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19話 美味しい薬膳食

「聖女様が残してくださったレシピ、ですか…?」

侍医たちとコックたちは、聖女の書いたメモを読んだ。

小麦粥こむぎがゆ、へえ!」

「加熱しても薬用効果が失われない種類の薬草を使ってください…か」

「とにかく作ってみましょう!」


キッチンへ移動し、調理が始まる。

「材料はシンプルだな。オーツ麦、じゃがいも、しょうが、肉、塩、砂糖、そして薬草」

ちなみにこの世界の肉は畑で採れる。

大豆の比喩ではなく本当に畑で収穫されるのだ。

そのため、豚肉、牛肉、鶏肉などの肉の種類はない。

「材料をすり潰して茹でるだけ、これなら我々でも作れそうだ!」

そして調理すること約1時間。

麦の粒が残りながらも、トロトロのおかゆが出来上がった。

みんなで味見する。

「…薬草が入っていても、そこまで苦くない!」

「塩と砂糖で味を付けたから美味しいね」

「肉の油分が溶けて、旨味が凄い!」

大好評ですぐに鍋は空になってしまった。

レオの侍医が驚きながら薬草の量を測る。

「この小麦粥1皿で、レオ王子が1日に食べられていた薬草の5分の1を食べることが出来ます」

「では毎食召し上がっていただけると考えた場合…朝昼夕の3皿で、5分の3の薬草を食べられるわけですか!」

おおっ、と声が上がった。

「食事に混ぜ込めるなら、薬草をそのまま食べる量を大幅に減らすことが出来る」

「レオ王子の薬草食の負担が減りますね!」

「さっそく味見していただいて、レオ王子のお好みの味にレシピを調整しましょう!そうすれば明日の朝食から小麦粥を召し上がっていただけます」


「あっ…」

コックが鍋を覗いた。

「味見していただく分の小麦粥も食べてしまったので、もう1時間お待ちください…」


――――――――――


良子は日本に戻ってきた。

2時間分の睡眠時間が失われている?というのに、逆に元気いっぱいだ。

手には相変わらず、大きな宝石がついたジュエリーが握りしめられている。

「私には分不相応だから必要ないって言ってるのに~!」

とはいえ好意を無下にはできないので、持って帰って来る日々が続いていた。

さらにあちらの世界では金などの金属は特別希少ではなく、宝石も鉱山のような場所でザクザク掘れると聞いて多少罪悪感は薄れた。

引き出しを開けると、じゃらっ、という音と共に大量の貴金属が目に入る。


「…ちょっと売っちゃおうかな?」


――――――――――


翌日。

ネコ王国のコックは自分たちで作った小麦粥を聖女とラウル王子に披露していた。

「お味はどうですか?」

「…とっても美味しいです!」

「うむ、私は病気ではないが…それでも毎日食べたいぐらいだ!うまいぞ!!」

ラウル王子は小麦粥が気に入ったらしく、おかわりをしている。

「あのざっっっくりしたレシピでここまで美味しい小麦粥を作っていただけて嬉しいです。それでレオ王子のご様子は…?」

「喜んでお召し上がりになられていましたよ」

アレクサンドラが、手紙を受け取っております、と聖女に封筒を渡した。

中には感謝の言葉が書かれている。

「…!」

それを読んだ良子の顔はパァッと明るくなった。

「今日はグリーンスムージーを作ってみようと思うんです。キッチンをお借りしますね!」


――――――――――


あらかじめメモしてきたレシピを参考に、様々なスムージーを作る。

ミキサーが無いので食材をすり鉢ですり潰し、冷凍庫 (冷やす加減が難しいのか、冷蔵庫ではなく冷凍庫しかない)で冷やすと完成だ。

ネコたちは緑色のドリンクをペロペロ舐め、美味しい事がわかるとノドを鳴らしながらゴクゴクと飲んだ。

「聖女様、これなら生のままの薬草を苦痛なく食べていただくことが出来ます」

「それは良かったです。昨日見学させていただいたとき、真っ黒なお茶…いえ、あれは絞り汁ですよね?それをちょっとずつ、辛そうに飲んでいるレオ王子を見て思いついたんです」

コックがうなずく。

「レモンの酸味、フルーツの甘さが薬草の苦み、えぐ味を消すなんて!」

聖女は照れ笑いした。

「でも、薬草によっては体にいい成分が酸などにより打ち消されたり、逆に増幅されたりすることもあるらしいんです。経過を見ながら毎日1杯ずつ飲むことをおススメします」

侍医とコック、それに使用人達も、これならレオ王子の負担が減りますねと口々に褒めた。


「…本当に、先人の知恵に感謝です」

茹でたり焼いたりした食材をただ口に入れるだけでも、十分栄養を取ることはできる。

しかし組み合わせて調理するというプロセスを経れば、栄養、そして薬効を十分残したまま美味しく楽しく体内に取り入れることができる。

良子は大量の薬を飲んで青ざめた顔をしているレオ王子を思い出した。

「(早く治ってほしい。でも、無理はしてほしくない。この2つの問題を聖女パワーで一度に解決できたら…!)」


コック猫の手を取り、目線を合わせ、よろしくお願いしますと頼んで回った。

そして作ったグリーンスムージーの最後の一口を飲む。

「自分で作っておいてこんな事言うのはアレですが…とっても美味しいです。これなら薬や薬草じゃなくて…食べ物だと思えます」

コップを舐めていたラウル王子がピタッと止まった。

「小麦粥と、グリーンスムージーの”材料”がある場所へ、再び連れて行っていただけませんか?」


城の真ん中にある薬草園で、彼女は祈った。

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