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episode ケイ

【モデオ共和国編サイドストーリー】

一日一話投稿していきます

私はケイ、今年で二十四歳

若くしておやじの宿の経営を任されているのね

というのも、物心ついた時から宿は私の生活の全てだった

そして私が十二歳の時にお母さんが病気で死んでしまって、その日からお父さんの笑顔が消えてしまったの

そんなお父さんに元気を出して欲しいと思って、ある日黙っていきなり受付をやってみたのね

そしたらお父さん泣いて喜んじゃって、お母さんにそっくりだって

それからお父さんの笑顔も戻って、私はずっとおやじの宿で働いている


小さい頃からベットメイキングだけは手伝っていたから、今では時間も掛からずにシーツの中に藁を入れることが出来るの

私の今の仕事は受付に掃除に食事の配膳、さらに二年前からは経営の全てをお父さんから託されて、宿の会計もやっている

なんでも俺が居なくなっても一人でやっていけるようにって

でもお母さんには悪いけど、もっとこっちの世界で長生きして欲しいと心から想ってる


今回特別におやじの宿の収益を公開するわ

物価はパン一個一銅貨って考えてくれれば良いかしら

売上は月三十営業日×十二部屋×ホテル稼働率9割×一泊十二銅貨=月三千八百八十八銅貨

仕入は月三百二十四人分の食材×一食三銅貨×朝夕二食=月千九百四十四銅貨

修繕費に一割の三百八十八銅貨

月の利益は千五百五十六銅貨

私達の食事は一緒に済ませちゃうから食費は掛からない

家賃もないし、贅沢をしなければ生活するのに困らないの


それである日の事

新しく子爵が来たようなのね

でも都会育ちのお坊ちゃんみたいで、宿泊者さん達が口を揃えてバカ子爵って

あんなに税金上げて塩と魚介類なんて誰が買うんだって

私は最初その意味が分からなかったけど、ついに宿にも影響が出始めたの

人頭税の銀貨五枚は銅貨にすると五十枚だから、二人分払ってもそんなに影響はなかった

でもうちの料理で使う塩と魚介類が凄く値上がりしてしまったの

今まで一人一食3銅貨で済ませられたのが、五銅貨近くするようになってしまった

そうなると私達の月の手残りは約六百銅貨でぎりぎり生活は出来るレベル


それからしばらくすると毎月うちで泊まってくれてた商人さん達があまり来なくなってしまったの

塩と魚介類を仕入れられるのはここだけじゃないからって

自分たちも食べていかないといけないからごめんねってね

それで部屋の稼働率が五割以下にまで落ちてしまったの

うちは稼働率が高くないと利益が出ない構造になっていたから、ほぼ利益が出なくなってしまった

今までの蓄えがあるから当面は大丈夫だけど、宿どうしようって

でもお父さんのために頑張らなくちゃって思ってるんだけど、何も出来ない自分が悔しかった


そんなある日、救世主が現れた

うちに泊まってた若い子達なんだけど、あの子爵をやっつけたって

それからすぐに税金は三年間無税ってお触れが出たの

もう飛び上がって喜んだわ

それからすぐに商人さん達も戻って来てくれて、その商人さん達の話を聞いた商人さんが現れて

以前にも増して商人さんが泊まってくれるようになって、常に満室になるようになったの

でもせっかく来てくれたのに断るのは、なんだか申し訳なくて、何とかしたいってずっと思っていたの


それからモヤモヤする日々を過ごしていたら、ローズ村に宿がないって話を商人さんが教えてくれた

それでその商人さんに、カイルのお母さんのセダさんを紹介して貰ったの

そしたら話がとんとん拍子に進んで、なんとおやじの宿ローズ村店を開くことになった

建設費はうちから半分とローズ村から半分出して貰って、何とか目途は付いた

でも問題は働く人で、ローズ村はそこまで宿泊客も居ないみたいだから、建物の大きさはうちの半分で六部屋

そうなると一人で運営可能

誰か適任は居ないかなって思っていたら、ボーズさんの妹さんが手を上げてくれた

何でも元貴族のお母様から料理に始まり、読み書き計算や貴族作法を教わっていたみたいで、即戦力として採用が決まった

年齢はまだ若いけど、ボーズさんのお母様やセダさんも手伝ってくれるっていうし、任せてみようと思う


いざローズ村店が開店してみたら、想像以上にお客さんが入ってしまってこちらも常に満室になってしまった

エンペス村が凄い勢いで発展してて、その恩恵で人の行き来も活発になった影響のようなのね

でも大丈夫、ローズ村店を作った場所は少し開けたところだから、いつでも拡張出来るようにしていたの

結局村のお金でさらに六部屋建てて、合計十二部屋になった

しかもボーズさんのお母様も本格的に働くことになったみたいで良かった

順調に行けば建設費は三年で返せそう

私の居る本店へは、名前を貸していることと店舗運営の指導をしたということで、毎月少しばかりお金を頂いている

私は要らないって言ったんだけど、エイルムさんとセダさんが貰っておきなさいって

何があるか分からないし、今後お店が増えるかもしれないから、その時の元手にしたら良いってアドバイスを貰ったの


そんなこんなで月日が流れて、ある日お父さんが話があるって言ってきたの

何事かと思ったんだけど、宿は休みもないしケイをこの店に縛り付けたくないって、俺はもう大丈夫だから好きなように生きなさいって

でも私はお父さんとお母さんのこのお店が好きで働いてて、ずっと続けたいって思ってるって話をした

けれどもお父さんはもっと色んな世界を見れるチャンスだって、だからいっぱい色んな経験をした方が良いって

どちらとも譲らないから話は平行線になって、その日は終わったの

次の日になってお互い冷静になってまた話し合った

お父さんの気持ちも分かったし、私の気持ちも分かって貰えたの

だから二人で結論を出した

本店に人を入れる、それで私は裏方的な仕事をしながら、時には村をぶらぶらしたり、他の村や街に出掛けたりする

また新しい宿の建設も本腰を入れて拡大していこうと思う

これから私は宿泊業の女王になる、そう決めたのだった

良ければポチッとケイの応援をお願いします!

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