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金がすべての学園で  作者: ハイト
学園入学
6/32

ショッピングモールサバイバル

「おい!!今のって人狼ってやつか!!」


 喜早が無線で叫ぶ。

 そんな反応をするのも無理もない、だってこの世にはいないはずの生物が目の前を通り過ぎたんだから。


「ああ僕にも見えた」


 宗田が無線で反応する。

 その他の2人もどうやら姿を確認したらしい。


「しかもあの方向って、アイス工場じゃないですか?」 


 春川が無線で言ってきた。

 アイス工場って言ったら俺らの旗がおいてある場所だ。

 つーことはダミーの建物にすら目を向けず直で旗がある方向に向かってるのか?

 ――おいおい流石に冗談きついぜ、向こうのチームには旗のある場所がわかってんのか?


「俺は自動車工場に向かう奴らも見えたぜ」


 喜早が俺の見ていた方向と反対側から報告してきた。

 まじで言ってんのか?一戦目から即負けはガチでなえるぞ?

 すると宗田が、確信した様子で俺らに言ってきた。


「相手は多分速攻を仕掛けて一瞬で終わらせる作戦だろう、だが今の僕らにできることはなにもない」


「とりあえず僕はそれぞれの工場にいる班長たちに連絡する、連絡が終わったあと僕らは相手陣地に攻め込もう」


 俺等の少し焦っていた心を、宗田は冷静な判断で沈めてくれた。

 たしかにこの場面で安易に戻ると相手とかち合ってしまう恐れがあるし、戻れて守れたとしても真ん中を占拠されれば攻めにくくなる。

 この場面は味方を信じて攻め込むほうが、勝率は高いと言えるかもしれない。


「俺はその作戦でいいぜ!!」


 喜早が脳天気な声で言ってきた。

 まぁでも今少し緊迫した状況だから、この明るさはありがたいと言えるかもな。

 俺等はとりあえず宗田の提案に賛成したあと、宗田からの連絡を待つ。


「とりあえず、連絡した」


 宗田が連絡からかえってくる。

 内容は”まだ耐えられる範囲なので攻めても問題ない”だった。

 すると宗田が作戦を俺等に話してきた。


「これより僕ら宗田班は左下のショッピングモールの旗を取りにいく」


「ショッピングモールの理由は、どうやらショッピングモールの平行線である自動車工場に、たくさんの人狼陣営が攻めてきたらしい」


「つまりショッピングモールが手薄である高い可能性があるということだ」


 宗田が詳しく作戦を俺達に話してくれた。

 作戦を話し終わったあと、俺等は相手の陣地に移動することになった。


「とりあえずすぐに移動しよう」


 宗田を先頭に、俺等はなるべく人狼たちに見つからないようにショッピングモールに向かう。

 俺等の現在地からは歩いて三十分ほどで、ゆっくりと向かうことになった。


 〜ゲーム開始から35分後〜


「なぁ俺等さ速攻を仕掛けられた割には、こっちチームまだ誰もリタイアしてないよな」


 喜早が不意に、俺等に問いかけるように聞く。

 たしかに不自然だ、こっち側は速攻仕掛けられったってのに1人もリタイアしてないのはおかしい気がする。

 すると宗田が、喜早の意見に賛同するように言ってくる。


「たしかに僕も同じことを考えていた。いくら耐えられる範囲とはいえ、リタイアが一人もいないのは流石に出来すぎていると思う」


 宗田も俺等と同じ考えのようで、今の拠点の状況に不信感を抱いているようだった。

 俺と喜早もだよなと返事をした。

 するとこの会話に五色が割って入るように言ってきた。


「ねぇみんな今はそんなことより目の前に集中しない?ほら目的地だよ」


 五色が指を指した方向には、ショッピングモールの入口が見える。

 見た目はそこら辺に普通にあるショッピングモールと変わらないくらいの完成度だ。

 どれくらいかというと、この入学試験に金がどんだけつまれているのかを余裕で想像できるほど、現実と変わらなかった。

 すると俺等の中から弱気な声が聞こえてきた、声の主は春川だった。


「大丈夫かな……失敗しないよね……」


 体を震わせながら、弱気の声を発している。

 まるで小動物だな。

 俺が心のなかで思っていると、喜早の励ます声が響いた。


「大丈夫だ!!俺等の旗は味方に任せて、こっちはこっちで頑張ろうぜ」


「アイテッ」


 ビビっている春川を喜早が背中を叩いて鼓舞する。

 だがこの状況で弱気になられちゃあ勝てるもんも勝てないからな、これでメンタルを持ち直してくれるとありがたいんだが……

 俺はそっと春川の顔を見る。


「あ、ありがと少しマシになったよ、喜早くん」


 春川はさっきより明るい顔でお礼を言った。どうやら思ってたより喜早の鼓舞が効いたらしい。


「おお〜〜喜早パワーすげぇ、本当にメンタル持ち直しちまった」


 やっぱりムードメーカーって大事なんだな。

 それに比べて……こっちは険しい顔してやがるな……

 俺が目を送った先にいたのは、ショッピングモールの鍵をなんとか開けようとしている宗田の姿だった。


「皆待ってくれ……もう少しで開けれそうなんだ……」


 そう言って宗田は、鍵穴をピッキングでこじ開けようとしていた。

 だがそれはピッキングと呼ぶには、程遠いほど力任せなやり方だった。

 俺はだんだんと見ていられなくなり、ついには


「俺がやろうか?一応ピッキングのやり方は分かるんだけど……」


 俺がそう言うと宗田は、どこから持ってきたかわからないピッキング器具を渡してきた。

 とりあえず俺は鍵の構造を探るために、鍵穴にピッキング器具を入れてみた。

 ”カチャカチャ”

 鍵穴の中に器具が当たる音がする。

 鍵の構造がわかったので、次に俺はさっきのと違うピッキング装置で開けようと試みる。

 ”カチャカチャ……カチャッ”

 鍵の開いた音が響く。


「これでよし、開いたけどこれどうすんの?」


 俺は宗田の方を見る。

 だが宗田は驚いた顔をしていて、まだ状況を読み込めていないようだった。

 まぁ仕方がないとも言える、だって自分と年齢も変わらない青年がピッキングを使ってドアを開けるんだから、驚いても仕方がない。


「おい宗田?大丈夫か?」


 俺がもう一度、宗田の名前を呼ぶと今度はしっかりと反応してきた。


「あ、ああすまない、少し驚いただけだ。君どこでピッキングの技術なんて覚えたんだい?」


 宗田が少し聞きづらそうな感じで聞いてきた。

 俺は少しどう答えようか悩んだあと次のように答えた。


「えっと……昔ネットで見て、それをたまたま思い出しただけだよ……」


 うーん、我ながら引っかかる言い方だな……

 だがそれを聞いた宗田はあまり踏み込んではだめなのかと感じたらしく、それ以上は聞いてこなかった。

 少し皆の中で沈黙が流れた、それに耐えきれなくなったのか宗田がこんなことを言い出した。


「とりあえずみんな中にはいらないか?」


 俺等はここで待っているわけにもいかないので、その提案に賛成することにした。


「それじゃあみんな準備はいいか?静かに入るぞ」


 宗田がショッピングモールのドアを静かに開ける。

 ショッピングモールの中は真っ暗で薄っすらとしか見えない。

 だが薄っすらとしか見えない中でひときわ目立つオブジェクトが真ん中にあった。

 とりあえず俺達はそのオブジェクトを目指して進んでみることにした。

 俺等は安易に音を立てないようにゆっくりと進む。


「みんな離れるなよ、奇襲が来るかもしれない」


「わかった」


 周りを見渡し、人の気配がないか警戒する。

 真ん中にあるオブジェクトまで来てみたが俄然気配がない。

 本当にここに旗があるのか?間違いじゃないのかと思うほど人の気配が感じられない。

 一体全体どういうことだ?


「なぁ本当にここなのかよ、全く人の気配が感じられないんだが?」


 俺はとりあえず愚痴をこぼしておいた。

 それにしてもさっきから妙な感じだな、背筋が凍る感じというか、熱のときに感じる倦怠感が身体全体を覆ってるみたいだぜ。


「うーん、確かに人の気配が感じられないな、確かにここだと言っていたんだが……」


 宗田が顎に手を当てて首を傾げる。

 すると宗田がポンッと手をたたき思い出したかのように言った。


「あ、そうだ喜早くん索敵のために、占い師の能力を使ってもらえるか?」


 あぁ、そういえば占い師の能力って人狼の位置がわかるんだっけ?たしかにこの状況にもってこいじゃねーか。

 まぁこれだけ気配がないってことはいないってことだろうけど。


「OKOK、ちょっと待ってね、能力を使用っと」


 喜早が何かを押すと、喜早の足元からレーダーのようなものが浮かび上がってきた。

 そこには青色の丸と赤色の丸があった。

 俺はなんだろうとポカンとしていると、喜早が能力について説明してくれた。


「このレーダーが大体の範囲を示していて敵の位置が見える、青いのは俺らで赤いのは人狼だぜ」


 すげーあんな感じで使えんのか、かっけぇ。たしかに青い点の後ろに赤い点が見える…………

 ――ん?今赤いのが人狼つったか?じゃあ、あの赤い丸って近くにいるってことじゃねーか!!

 落ち着け……位置的にあの場所にいるのは……


「宗田!!しゃがめ!」

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