21話 後日談
「結菜さ~ん♪」
良子は同僚に声をかける。
手にしていたちっさな紙袋には、高級ホテルの宿泊チケットが入っていた。
「えっ…!?!?確かに行きたいって騒いでましたけど…どうして舞内さんがこんなものを?」
「親戚がくれたんですけど、どうも親戚の親戚が使うとインサイダー宿泊になるらしくって…」
「????…?どういう事ですか?」
「レビューサイトに星5でべた褒めレビュー書いてほしいって事です!」
自分でも苦しい言い訳だと思うが、これぐらいしかギフトを渡す理由を思いつけなかったのだ。
――――――――――
貴金属買取ショップに来ていた良子は、初めての空間にソワソワしていた。
目の前では店員が量りのような機械にネックレスを乗せている。
レンズがついた専用の道具でまじまじと宝石を観察する姿を見て、ゴクッと息を飲む。
「(売ってもいい?ってちゃんと王子たちに許可取ったし、大丈夫…!)」
今までに貰ったネックレスの中で、一番小さいものを買取ショップに持ってきたのだ。
「お待たせいたしました。お預かりさせていただいた装飾品の買取価格ですが…」
「はい…」
店員が申し訳なさそうに眉を下げる。
「中央についている透明な宝石。これは水晶ですので、残念ながら価格をお付けすることはできません」
「はい…(ダイヤモンドかと勝手に思って期待してたのに!!!!恥ずかしい!!!!ウウッ!!!)」
「ですがこの金のチェーン部分、純金かと思われますので」
「はい…(来い来い来い来い来い来い来い!!!!!!!!!!!!!)」
「買取価格は10万円でいかがでしょう?」
「はい…(10万!?!?!?来た~~~~~~~~~~!!!!!よっしゃーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!)」
「買取に同意していただけましたら、この書類にご署名ください」
「はい…(よっしゃーーーーーーーーーーーーああああーー!!!!!!!!!!!!!!ぁつっっあああああ!!!!)」
「本日はありがとうございました。またのご利用お待ちしております」
「はい…(ああああマジでありがとうあああーーーーーーーーーーー!!!!っしゃーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!)」
店を出た良子はふにゃっと変な笑顔になった。
マスクをしていてよかったと思いながら、10万円の入った財布を気にしつつコソコソ家に帰る。
アドレナリンが脳から出まくって、部屋に敷いてあるラグの上で前転を決めてしまったのは秘密だ。
興奮が収まると、今回の真のヒーローへのお礼に使わなくては、と気付いた。
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というわけで、冒頭へ戻る。
「ガチの高級ホテルだし…部屋のグレードは普通だけど2泊3日だし…食事、マッサージ、スパ付きの、至れり尽くせりのプランだし…!閑散期とはいえ、2割3割引きでも10万はしますよね????」
「う、うん(ピッタリ当ててくるなコイツ…)。オフシーズンだから逆に、サクラレビュー頼むのにピッタリじゃないですか?ほら、富裕層ってけっこうシビアなレビューと星付けるし…!だから頼まれて貰えると助かります!写真もいっぱい撮ってアップしてほしいらしくて…そして、もちろんサクラだって話は内密に…」
もうひとつの紙袋を渡した。
以前から彼女が欲しい欲しいと呟いていたデパコスが詰められている。
ホテルの宿泊チケットがネコ王国からの感謝なら、こちらは良子の稼ぎで買った感謝のギフトだ。
「ふっ…ふふふ…!任務を必ず遂行することをここに誓います…」
同僚は暗黒の微笑みで勝手に誓いを立て、紙袋を受け取った。
後日。
彼女のインスタグラムのアカウントは賑やかになり、興奮冷めやらぬ感じの長文星5レビューがレビューサイトを飾っていた。




