14話 正攻法とは
良子は腹をくくった。
食いしんぼパワーで解決できないのなら、正攻法を試すまで。
「私がついた嘘でみなさんを混乱させたことは間違いないんです。だから…挽回のチャンスが欲しくて」
ラウルは静かに頷いた。
「わかった。気持ちは本当にありがたい。しかし聖女、君に医学の知識はあるのか?」
レオの主治医に会って、どんな治療をしているのか聞きたいと頼んだのだ。
「いいえ。ですから紙にレポートのように、今までの症状と、試してきた治療法をまとめてもらいたいんです。紙なら簡単に持ち帰られるので、私が暮らしている世界の医者にそのレポートを見せてみようと思って。そうすれば解決の糸口が見つかるかもしれません」
「!」
ラウルはヒゲを撫でた。
「そういう手があったか!なるほどな…」
「(これは言えないけど、ペットを診る獣医師さんにも話を聞いてみなくちゃ…)」
「アレクサンドラ、今の話を聞いていたか?」
「もちろんでございます。直ちに」
「頼んだぞ」
アレクサンドラは小走りで部屋から出て行った。
聖女とラウルはお湯を飲む。
「いや聖女、やはり君は賢いな。第四王子であるレオは10歳の頃に体調が悪化し、今では一日中ベッドの上なのだ」
「レオ王子も辛いでしょうが、兄弟であるラウル王子もお辛いでしょう」
「うむ…病気のせいでぐったりしているレオを見るのは悲しい。ただ最近は仕事にかまけて、ほとんど会いにいっていないかったな。反省すべきだ」
ずずっ、ともう一口お湯を飲む。
「(猫舌じゃないの、いつ見ても面白いなぁ…)」
「反省すべきといえば、聖女のおかげで自分を顧みることが出来た。礼を言わなくてはな」
良子はアハハ、何のことでしょう、としらばっくれた。
「一昨日、国を統治する者は大局的な判断を下さなければならない、そう言ってくれただろう」
ラウルのウインクに良子はぎこちないウインクを返す。
「生意気でしたよね…」
「いいや。耳障りのいい言葉ばかり話す部下を傍に置き、それが原因で乱れてしまった国をいくつも知っている。進言を聞き入れられないようなネコに王の資格はないからな」
先程とは逆の目からウインクが飛んだ。
「ネコ王国の戦力をきちんと数字で見てみたのだ。我が国が戦って勝てる相手は…世界に無い。吹けば飛ぶような小国だという事実を受け入れ、その前提で国家を動かしていかなくてはな」
良子は真面目な顔になった。
ラウルは頭を掻く。
「私は父上に似ようと意識し過ぎたのかもしれない」
聖女は笑顔で言葉を返した。
「誰よりネコ王国を愛し、誇りを持っているのはラウル王子の良い所だと思います。良い所は良い所で残しつつ、今のあなたのように真に国民の幸せを考えられる王を目指すなら、歴史に残る名君になれますよ!」
ボッ!と音がして、ラウルの顔が真っ赤になった。
「れっ、歴史に残る名君っ…!!!!」
「…照れるポイントなんですね?」
――――――――――
喋っていると、あっという間に時間が過ぎていく。
もうすぐ2時間…というところで、アレクサンドラが封筒を手に戻ってきた。
「お待たせいたしました!中身をご確認ください!」
「ありがとうアレクサンドラ!まさかこの2時間でまとめてくれるなんて!」
「うむ。よい仕事だ。あとで医者にも褒美を渡そう」
ラウルと聖女は封筒の中の紙を一緒に読んだ。
レオのこれまでの体調の変遷が、事細かに記されている。
「これさえあれば何か手がかりが… … …え?!?!?!」
「問題ないな。私が知っているレオの病気の様子と同じだ」
「ちょ、ちょっっちょちょっと待ってください!”治療法 / 湯治、薬草食、回復ポーション、治癒魔法”って何ですか???????」
アレクサンドラが答える。
「湯治とは、地面から湧いて出た温かい水に浸かることです」
「…薬草食って?」
「様々な薬草を食べる事です。毒が消えたりするので」
「回復ポーションって?」
「軽い病気や体力低下を消し去る飲料があるのですが、それを沢山飲まれたんです」
「治癒魔法って?」
「病気やケガを治せる魔法の事です」
思わず倒れそうになる。
「(そうだった…ここって…魔法使いや聖女や獣人がいる世界だったんだ~~~~~!!!!)」




