ゴブリンの巣
【第三部】エンペス村開拓とゴブリン
後書きもお楽しみ下さい
一日一話投稿していきます
カイル達は三十分ほど掛けて、ちょうど木々に囲まれた窪地を見付けた
カイルとボーズはテントを張り、周りにはウールで出来た紐に鳴子をぶら下げ、侵入者対策をする
夜はカイルとボーズで交代で見張りをすることにした
洞窟ではエリサの火魔法がなければならないため、最優先で回復に努めて貰う
「お腹減ったなぁ
さぁ夕食にしよう」
カイルは火打石で集めた枝に火を付ける
次にリュックから食料を取り出す
「ニシンの塩漬けは少し火で炙ると、皮がパリッと中はふわっとして美味しいんだよな
あとラビットの干し肉も炙ると柔らかくなって美味しい」
「まぁだいたいの食べ物は炙ると美味しくなっちゃうよね…」
「あとはパンとスープね
スープは私が小鍋を持って来たから、ホタテの干物にハーブとラビットの塩漬け肉を入れましょう
パンはそれに浸して食べても良いし、ニシンを乗せても良いしね」
細枝に刺したニシンは皮に焼き目が付いて、脂が少し滴ってくる
ラビットの塩漬け肉は、炙ったその場から口に放り込み小腹を満たす
鉄の小鍋は、太枝で組んだものにぶら下げ沸騰させる
この辺はローズ村でよく野営していたのでお手の物だ
そのまま三人は食事を開始する
お皿がないためスープは皆んなで回し飲む
カイルとボーズはパンをスープに浸して食べるいつものスタイル
エリサはパンの上にニシンの炙り焼きを乗せて食べ、各々食事を楽しんだ
「そういえば二人は夢とかあるのかしら?」
「おれは商人として普通に暮らせれば良いと思ってたんだけどな」
「カイルの商人ってのはエリサの思う商人とはだいぶ違うよ
こうやって魔物も倒したり何でもやるんだよね、ははは」
「そうだな、それが普通だと思ってるからなぁ
まぁそんな遠い未来のことは考えてないけど、とりあえずこの村の皆んなを普通に暮らせるように出来れば良いな」
「ボーズは?」
「僕はカイルに付いて行く
それでカイルも僕の周りの人も、皆んなが普通に暮らせたら良いかな」
「あなた達ってほんと欲ってものがないのね
でもそんな所が皆んなから信用されてるのかしらね」
「ああ、あとおれは魔法を使いこなしたい」
「きっと使いこなせるようになるわよ
毎日欠かさず鍛えてるの知ってるわ」
「エリサは?」
「私はね…
誰にも言わないでよ!
なれるかも分からないし!
宮廷魔導士になりたいの
一回だけ魔導士を見たことがあるんだけど、それはもう凄い魔法を使ってて、カッコよくて私もああなりたいって思ったんだ」
「僕はエリサならきっとなれると思うよ!
だってあんな魔法見た事ないもん!」
「そんな照れるじゃない
でもこの辺ではね、が付いちゃうんだけど…」
「手から火を出す以外出来るのか?」
「実はファイヤーボールとファイヤーウォールを練習してるのよね…
でも全然ダメ…
手から火を飛ばすことは出来たんたけど、威力を維持させるのが難しくてね
もっと火に魔力を凝縮させてから飛ばさないとすぐに霧散しちゃうの」
「おれ的には火を出せるだけでも凄いと思うけどな」
「僕もそう思うよ!」
「ありがとう
あなた達を見習って私も毎日精進することにするわ」
「さて、お腹はいっぱいになったし、早めに寝るとするか」
「二人とも見張りありがとうね」
「エリサは僕が護るよ!」
「おれは!?」
カイルとボーズは交代で見張りをし、特に何事もなく朝を迎える
(ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ)
「おはよう
二人とも起こしてしまったか?」
「朝から素振りなんて流石ね」
「何となくやらないと落ち着かなくてね」
「朝食はどうする?」
「洞窟から出て行くゴブリンの数を見たいのと片付けもあるし、ラビットの塩漬け肉とパンで済まそうか」
三人は朝食を手早く済ませ、テントや鳴子の回収をする
その後三十分を掛け洞窟の前に戻って来る
「一ニ三四……十……二十…五十…八十…くらいか」
「やっぱり結構居たね」
「よし、あいつらが帰って来る前に洞窟内を調査しよう」
「エリサ今日も頼む」
「任せといて!」
エリサの明かりを手掛かりに、昨日より足早に進む
中にゴブリンの姿はなく、昨日の階段らしき道まで来る
「ゴブリンが出て行った数を考えれば、おそらくこの先にまたゴブリンが居るのは考え難い、もしかしたらゴブリンキングが居るかもしれないが、確認したらすぐに引き返そう」
「分かった」
「分かったわ」
ゆっくりと階段らしきものを降りる三人
途中上から水滴のようなものが垂れて来ており、地面より低くなっていることが分かる
しばらく進むと行き止まりに当たり、右は上へ続く階段らしきものがあり、左は大きな空間があるのか太陽の光が差し込んで来ているようであった
「カイルどっちに行く?」
「うーん
これはおれのミスだったかもしれない
この洞窟の入り口は一つと決め込んでしまっていた
もしかしたら右の道は違う出口と繋がっていて、また小部屋があってゴブリンがわんさか居る可能性が出て来た
そうなると百どころじゃなくて二百くらいのゴブリンが居るかもしれない」
「それは囲まれたらひとたまりもないね…」
「ああ、そしてこんだけ大きい群れだと…
あ、いや取り越し苦労なことを祈るか…
とりあえず左の空間を調べてみるか
エリサ、明かりはもういい」
カイルが左の空間に顔を出すと、中はかなり広い空間で吹き抜けのようになって、天井には大きな穴が開いていて、太陽の光が差し込んでいる
そしてよく隅々まで見渡してみると、小さい穴倉が二つあり、その中には藁が敷き詰められていて、巨大な魔物が居た事を連想させる
「まいったなこれは
嫌な予想が当たってしまったようだ」
「カ、カイル!なぁ、その嫌な予想って…」
「ボーズ、どうしたそんな焦った声を出して…」
カイルがボーズ達が居る後ろを振り向くと、そこには大きな魔物が立って居た
「ボーズ、エリサ!
中へ入れ!
大きなキバが二本生えている!
そいつはおそらくゴブリンキングだ!」
「これがゴブリンキングか!
しかもカイル、その後ろにゴブリンがわんさかくっ付いて来てるよ!」
「ちっ
マズいな
これはおれ達誘い込まれたかもしれない」
空間に入り、すぐに戦闘態勢を取る三人
「ボーズ、あのゴブリンキングを相手して時間を稼いでくれ
その間におれがゴブリンをやる
エリサ、悪いが戦って貰わないと切り抜けられそうにない、おれが取りこぼしたゴブリンを火魔法で倒して欲しい」
「分かった、ゴブリンキングは僕に任せてくれ
力比べなら自信がある
倒して見せるさ」
「私は…もうやるしかないわね!」
ボーズが短剣を手に持って、ゴブリンキングに向かって走って行く
ゴブリンキングは右手を上に振り上げて、ボーズに向かって拳を振り下ろす
ボーズはすんでのところで避けて、短剣をゴブリンキングの左胸に突き刺す
(ぐぉぉぉぉぉおおお)
ゴブリンキングが声を上げる
短剣はゴブリンキングの左胸に突き刺さったままだ
「マズい、短剣だとあの筋肉を貫けない」
ゴブリンキングが息を荒げながら、ボーズに拳を何度も振り下ろして来る
ボーズは防戦一方になる
「ボーズ、良い仕事だ」
カイルはボーズの戦いを横目に、ゴブリンの群れに突っ込む
ゴブリンが慌ててカイルへ石を投げ付けるが、カイルは簡単に横に避ける
そのままの勢いで群れの中に入ったカイルは、ゴブリンの頭や首を短剣で斬りつけていく
(グフッ
ゴフゥッッ
ギャァァ)
カイルが十数匹を倒して、一旦群れから距離を取る
しかし続々と空間にゴブリンが押し寄せ、石を投げそれを避けるカイル
「くそっ
大した攻撃じゃないが数が多いだけ厄介だな」
カイルは再び群れに突っ込み、ゴブリンの急所を突いて倒していく
押し寄せるゴブリンとそれを倒していくカイル
しかし順調に倒すのはここまでだった
「グォォォォ
ナカマモロトモヤレ
イシヲナゲロ」
空間にもう一匹ゴブリンキングが現れた
「ああーなんてことっ!!
カイル!ボーズ!
もう一匹ゴブリンキングが現れたわ!」
もう一匹のゴブリンキングの指示により、仲間とカイルに向かって石を投げて攻撃するゴブリン達
カイルはゴブリンを倒しつつも石を避けるが、数発体に当たり、カイルの動きが鈍くなる
「エリサ、すまない
投石があって急所を狙っている暇がない
どこかしらに一撃を与えるからトドメは任せる!」
「分かったわ!」
【魔物紹介】
ゴブリンキング ゴブリンの王
特徴:体長二〜三メートルで筋肉隆々、下顎の犬歯が発達し牙のようになっている
人の言葉を理解出来、知能は高い
配下にはゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンファイター、ゴブリンメイジがいる
単体であれば冒険者Cランクパーティーで討伐可能なレベル