる
もう一匹のオークはアンリ達に背を向けて、カイルへ槍で攻撃をする
カイルは瞬脚で避け、オークの腹部を剣で貫く
しかしオークはまだ絶命せず、腹に剣が刺さったままカイルへ攻撃を試みようとする
「押し込め!」
アンリ達はオークに密着し、盾の外側から剣を突き出し、オークの両脇腹を斬り付ける
(ぐうぉぉぉ)
オークが一瞬怯んだところで、腹に刺さっている剣を抜きカイルは上へ跳躍し、頭を真っ二つに斬り裂いた
残りのオークとは五対二になったことで、危なげなく倒すことに成功した
「アンリさん達の練度が高くて、安心して戦えました」
「いえ、小生達は一人では大した力もないので、騎士時代に叩き込まれた陣形を駆使して、やっと戦えるレベルですよ」
「でもゴブリンと違ってオークは硬いですね
全力を出さないと仕留められませんでした」
「それでもほぼカイル殿が倒したようなものですから、もしかしたら単独でCランク、いやBランクくらいの実力はあるかもしれませんね」
「ありがとうございます
今Dランクで先は長そうですが、頑張ってみます」
その日の調査は終わりにして、グレートウルフとオークの毛皮を剥いで、野営地まで戻って来た
トレント材は勿体無いが、重いため持ち帰る事は出来なかった
翌朝…
「今日はなるべく戦闘を避けて、もう少し奥に行ってみようと思います
生息している魔物に変化がないか確認します」
「強い魔物が浅いエリアに出現したら、より強い魔物が深いエリアに出現して、その魔物を追い出してるってことですね」
「はい
調査は定期的に行われていて、これは後ほどカイル殿に費用の請求がいくと思います
さらに高ランクパーティーを派遣するとなると結構な資金が必要となります」
「強い魔物があまり出てこないことを祈るだけです」
それからカイル達は、一週間調査を繰り返した
途中で魔物を狩りして、素材を回収して回った
「カイル殿
これで今回の調査を終わりにします
たくさんの魔物の素材も手に入って一石二鳥でした
改めてパーティーを組んでくれてありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございました
非常に良い経験をさせて貰いました
素材はアンリさん達に全て差し上げます」
「カイル殿が居なかったらこんなに素材も手に入りませんでしたよ
ぜひ貰って下さい」
「そうですか…
では、貰える物は貰っておく派なので、一部は頂いておきます
おれは武道大会までここに籠って修行を続けます
ここで一旦お別れになりますが、街でエッジの様子をたまに見に行ってくれたら助かります」
「分かりました、定期的に様子を見ておきます」
アンリ達は大森林を後にする
カイルは一人残り、大森林に向かって歩き出す
「さて
ここからが本番だ
残り三ヶ月、いけるところまで大森林を攻略する!」
【魔物紹介】
トレント 木の魔物
特徴:枝をムチのように自由に動かして攻撃してくる
魔法耐性があり、中途半端な魔法攻撃は効かない
木材は少量の魔力が宿っており、魔法使いの杖として高値で取引されている




