旗取り人狼ゲーム2
地図を見せてもらったところによると、
大体右側が工場地帯、真ん中が工場地帯+住宅街、左側が住宅街と半分半分でわかれている。
「まあどうでもいいや、今はとりあえず指定された住所にいかないと」
俺は地図で目的地を探す。
「あ、ここみたいですね?」
男が地図に指をさす。
さされた場所は大きな廃工場で、ここからはそんなに遠くはなさそうだった。
「多分この距離なら歩いて5分くらいでつきそうですね?」
「じゃあ早速行きましょうか」
俺はこの気まずい空間を早く抜け出すためにさっさと向かうことにした。
〜5分後〜
「え、ここ?ここって何かの工場……か?」
「そうみたいですね……」
指定された住所に建っていたのは、パイプ管や煙突などがむき出している大きな廃工場だった。
「本当にここで合ってるのかな、にしてはゴツすぎる気がするけど」
「あそこなんて壁壊れてますよ……」
不安の声を俺に向けてくる。
「本当にここなのかよ?にしてはボロすぎるって言うか……」
不安が胸によぎるがとりあえず中にはいってみることにした。
中は色んな機械に布が被されており、いかにも廃工場って感じの場所だ。
自分の足音が静かな廃工場内に響き渡る。
少し廃工場の中を歩くと、先のほうから声が聞こえてきた。
どうやら多くの受験生が集められているようだ。
暗闇を抜けた先に大きく開けた場所があり、多くの生徒が集まっていた。
真ん中には旗のようなものがある。
「ここに人がいるってことはここが目的地で間違いなさそうだな」
「じゃあ僕はこれで」
「ありがとうございました」
「いえいえ」
俺が軽くお礼を言ったあと男の人は、そそくさとどっかに行ってしまった。
「とりあえずそこら辺で待っとくか」
「君は新しく来た受験生かい?」
少し座ろうとしていたときに、眼鏡をしたいかにも堅物そうな男が話しかけてきた。
「まぁはいそうですけど」
「じゃあ君の役職を教えてもらっていいかな?」
男は俺に警戒心むき出しで質問してきた、まるで望む答えが帰ってこなかったら殺すかのようなそんな気迫をまとっていた。
それにしても
――役職ってなんだ……?そんなもの教えられた覚えがないんだが。
「あのー役職ってなんですか?そんなもの見た覚えがないんですけど」
「君、本気で行っているのかい?このゲームの世界についたときに画面に表示されたはずだろう?今でも画面の右下に表示されているはずだ」
堅物そうな男は呆れた声で言う。
「右下……?ああこれか」
ホントだ、自分の画面の右下に市民としっかり書かれている。
「それで君の役職は何だい?」
男はメモ帳のようなものを取り出してもう一度聞いてくる。
「えっと市民です、これでいいんですかね?」
俺がそれを言った瞬間に男の雰囲気が柔らかくなる。
「ああ大丈夫だ君は嘘をついていないようだからね、それと名前を教えてくれるかな?」
その言葉に俺は疑問を持ちながらも、とりあえずおいておくことにした。
「えーと鰯田です」
俺が言うと男がメモ帳に名前をメモっていく。
「ありがとう、これで聞くことはもう無いな」
「あとこのゲームのルールをもっと詳しく知りたいならあの旗の近くに行くと良い、画面に表示される」
男が旗を指さして俺に言ってきた
確かに旗の周りにたくさんのひとが集まってる。
「役職の持つ能力を知りたいなら、僕のメモを確認してくれ旗の近くにおいてある」
男はそう言いきったあと、俺の役職をメモをして他の受験生のところに行った。
「すげぇ全員分メモしてんのか、真面目な人だな」
言われたとおりに近くに行くとルール表が画面に表示される。
〜ルール表〜
・このゲームは人狼側と市民側による旗取りゲームです
・人狼側と市民側にはそれぞれ特殊能力があります
・40対40のチーム戦です
・相手の旗に一定時間触ればその旗を取ることができます
・心力は使用可能です
・ゲーム数は1日目、2日目、3日目、の3回です
・旗に10秒間触れば好きな旗にワープできます
・味方とは遠隔でも通話できます
・先に2勝したほうが勝ちです
――なるほどねやっぱりただの人狼ゲームじゃなかったか。
にしてもこれって負けた陣営どうなるんだろうか。
やっぱり試験に落ちてしまうのだろうか?
次に俺は役職の能力が書かれたメモを手に取り他の役職の能力を確認する。
〜能力〜
・市民:初期状態で銃が配られる、敵を倒すほど使える武器が増える
・占い師:30分に1回、半径100メートルをスキャンして敵がいるか確認できる
・霊媒師:3時間に1回1人、味方を生き返らせることができる
・ハンター:相手と強制的に一対一で戦うことができる
・村長:1ゲームに付き2回だけ生き返ることができる
「何だこれ……めっっっっちゃおもろそ〜〜」
つい大声を出して喜んでしまった。
周りの奴らからの視線が痛い。
「あっすいません」
軽く謝罪をしたあと端の方にそそくさと俺は逃げる。
「やっべぇはしゃぎすぎた……恥ずかしーー」
俺がさっきのことを恥ずかしがってると、
”ブウォン”という音とともに旗の上に大きく30:00と表示される。
「うぉ!!びっくりした何だ急に……?」
どうやら試験が開始されるまでの時間のようだ。
すると突然、
「集合ー!!」
という大きな声が廃工場内に響き渡る。
声が聞こえた方に向くと、さっきの眼鏡の男が招集をかけているようだった。
ホワイトボードにペンを持った状態で待っていて、作戦会議でもするような感じだ。
「突然集まってもらってすまない、君たちにはこれから5班に分かれてもらう」
「理由としては班に分かれて行動したほうが指示を出しやすいからだ、なにか異論がある人はいないか?」
「ないようだな……それじゃあそれぞれ分けるから呼ばれたら前に出てきてくれ」
男は胸ポケットから手帳のようなものを取り出し名前を読んでいく。
「それじゃあ次鰯田くん」
あ、俺の番か前に行けばいいのかな?
とりあえず俺は呼ばれた男の近くに向かうことにした。
「えっと君は……あの人と一緒だからここで待っててね」
男がを指さした方向にいたのは、さっき俺に話しかけてきた堅物そうな眼鏡の男だった。
「あーーそうすか……おっけーす」
あの堅物そうなやつと一緒か……めんどくさそうだな……
俺はそう思いながら、とりあえず端のほうで待つことにした。
「とりあえず一通りは伝え終わりましたね、それじゃあ皆さん指定された場所に向かってください」
その声とともに他の受験生たちは、わらわらとこの空間から去っていく。
やがてさっきまで騒がしかった空間が、自分一人しかいないのかと錯覚してしまうくらい静かになったあと、残ったのは自分を含めた男子5人だった。
「えーとこれで全員かな?それじゃあ集まってくれるかい?」
そう口を開いたのは、さっきの眼鏡の堅物そうな男だった。
それに対し俺と他の男子は呼ばれた方に集まっていく。
このあと俺は知らなかったあんなニートで、陰キャで、コミュニケーション能力0点のやつには地獄としか言いようのないことが始まるなんて。