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16話 ヒントを探して

ネコ王国。

「ああ~!おはようございますっ!量子テレポーテーションも楽じゃないんですよ~!」

キョトンとした顔で第三王子のルドガーが聖女を眺める。

「いえ本当は楽です。ねむるだけなので…」

「だ、大丈夫…?」

「体が一瞬でバラバラにされて再構築されているだけなので、正気度以外は問題ありません…」

「何があったの…????」


――――――――――


「回復ポーションについて詳しく知りたい?」

ルドガーはアレクサンドラに先触れを頼んで走らせた。

「城内で作っているんですか?」

「うん、王族や兵士が使う分はね。お医者さんも魔法使いもいっぱいいて、全員まとめて医療部隊の部屋に居るんだよ。ボクたち王子にはそれぞれ侍医がいるし、兵士や使用人を診る仕事をしている医者もいるんだ~」

「ああっ、それって有事の…戦争やモンスター討伐の際に駆り出されるお医者さんの部隊、って事ですよね?」

「そう!だから父上が国境沿いをぐるぐる回ってるんだけど、侍医も一緒に馬車で付いて移動してるんだ。先代国王の時代から仕えてるおじいちゃん先生なんだけど、もう長いこと見てないなぁ…元気にしてるかなぁ…」

逆に心配される医師の愛され度合いに思わず聖女は笑う。

ルドガーの従者と合わせて3人で廊下を歩き、医局に着いた。

扉はなく、広く開け放たれており誰でも自由に出入りできる雰囲気だ。


「聖女様!ルドガー王子!お待ちしておりました。回復ポーション作りを見せてもらえるようですよ」

アレクサンドラが先に話を付けておいてくれたおかげで、スムーズに見学ができた。

「この瓶には水が入っています。飲んでみてください」

魔法使いを名乗るネコが、水の入ったポーション容器を聖女に渡す。

一口飲んで、何の変哲もないだと水だとうなずく。

「今からこの水に、治癒魔法を封じ込めていきます」

「魔法を封じ込める?」

「はい。どんなものにでもある程度なら魔法は封じ込められますが、水は媒質として優れているんですよ」

「水が魔力を体内に伝播してくれるんですね」

ふむふむと見ている目の前で、水入りビンがじわじわ光り出す。

「今、治癒魔法を封じ込めています」

おお~っ、とみんなが見つめる中、どんどん魔法が水に閉じ込められていく。

ルドガーも感心しているのか前のめりになって観察している。


「…ふぅっ!完成しました。聖女様は回復ポーションを飲まれたことがございますか?ぜひ味見してみてください」

「いいんですか?貴重なものを頂くのは申し訳なくて…それに私は元気いっぱいですし」

魔法使いネコが瓶を持ち、聖女にどうぞどうぞとポーションを薦める。

「実は、最近お城の食事が美味しくて美味しくて…!私たちに料理の知識をもたらしてくださった聖女様に、感謝の気持ちを伝えたいと思っていたんです」

魔法使いは満面の笑みで良子におじぎした。

「…こちらこそ、ありがとうございます」

良子はそう言って瓶を受け取った。

ごくりと飲む。

「!」

体の底から元気が湧いてきて、思わず胸いっぱいに深呼吸する。

「…すごい!これが回復ポーションの効力!!」

「へぇ!ボクにもちょうだい!!」

「わ、私が口を付けたものなので…」

「いいからいいから!」

ルドガーはゴクゴクと回復ポーションを飲み干してしまった。

「!!」

ルドガーの目がカッ!と見開かれた。

あまりにも驚いたときのネコの顔すぎて笑ってしまう。

「フフッ…フッ…なんというか、自分でも気付かないような疲労があったんだなぁ~って感じですよね?」

「うん、肩が軽いよ!」

子供のように腕をぐるんぐるん回すルドガーをよそに、魔法使いは気まずそうにうつむいた。

「ですが、レオ王子にはあまり効果が無いのです」

良子は力いっぱい首を振る。

「いいえ!あなた達の作る回復ポーションのおかげで、今までレオ王子は症状を悪化させすぎる事無く過ごせたのかもしれません。だって健康な私やルドガー王子でさえ、こんなに効果を感じられる回復ポーションなんですから」

「そうだよ!ここにいる魔法使いの作る回復ポーションの効力は本物だ!レオだって回復ポーションを飲んだり、治癒魔法をかけてもらった後は、体を起こして日光浴してるし」

「自信を持ってこれからも回復ポーションによる治療を続けてください」

聖女とルドガーの言葉に、魔法使い達は頭を下げた。

「…ありがとうございます」


「(…それにしても、治癒魔法って凄いんだな。ああ、私のパワーが癒しの力だったら…)」

ウサギ帝国での思考が再び顔を出す。

「(食べ物を強化することしかできない聖女なんて、本当に聖女なのかなぁ…?癒しとか、回復とか、治療とかの能力だったら良かったのに…能力不足の聖女なんて気まずすぎるよ…)」


「あー、ちょっとよろしいですか?」

白衣を着たネコが声をかけてきた。

アレクサンドラが間に入る。

「聖女様。こちらレオ王子の侍医にございます」

「初めまして聖女様」

「はじめまして、先生」

「この度はレオ王子の体調不良を気にかけてくださっているとの事で…。私は自分の無能さが本当に情けないです」

「そんなふうに言わないでください!」

「レオ王子の病気は私だけでなく、城の医者全員、さらには街で働く医者、そして国外の名医まで呼び寄せて診察しているのです。しかし…一向に良くなる気配はなく…」

「なるほど…」

「ですが、別の世界からおいでになっている聖女様なら、より良い治療法を知っていますでしょう?。どうぞお知恵をお貸しください」

「い、いや、どうですかね… … …力にはなりたいのですが…」

治癒魔法の素晴らしさを目にした後では、自分の能力がちっぽけに思えてくる。

「(魔法が使えない私じゃ、この世界で出来る事なんてないかも…)」


「聖女様はこの世界に居られる時間に制限があるとお聞きしました。矢継ぎ早で申し訳ないのですが、もしよろしければ薬草食作りも見学されていきませんか?」

「あっ、ここで薬草も作っているんですね。ぜひ見学させてください。時間の限り勉強させていただきたいので」

とは言え実際のところ、薬草には興味がなかった。

「(薬草かぁ…民間療法っていうか、気休めだよね。少なくとも現代日本では、薬が無かった時代の代用品の位置づけだし。そういえば近所のおばあちゃんがアロエは火傷に効くとか意味不明なこと言ってたなぁ…薬草ってああいう”おまじない”のイメージしかないけど…)」


「あのー、薬草って”毒が消えたりする”効果があるんですよね?」

「はい。毒消しは薬草の得意分野でございます」

「失礼ですが、レオ王子は離れで静養していらっしゃいますから変なものを口にすることはないでしょうし、警備がしっかりしているので誰かに毒を盛られる心配もないと思うんです」

レオの主治医は目を上の筋肉をハの字にした。

「…体の内側から作られる毒もありますので」

「えっ!?体の中で毒を?」


良子の頭の中で、フグとネコが合体した謎生物がニャーン!と鳴いた。

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