森林探索
【第三部】エンペス村開拓とゴブリン
後書きもお楽しみ下さい
一日一話投稿していきます
それからカイルは商業ギルドに行って、今後の構想について説明をした
「おう、カイルじゃねえか」
「パージさんお久しぶりです!
実は今後の村について相談がありまして…」
カイルの構想をパージに説明する
「船を増やすかぁ
よし、うちも塩の生産と魚介類の漁獲を増やす
船の漕ぎ手は伝手を辿ってみる
とりあえずカイルは村の守りを頼む」
「はい、その辺はパージさんにお任せします
あと村の運営で色々思うところがあるので、今度相談に乗って下さいね」
「分かった、カイルが言うならみんな信用してくれるだろう」
「えらい信頼して貰ってるんですね…
急に逃げ出しちゃうかもしれませんよ?」
「はっはっは、俺は見る目はあるんだ、大丈夫だ信頼出来る
それとあとやりたかったことがあるんだが…
何せ大金が掛かってな、伯爵様から貰った補償金は村民のために使ってしまって、あんまり残ってなくてよ…」
「お金のことなら何とかします
パージさんは心配せずにやりたかったことをやって下さい」
「ありがとうよ、何とか結果を出してみる楽しみにしてくれ」
カイルは商業ギルドを後にする
するとエルが屋敷の前で待っていた
「忙しいところすまん、そういや兵士達から要望があってな、相談したい」
「なんでしょうか?」
「まず兵士の軍服だか、一年に一回で良いから一人一着支給して欲しい
素材は森林にビッグシーパーがいるだろうから、皮を取ってきて欲しい」
「分かりました、ビッグシーパーを見つけたら優先的に倒しましょう」
「あとそれから武器関係は元私兵達が残していったもんがあるから良いんだけどな
木を切り倒す斧が不足している」
「ああー鉄は輸入しないといけないですから、うちにある火炉は、基本的に素材は元ある物を溶かして造り直してますからね
そうなると……
見張り役の剣だけ残して他の武器は溶かしちゃいましょう」
「良いのか?
カイル達はどうやって敵と戦うんだ?」
「それは斧を武器として併用します
剣だと折れたりしますし、最近の大きな町の兵士は鎖かたびらやフルプレートを着ているらしいので、打撃と斬撃の両方が出来る斧は有効なはずです」
「なるほど、それなら余ってた剣は集めておくから造り直してくれ」
エルの指示によって武器が集められ、その武器を火炉へ持っていく
火炉は領主管理の下で運営している
炉内の温度を上げるのには大量の木炭が必要であり、また独占的な商売のため、安定した価格で製造出来るよう領主が管理をしている
(トンカンットンカンットンカンッ)
工房内に鉄を鍛える音がリズム良く鳴り響く
武具職人が全身汗を流しながら鉄を鍛えている
炉内で鉄の塊を真っ赤に熱したあとに、ハンマーで叩いて整形していく
その後に何度か水で冷やして硬くする
これをずっと繰り返す
そうして出来た斧が、職人達によって一本また一本と並べていく
それから三日後
「斧が出来たようだ
斧の柄も持ち易いように削ってあって、うちの職人達は本当に良い仕事をするな
早速森林に行く準備をしよう」
「カイル!見てくれ!
僕だけの特注の戦斧を造って貰ったんだ!へへへ」
ボーズ専用の戦斧はボーズの身長くらいあり、その戦斧をボーズが軽々振り回す
「ボーズ、それで俺をちゃんと守ってくれ!」
「ははは、逆に足を引っ張らないように頑張るよ」
「あと…
お金はちゃんと払っておけよ」
森林開拓班はカイルとボーズ、それからエルが選んだ十人の精鋭達
一同斧を担ぎ、ブルーフロッグの革で出来たリュックに、各々食料や薬草を詰め込んだ
「よし、じゃあ今日から森林に行ってきます
エルさん、防衛は頼みました」
「ああ、任せてくれ
何か異変があれば薪を炊いて狼煙をあげる」
「分かりました
では、出発!」
この森林名前はない、かなり広域に広がっており、エンペス村の領地はほんの一部だ
稀に森林から畑を荒らしに来る魔物もいるが、基本的に人里近くには魔物はあまり居ない
奥の方に行けば強い魔物もいるし、ダンジョンもあるらしい
魔物が増え過ぎないよう、伯爵様が雇った冒険者ギルドの精鋭達によって、定期的に魔物を間引いていると聞いている
森林までは歩いて十分程で着き、少し奥まったところまで進む
木々は鬱蒼としており、樹齢行く年もの木がそこいら中に存在している
手入れがされていないためか、大きく育った木の葉っぱ達が日光を遮り、中には枯れてしまった木もある
そんな状況を確認しながら進み、カイル達は少しだけ開けた場所を見つけた
「よし、この辺をベース基地として
まずは周辺に魔物が居ないか索敵をしよう」
皆がリュックを下ろし、その見張りに二人付く
「残りはお互いが確認出来る距離に並んで進もう
魔物が居たら戦わずにおれに報告してくれ」
カイル達は索敵を開始
するとすぐにラビット数匹とトットリー数匹を発見する
ラビットは食用として有用だし臆病だ
人間を見付けたらすぐ逃げてしまう
トットリーの特徴は、大きく生やしたトサカが特徴で他に飛ぶことはない両羽と尾があり、足は四本爪で畑をたまに荒らしに来る
突進とひっかき攻撃はしてくるものの、先に見付けてしまえば簡単に討伐可能ななんて事ない魔物だ
しかも食用としても人気がある
「おれとボーズでトットリーをやる
他四人はラビットを、残りは周辺を警戒しててくれ」
全員が配置に付く
まず動いたのはカイル達
一匹目はカイルがトットリーの背後から斧を振りかぶって一撃
二匹目はボーズが背後から戦斧で横殴りにして吹き飛ばす
残りの二匹がカイル達に気付くが、もう遅い
目の前にカイル達が迫っており片付けられる
「よし、トットリーはやったぞ」
次にラビットの群れに兵士達が突っ込むが、ラビットは兵士達の物音に気付き、両手両足で地面を必死に蹴って逃げ始める
兵士達は斧を振りかざすが、斧の扱いに慣れていないのか、掠りもせずに逃げられてしまった
「す、すみません!!」
「取り逃してしまったか
まぁ大丈夫
斧に慣れてないだろうし、トットリーは倒せたからね」
「うん、そんな気にしないで良いよ
ラビットは人を襲うことはないからさ」
カイル達は素早く血抜きをして、トットリーを丸裸にしていく
すぐに村に持ち帰るなら血抜きは後でも良い
でも今回は村に帰るまでに時間が空くため、血抜きの必要がある
「よし、この辺に強そうな魔物はいないので索敵はおれ達に任せて、皆んなは木の伐採を始めてくれ」
【魔物紹介】
ビッグシーパー 羊の魔物、食用
特徴:体長一メートルほどで目が異様に大きい、単体では弱いが集団での突撃攻撃は要注意
毛皮はウールで国内では安価でポピュラーな素材
トットリー 鳥の魔物、食用
特徴:体長三十センチほどで鶏冠は紫色で体毛は黄色、嘴と爪を使った攻撃をしてくる
食用としてはラビットと人気を二分する
たまに畑を荒らしに来る厄介者