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コビーという男

【第四部】モデオ共和国編

後書きもお楽しみ下さい

一日一話投稿していきます

数週間後の最前線の村にて

「先に村を取られちゃいましたか…

これは骨が折れそうだ…」

「ほっほっほ

まぁわしらが全面的に出て行ってしまったら、全面戦争に突入してしまうからな、仕方ないわい」

「しかし急いで来たのにセラスの姿が見えません

ジル、もしかして騙しましたか?」

「いや、偵察の話によると南軍の作戦参謀長をやっとるようじゃ」

「じゃあ後方支援ってことなのか…

くそっ」

「とりあえず兵士達が着くまで待機じゃ」

「じゃあ僕はちょっとその辺で仕事してきますね」

「ああ、あんまり寝過ぎるなよ?

夜寝れなくなるぞ」

「へいへい気を付けます」

「やっぱり昼寝する気じゃな!」


(ぐぅーぐぅーぐぅー)

(ヒヒーン)

「ん?もう兵士達が着いたのか?」


コビーは村の外の森の中で、自分で作った土で固められた塔のような物の上から見下ろす


「あれ?武器輸送隊が兵士達を差し置いて先に来ちゃったのかな

いや近くの村から来たんだろうな

まぁ良いや、僕の仕事じゃないしな」

(・・・ぐぅーぐぅーぐぅー)


それから一週間経ったがまだ兵士達は到着しない

それなのに関わらず、あの荷馬車だけは三往復して、ついに野営をし出した


「全く

近くの村だからってこれは…

これは立場的に叱らないといけない

たまには仕事しないと怒られるしな…」


コビーは村の受け付けに行き、彼らの情報を聞く


「ふむふむ、なるほど

え?

彼らはウィンブルから来たのか?

他の隊はどうしたんだ?」

「ええ

それが彼らが言うにはぬかるみにハマって大渋滞しているそうです」

「彼らはそれを回避して来たと…

ふむ

面白い」


カイル達が野営をしていると一際上等なローブを来た、少し背の低い少年が話し掛けてきた


「やぁ

君たちのリーダーは誰だい?」


エルが叫ぶ

「おい、少年!

ここは遊びで来るところじゃないぞ!

早く自分の村へ帰れ!」

「えーと

これでも大人の男なんだが…

君名前は?」

「ああん?

俺はエルだ

お前はそんな貴族ごっこみたいな格好して誰なんだ?」

「僕は宮廷魔導士の副士団長をやってるコビーって言うんだ

これでもこの国じゃ多少有名だと思っていたが僕もまだまだだな」

「きゅ、宮廷魔導士だって!?」

「え?宮廷魔導士?エルそんな大声でどうしたの?」

「あ、いやこちらのしょうね、いや宮廷魔導士様がカイルに用があるそうだ」

「エルさんどうしたの?」

「君がこの隊のリーダーか?」

「はい、そうですが何か?」

「カイル兵団というらしいな

私は宮廷魔導士の副士団長をやってるコビーだ

少し話を聞きたい」

「はぁ、宮廷魔導士様ですか…」

「ああ、なんか自信を失くすな…

まぁ良い

君たちだけ何故三往復も出来たんだ?

他の部隊は道中大苦戦してるらしい」

「はい、俺達はウィンブルからここまでの道は細くてぬかるみが多いことを知っていました

そこで積み荷を軽くしてその分ぬかるみを回避して迂回出来るようにしました

その分三往復もしないといけなかったですが、結果的に俺達の方が早く着いたということです」

「なるほど

君は…ずっと兵士をやっているようには見えないが…」

「はい、俺は南のローズ村で商人見習いをしてて、その後色々ありまして…今はエンペス村というところの子爵をやっています」

「通りでか

頭の固い兵士では思い付かないだろうな

一回で運んだ方が楽だし、ぬかるみにハマっても人力で対応しようとしたんだな」

「おそらくは…

俺達はそれをずっと横目で見てましたので」

「ふむ

君の名前を覚えておこう

ちなみに聞くが、今からどうしたら他の隊は早くここまで来れると思う?」

「そうですね、もう途中まで来てしまっていますので、積み荷を減らす事は出来ません

そうなると裏ワザですが…

土魔法が使える魔導士を大量に呼んで、整地していくのが良いかと思います」

「まぁそんな都合良く土魔導士が居るかって問題はあるね」

「はい、まぁ宮廷魔導士様が来ていると噂で聞いたものですから…」

「そこまで知っていたか

ふふふ、益々気に入った!

よし、僕の名声を広めて貰うのと、お礼に凄い魔法を見せてやろう」


コビーは何やら魔法を詠唱している

すると村の門からウィンブルへ繋がる道が、数百メートル一気に整地された


「うわぁ

宮廷魔導士ってやっぱり凄いわ!!

あんな一瞬でこの距離を整地してしまうなんて!」

「ぼ、僕も丸太で叩けばあれくらい出来るよ!」

「ボーズ、それじゃあ何ヶ月も掛かるわよ

そん時には戦は終わってるわ」


ボーズはがっくりと肩を落とし、今日が彼の人生で一番のなで肩を記録した


それからさらに一週間すると、兵士達と武器輸送隊が最前線の村へ続々と到着し始めた


「コビー

何やらちゃんと仕事をしたそうじゃないか?

来た兵士皆んなから感謝の言葉が伝えられてるぞ」

「ジル

おかげで膨大な魔力を使ってしまいました

しばらく回復するために寝て来たいと思いますよ」

「まぁセラスの動きも分からんしな」

「早くあいつをこの手で…」

「そんなに憎いかセラスが」

「ええ、なんたってあいつはですね

僕と同じ魔法学校に通ってた時に、僕が好きな子に僕を見下したいってだけで、その好きな子と付き合ったんですよ!

許せませんよ!」

「それはもう三十年くらい前の話じゃろう…」

「三十年経っても僕は昨日の事のように思い出します」

「それでそんなに拗らせてしもうて…

まぁお主の好きにすれば良いがのぅ」

「ゴホンッ

ところでとても面白い人財を見付けましたよ」

「ほう

お前が言うなんて、どんな人財じゃ?」

「南のローズ村の出身で、商人見習いをしてた兵士が居ましてね

誰よりも早くこの村へ物資を届けたんですよ

それでその者に整地をアドバイスされましてね

仕事をした次第なんです」

「ほっほっほ

お前が人のアドバイスを素直に聞くなんて、珍しいこともあるもんじゃな

わしも興味が沸いたわい」

「まぁいつか会えると思いますよ」


コビーはジルとの話が終わると、また自らで作った塔の上で体を休めた

ジルは髭を撫でながら考え事をする


「して、ローズ村で商人…

どこかで聞いたような…

もしかして…

ほっほっほ

会えるのが楽しみだわい」

【人物紹介】

ジル

年齢:七十三歳

生い立ち:地方の酒造屋の息子として育つ

家族構成:妻とは冒険者時代に出会う、本人は元冒険者Aランクで妻は元冒険者Bランク

子供は三人娘、長女・次女は既に貴族へ嫁いでいる

末娘は未だ実家暮らしをしており、王都の冒険者ギルドの事務方で働いている

特技:魔法(風・聖・身体強化)、酒造り

Episode:お酒を呑むことが大好きで元冒険者の妻とは酔った勢いで致してしまい、出来婚をしている

冒険者をする傍ら独自で魔法を極め、後に魔法学校校長を務める

現在は宮廷魔導士の士団長をしながら後任の育成に努める

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