20話 これからもよろしくね
聖女は胸に手を置き、祈る。
「(この薬草植物園に生えているのは、美味しい料理の”原材料”。キャベツや玉ねぎ、ハーブみたいに口に入れるられ植物…)」
自分の中で食べ物だと納得できたようだ。
聖女のパワーが空間に満ちていく。
「(植物の中にある、病気に抵抗する力が何倍にも増えますように…)」
薬草がほわっと光り、温かで柔らかい色で薬草植物園が明るくなった。
その場に居合わせた医者たちが驚いてざわめく。
ラウルが”しーっ!”と口に人差し指を当てたジェスチャーをとった。
樹木に囲まれた静かな空間で、じっと祈り続ける。
「(レオ王子の体を蝕む原因を退治して…!王子だけじゃなく、国民全員の助けになる薬に育って…)」
――――――――――
それから数週間。
聖女は薬草を混ぜられそうなレシピを探してきてはコックたちと共に料理作りに励んだ。
そしてレオ王子と一緒に試食し、彼が食べやすいようにレシピを見直していく。
出会った時はベッドだったが、少しずつ立って歩く時間が長くなっていった。
侍医は聖女の方を向き、両目をギュッとつぶって感謝の言葉を述べる。
「聖女様の祈りの力で薬草の効果は何倍にも強まり、こうしてレオ王子のお体も回復しています。本当にありがとうございました。あなたがこの国に来ていなければ…」
侍医は涙を拭った。
聖女は首を横に振る。
「…しっかり薬草園を管理して、レオ王子に必要な薬草を適切に選べるお医者さんのみなさん、回復ポーションを作れる魔法使いのみなさんの方が、ずっと凄いですよ!その中でも昔からレオ王子を見ていてくださった先生。あなたが一番苦労してくださっていたことは、誰もが知ってるんですから」
良子はそう言って侍医をハグした。
レオ王子の侍医も、ぎゅっとハグを返してくれる。
日に日にレオは回復していき、ついに庭に出て散歩できるまでになった。
聖女、ラウル、ルドガーたちが見守る中、ゆっくりと歩いて新鮮な空気を吸う。
「すごく気分がいいし、めまいやふらつきもなくなりました。聖女様、なんと感謝を申し上げたらよいか…」
レオは良子に微笑んだ。
「レオ王子が元気になって本当に良かったです。王子が召し上がっている食事を市民にも広めれば、王子と同じように病気で苦しんでいるネコたちのためにもなりますし」
レオはうんうんと希望に満ちた目を輝かせた。
会話を楽しみながら歩く余裕もあるようだ。
これなら遠くない未来に病気も完治するだろうなと思い、良子はホッとする。
わーっと声が聞こえてきた。
「王子!」
「レオ王子!」
レオが療養している離れから久々に出たと聞きつけ、使用人や兵士が集まってきたのだ。
城中のネコが集まったような騒ぎになる。
「ええっと、城の警備はどうなってるんですか?」
聖女の疑問なんかそっちのけで、みなレオ王子によかったですね!お元気な姿を拝見できて本当に嬉しいです!と声をかけワイワイ騒いでいる。
遠くから白と黒のハチワレ猫が駆けてきた。
良子が手を振る。
「あーっ!リッチ王子!ご無沙汰しております!」
いつもはクールなリッチも嬉しそうに手を振り返した。
「聖女!オレの自室謹慎が解ける日に、やってくれたな!」
第二王子のリッチは嬉しそうにレオに駆け寄り、会話をする。
「はぁ…本当に良かった!」
ルドガーはうれし泣きで震えている。
「こらーっ!警備の兵士まで持ち場を離れるな~!」
ラウルの声がして、警備のネコたちは慌てて持ち場へ走っていく。
みんなに囲まれ、少し困惑しているレオを見て聖女は笑った。
「んま~!こんなに元気そうなあの子を見たのはいつぶり!?」
「(あれっ?いつも庭をいじっているネコ?)」
庭で見かけることが多いので良子は勝手に庭師だと思っていたネコがルドガーに声をかけた。
「は、はっ、母上~!レオが元気になって…えーん!!!良かったぁ~!!!」
「母上!?!?」
思わず横入りしてしまった。
「ああ聖女様!最近は聖女様が作ってくださった薬草入りクッキーを食べて、おなかの調子を整えているんですよ~!ベッドから離れられなかったレオを、こんなに良くしてくださるなんて…」
「ルドガー王子のお母さま…ってことは、王妃様…なんでしょうか?」
「そうですよ~!6人いる王妃のひとりです。いっつもウチのルドガーがお世話になってて…」
ちょっぴりふくよかな茶トラは、外見も、軽快な喋り方もルドガーによく似ている。
「お、王妃様?庭でスコップをかつがれているのをお見かけしたのでてっきり…使用人かと」
「ウフフ、庭いじりが好きなので。他の王妃も働いていたり、たまに実家に帰って仕事をしていたりですよ」
「じ、自由!!!!」
ハッと聖女は気づいた。
「レオ王子のお母さまを呼びしないと!」
ルドガーと、母親の王妃の顔から笑顔が消えた。
「今日、ここにレオの母親の魂も来ている気がします。彼女は今でも王妃のひとりに違いありませんが、レオが5歳の時に亡くなってしまったので」
「えっ…」
ルドガーが頭をかいてあやまる。
「不吉な感じがして口に出さなかったんだ。ごめんね。レオの母上は…もうこの世にはいなくて」
良子は慌てて頭を振った。
「いえ、こちらこそ申し訳ありません。ご親族に関して私は何も知らず…」
王妃も頭を振った。
「いいのいいの!私たちこそ挨拶もせず、息子にすべて任せきりで…あまり王族の人間関係についてアレコレお教えするのも、聖女様には重荷になるかと思って黙っていたんです。急に違う世界に呼び出されて、ずらっと私たちが雁首揃えて自己紹介したら、断るモノも断れなくなるでしょう?」
想像して思わず吹き出してしまった。
「た、確かに…もう絶対逃げられない感じがすごいです」
「それに、王室のためにあなたの力を借りるわけじゃなく、国民のために力をお借りしたいと思って召喚しているんだから!」
ルドガーが笑顔を取り戻した。
「実際、リョウコが強化してくださった薬草植物園の薬草を、これから国民にも配分していこうっていう計画があるんだ。美味しいレシピと一緒にね!いつもありがとう。そしてこれからも…よろしくね!」
聖女は深くうなずいた。
自分の力で誰かを助けられたことが嬉しくて、これからも頑張ろうという力が湧いてくる。
みんなに取り囲まれているレオ王子を見ると、目が合った。
わずかな時間見つめ合い、幸せを感じる。
2章もちゃんと終わらせられたのすごくな~い?!
すごい!!!!ナイスファイト!GG!
というわけで箱庭世界で悪役令嬢がスローライフ?!を再開するから来てね~(笑顔のemoji・手を振るemoji)




