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13話 第四王子レオ

「え、ええっ、あの、その…病気の人を助けることは…ちょっと…難しいです」

しどろもどろになってしまう。

口が裂けてもウサギを食材として考えて、美味しくなぁ~れ、ケガが治って元気いっぱいの体になぁ~れ、美味しくなぁ~れ、という祈り方をしただなんて言えない。


何も知らないルドガーはニッコリ笑って聖女を部屋から連れ出した。

「離れに案内するよ!まずレオに会ってもらわないと」

心の中でジタバタと慌てながら、良子はなんとか取り繕って話す。

「あ、あれは偶然たまたまラッキーで…!ケガは治せても、病気は治せないような気がします。聖女の勘です」

「ちょっとだけでいいんだ!”もしかしたら”が起こるかも知れないだろ?お願いだよ…」

茶トラのまん丸おめめで見つめられては頭を縦に振るしかない。

「…わかりました」


緑豊かな庭を渡るように作られた廊下を歩く。

それなりに大きい石造りの建物に着いた。

扉の前で警護する近衛に声をかける。

「侍女に伝えます」

中に入ってすぐに出てきた。

「10分ほどで身支度を整えられるそうなのでお待ちください。ただ、ベッドでのご面会になりますが…」

「もちろん大丈夫!ここで待たせてもらうよ」

近衛はすぐに扉を開け、応接間に聖女とルドガーを通した。

ルドガーはイスにぐんにゃんり体をあずけて、王子らしからぬ格好でリラックスしている。

「兄弟に会うためにも身支度を整えるとは、さすが王族ですね」

「ん?違うよ~聖女が来てくれたからに決まってるじゃん!」

「あらら、私のためにかしこまらなくても…ご病気だっていうのに、余計な労力をかけさせちゃいましたね」

「ここの応接間には食べ物が置いてないなぁ…茹でたキャベツが食べたい気分なのに~」


室内を見回すと、余計な飾りが無く質素だ。

いつも活動してる王城とは雰囲気が違う。

「…ところで、王子達は4兄弟だったんですね。てっきり3兄弟かと」

「兄弟は男ばっかり6人いるよ!」

「ええっ!?6人も!?!?い、いえ、王族って確かに奥さんが何人もいて、って感じですもんね…」

「うん。兄弟みんな母上が違うんだよ。父上が王位についたとき、お嫁さんを募集したんだけど」

良子はごくりと息を飲む。

「お嫁さんに応募してきた女性6人全員と結婚したんだ」

「じ、自由!!!!」

ネコらしい奔放さに圧倒される。

「それで同じ年に生まれたのがボクらってわけ!」

「えっと、第一王子がラウル王子、第二王子がリッチ王子、第三王子が」

「このカワイイ茶トラのルドガー!」

「そして第四王子が…」

「レオ!って、ボクのカワイイ発言にツッコんでよ~」

「だって実際ルドガー王子は可愛いじゃないですか♪」

「…カッコいいとか、頼もしいとか、知的とか、強そうとかじゃなくて?」

「カワイイ♪」

ルドガーはガクッとうなだれる。

その時、ご案内いたします、と侍女の声が聞こえ、奥の扉が開いた。


――――――――――


ベッドには、上品な貴金属を思わせるシャンパンゴールド色のネコが座っていた。

「(すっっごい美人っ!!!!こういう毛色、なんて言うんだっけ…?)」

目の前にいる美しいネコに釘付けになってしまう。

「(クリームタビー?ミルクティーだっけ?淡い黄色、いやグレー?遠目からだとホワイトちゃんに見えるこの毛色…美しすぎる~~~!!!)」

「リョウコ、こちらレオ。レオ、こちら聖女」

「初めまして、聖女様」

「あっ、は、初めまして、レオ王子。ルドガー王子もご紹介ありがとうございます」

良子は意識の世界から帰還した。

窓から差し込む日光がレオの体を照らし、黄金に輝いて見える。

「ああっ眩しい…神々しすぎる…!」

「せ、聖女様?」

「リョウコ?」

「ハッ!す、すいません、また自分だけの世界に入りかけちゃいました…」

ルドガーはレオの背中に手を当て、希望たっぷりという口調で話す。

「レオ、もしかしたら奇跡が起きて病気が治るかもしれないよ!リョウコはね、すごいパワーをもっているんだ!!」

それを聞いた良子の口元がゆがんだ。

「いえ、ルドガー王子。私の祈りは食べ物にしか届きません…」

「それでも祈ってくれるんだろう?」

2匹から見つめられる。

「… … …心を込めて祈らせてもらいます。でも、期待はしないでください」


残念ながら、あるいは当然ながら。

どれだけ心から祈っても願っても奇跡は起きなかった。


――――――――――


翌日。

仕事が休みで丸一日空いている良子は、図書館に来ていた。

あ~~~っ!と声を出さずに伸びをする。

「(ダメだ…確かに猫を食べる文化は色々あるみたいだけど…)」

ベトナム、中国、朝鮮半島、そして昔の日本。

ヨーロッパはスペイン、スイス。

「(アフリカにオセアニアも…。そりゃ生き物なんだから、当然食べるって選択肢が出てくるよね)」

しかし。

良子は広げていた本をパタンと閉じた。

ネコ肉の料理写真を何枚見ても、脳は猫を食材として認めない。


「(ムリだ。犬と猫は…あとネズミとその仲間たちも。確かに食肉として扱う文化は存在するし、それを否定する気は全くない。でも私個人の中で…絶対に猫は食べ物として認識できないっ!)」

机につっぷして、小さな声でどうしよう、と呟いた。

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