お義兄様と帝都にデートに行くと人気カフェで婚約祝をしてくれました
「で、お義兄様は何しに来たの?」
私はいきなりやってきたお義兄様に聞いていた。
「いや、エリが暇なら外に連れて行ってやろうと思って」
「えっ、私、今セッシーと話しているんだけど」
私が迷惑そうに言うと、
「何言っているのよ。私の用はもう済みましたから、どうぞどうぞ、お二人でデートしてきてください」
セッシーがしおらしく言ってくれるんだけど、絶対におかしい!
「ちょっとセッシー!」
「いいのよ。私はお父様の所に行くついでにエリの所に寄っただけだから」
「そうか。悪いな」
「ちょっとお義兄様!」
お兄様が私の代わりに返事してくれるんだけど、絶対に変だ。
「いえいえ、どうぞお二人で楽しんできてください」
セッシーに押し切られて、私はアリスおすすめの庶民服、に着替えさせられた。
水色のワンピースに金の糸で薔薇が刺繍してあるのだ。金のバラなんてないのに……
「レオンハルト様の目の色のワンピースにレオンハルト様の髪の色の薔薇の刺繍があるのが良いんです」
アリスが言ってくれた。
最近水色や青の服がやたら多いのはそう言うことか……やっと判った。
それに対してお義兄様は黒のブラウスに黒のスラックス、挙句の果ては黒のサングラスで、完全にヤクザの若頭って感じなんだけど……
これは黒髪黒目の私の色をつけているってこと?
サングラスはできるだけ可愛いのにしたつもりなんだけど、お義兄様がつけるとどうしても怖い感じになってしまうのだ。
「エリ、今日もきれいだ」
お義兄様が言ってくれて
「そうかな」
私は赤くなった。お義兄様に褒められるのは未だに慣れない。
「お義兄様も、ヤクザの若頭みたいな感じだよ」
「おいおい、何だよそれは。全然褒めていないじゃないか」
私の言葉にお義兄様が少し機嫌を損ねるが、
「だって見た感じがどうしても怖い」
私はお義兄様の文句を肩をすくめて躱した。
まあ、横にいたら、これほど頼りになるお義兄様もいないけど……
一見して怖いのは仕方がないよね。サングラス外したらイケメンになるけれど、流石に第1皇子がサングラスを外して帝都でおでかけするわけにはいかない。
私達は手を繋いで正門を出た。
門番の騎士はお義兄様を見て驚いていたけれど、慌てて敬礼してきた。
「おい、レオンハルト殿下が笑っているぞ」
「絶対に変だ」
騎士達が何か言っているが、お義兄様が睨みつけると慌てて静かになった。
確かにお義兄様の機嫌が良いけれど、変だということはないと思うんだけど……
お義兄様は正門から少し歩いた所にある、屋台に向かってくれたのだ。
「たこ焼き1つ」
そして、前に私が食べたいと言っていたたこ焼きを1つ買ってくれたのだ。
「ありがとう、お義兄様」
私がお礼を言うと、一つ取って私の眼の前に持ってきてくれた。
私が思わずぱくつくと
「熱い!」
たこ焼きは焼き立てで思ったよりも熱かったのだ。
私は口を抑えて悶絶していると
「おい大丈夫か?」
慌てて水をもらってきてくれたる
私がごくごく飲み込む。
「本当に熱かった」
私はホッとした。
「本当に熱いもの食べる時は気をつけろよな」
お義兄様が注意してくれた。
「私の目の前に出すから、食べられると思ってしまって」
「フウフウしてから食べろよ」
がさつなお義兄様に注意されてしまった……
「はい、お義兄様」
私は悔しくなって一つ取ってお義兄様の口の中に入れた。
「本当に熱いな」
そう言いながら平然とお義兄様が食べているんたけど……
何で?
「エリとは鍛え方が違うんだよ」
威張ってお義兄様が言ってくれるが、単に口の中の神経が死んでいるだけじゃない!
と思ったのは秘密だ。
「はい、エリもう一つ」
お義兄様が差し出してくれた。
「フウフウ」
今度は私は必死に冷まして食べた。
「美味しい」
私は前世の日本のたこ焼きを思い出していた。
転生者か誰かが作ったんだろうか。大阪のたこ焼き並みに美味しかったのだ。
「だろ、ここのたこ焼きは美味しいんだ」
お義兄様が自慢してくれた。
たこ焼きをお互いに食べさせ合うと、私達は街の中をぶらぶら歩き出した。
以前歩いたときよりも体とは色々変わっていた。
さすが大陸最大の都市だ。
それにいろんなお店がある。
お義兄様とひやかしながら歩いて、私達はいつものカフェギャオースにたどり着いたのだ。
ギャオースは相変わらず、多くの人が並んでいた。
その最後尾に並びながら、私達は3日後に開催されるお義兄様と私の婚約披露パーティーのことについて話していた。
何しろ帝国の第一皇子の婚約披露パーティーだ。パーティーには周辺各国から多くの王族や、帝国の多くの貴族が参加するとのことで、その従者や護衛も含めて多くの人が帝都を訪れるということで帝都の宿はすべて満員なんだとか。周辺都市の宿泊施設も結構混んでいるらしい。
私にとってはそんな大々的なパーティは開きたくなかったのだが、第1皇子の婚約者披露パーティーだからやらなければいけないとお義父様やお祖父様に押し切られたのだ。
その事を考えると今は憂鬱だけど、まあ、ビッグパフェを食べる時は忘れて思いっきり食べようと思っていたのだ。
いつものようにテーブルに案内されるとオーナーが直々に注文を取りに来た。
「これはこれは。お兄ちゃん。えらくニヤけているじゃないか。なにかいいことあったのかい」
「オーナー、判るか。実はエリとの婚約が決まったんだ」
お義兄様が言わなくてもいいことをバラしてくれたんだけど。
「えっ、それはめでたいな。良かったな兄ちゃん。6年越しの恋が実ったんだ」
オーナーが喜んで言ってくれた。
「ちょっとお義兄様、あまり皆には言わないでよ」
私が少しムッとして注意すると、
「まあまあ、お嬢ちゃんも良かったな。二人共昔からアツアツだったからな。当てつけられて店員ものぼせるやつもいたし。いやあ、決まって良かった」
オーナーが喜んで言ってくれたのだ。
私は真っ赤になった。
でも、熱々って6年前は私は完全にお義兄様はお義兄様という認識しか無かったんだけど……
オーナーがビッグパフェを持ってきた。
「ああ、美味しそう」
私が言ってスプーンに手を伸ばそうとすると
「お嬢ちゃん、少し待って」
そう言うとオーナーが手に持っていたオルゴールを鳴らしてくれた。
「えっ」
パパパパーーンパパパパーーンパパパ
それは結婚行進曲だったんだけど、違うって!
私は思ったが、
パーン
曲が終わるとオーナーがクラッカーを鳴らしてくれて、
「ご婚約おめでとうございます」
大音声で言ってくれた。
「おめでとう!」
「凄い!」
パチパチパチパチ
周りのお客さんが拍手してくれたのだ。
「ありがとう」
お義兄様はそう皆にお礼を言うと、立ち上がってチュッと私の唇を奪ってくれたのだ。
「ヒューーーー」
「キャーーーー」
黄色い声援が上がって私は真っ赤になってしまったのだ。
皆に手を振るお義兄様はとても嬉しそうだったけど、私は真っ赤になって固まってしまった。
最も固まっていたのは、お義兄様がスプーンですくってくれたパフェを口の前まで持ってきてくれたときまでだったけれど。
カフェギャオースのパフェの前に私の恥辱はどこかに飛んで行ってしまったのだ。
いつものごとくパクパク食べさせあいっこした私達だった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
新作『傭兵バスターズ』
https://ncode.syosetu.com/n3697jc/
面白いので是非とも読んで下さい。
全ページ下にリンク張ってます。
第二部もすぐに始める予定








