別働隊
【第四部】モデオ共和国編
後書きもお楽しみ下さい
一日一話投稿していきます
その頃、カイル達は約一万もの兵士が来た事もあり、かなり後方に野営することとなった
「僕たちかなり村から離れちゃったね」
「ああ、次の支援物資が必要になるまでおれ達は雑用をすることになるだけだからな」
「雑用って何するの?」
「一番大きな仕事は兵士達の食事の準備だ
今回は遠征じゃないから、基本的に温かい食事を作らないといけないんだ
だから森に入って薪の準備から始まって、襲われないようにその護衛、次に水の確保、それから一万人が食べられるように食材の調理だ」
「一万人の食事って想像出来ないね」
「まぁ一万人といっても全員が兵士じゃなくて、その中にはおれ達のような食料輸送隊や武器輸送隊に治療班などが大体一割は居る
例えばおれ達五百人が食事の準備をするなら、一人当たり二十人分の食事を用意すれば良いんだから、そう考えるとそこまで大変じゃないだろ?」
「なるほどね」
「ましてや食事なんて固いパンを器に、後はスープに色々ぶち込めば何とかなる」
「でも何とか食事だけでも楽しみを見出して貰えるようにしたいね
連れて来られた人も多いだろうし、あの村の子供達にも食べさせてあげたい」
「私もそう思う
あの子達も働かされてるだろうから食べる権利はあるはずよ」
カイル達は後方支援に精を出す一方・・・
モデオ共和国側にて
「セラス
村は予定通り三方向から同時侵攻で簡単に取れた
そしてこれからただ防衛をするだけだが、お前の五百騎の別働隊もそろそろ動き出す頃か」
「アクムンド様
順調に進んでおります
私も一緒に行って参りますので、こちらはお任せします」
「ああ、簡単な仕事だ」
「一つだけ
一つだけ心配事があります
偵察によると宮廷魔導士のジル士団長と、その右腕とされるコビーが来ているそうです
彼らが本気を出せば負ける可能性はあります」
「そうは言うが、お前が言うには今回は全面的には出て来ないのであろう?」
「ええ、そうなるとこちらも総力戦で挑む事になりますから、全面戦争に突入してしまいます
それはあちらの国も避けたいでしょう」
「そうだな
北のグリッジ帝国が虎視眈々とカンタラス王国を狙っているからな」
「はい、では私はこれで」
セラスは緩衝地帯の接収された村から、少し南に下った先の大きな川の前に立っている
「ゾルグ
準備は出来たか」
「はい
丸太の台船を十艘準備しました
相手は大いに油断してますよ
いよいよですね」
緩衝地帯のちょうど間に大きな川が流れている
取られた村は少し流れが弱まった場所の中洲に存在し、村民達は川魚を獲りながら生活をしている
兵士達が自力で通れるのはこの流れが弱い場所しかなく、その他は川の幅も広く流れも早い場所がある
カンタラス王国側は川幅がある事と、モデオ共和国がただ防衛をすれば負けない事があり、まさか自分達より弱小国が攻めこんでくるとは思っていなかった
セラスが用意したのは丸太の台船で、通常は帆もなく荷を少し運べるだけでほぼ使い捨てにされるものだが、それをセラスは馬が乗れるように少し大型に改良し、向こう岸に居る協力者と矢でロープを渡す
台船は向こう岸と渡したロープで繋ぎ、無事往復し五百騎を運んだ
「ではこれより敵後方へ迂回する
そこから食料庫まで突入し焼き払う
俺に続けー!」
(ダダダッダダダッダダダッ)
馬が駆けて行く
その頃カイル達は、薪の確保をしつつ精鋭達と長弓で魔物を狩っていた
エルが気付く
「おい、あっちのウィンブルの方、やたら砂が舞ってるぞ
援軍か?」
「いえ、前線は睨み合ってるだけですし、援軍にしては急いでいるような…
まさか!!」
カイルがすぐに指示を飛ばす
「村とウィンブルの間の街道に戻るぞ
おそらくらあれは敵だ!」
「何だって!?
どうやって裏からやって来たんだ!?」
「予想ですが、川を渡って来たのかと…」
「うちの兵士達は見張ってなかったのか!?」
「時間がないので簡単に説明しますが、モデオ共和国を弱小国と見下して、敵が攻めて来ることを想定してなかったんだと思います」
「作戦を立てたやつを恨むぜ」
「ええ、ですからここで我々が止めないと、この戦は厳しい戦いになるかもしれません
後方支援でぬくぬくしてたかったんですが、そうは行かなくなりました」
街道に出たカイルはさらに指示を出す
「到着までおおよそ一時間くらい
そこら辺にある薪運搬用の荷馬車を二列に並べて全部倒して、即席の砦を作るぞ
ただ真ん中は騎馬が通れるように間を空けてくれ!
おれ達十人を残して、他の兵士達は前線へ報告に行って欲しい」
手伝いで同行していた他の部隊の兵士達は走って引き上げて行く
カイル達十人は荷馬車を二列に並べてから、一台づつみんなで押し倒し、即席の砦を完成させた
「カイル
それでどうする?」
「まずは一列目の荷馬車に身を隠しながら長弓で兵力を削る
おそらくあのスピードだと少数の騎兵だと思う
精鋭兵士の方々、なるべく外側の騎兵から倒してくれ
さっき狩りを見た限りだと相当腕が立つと見える」
「「任せとけ!!」」
「俺達はそこまで長弓が得意じゃない
手当たり次第射るぞ
エリサは二列目の荷馬車の砦でファイヤーボールをいつでも撃てるように用意しておいてくれ!」
【人物紹介】
セラス
年齢:四十一歳
生い立ち:不明
家族構成:両親兄弟は不明、独身
特技:土魔法、身体強化魔法、剣術、統率、武器マニア
Episode:生い立ち不明だが魔法学校に入学し首席で卒業をする
傭兵時代に世界各国を転々とした際、現地の女性とのアバンチュールを楽しむのが楽しみの一つ
武器の素材のためならどこへでも出向き、竜を単騎で倒した逸話は、ある界隈では伝説となっている




