翌日、喜んだお義兄様が私を抱いて婚約のサインを貰いに両家を回ってくれました
婚約を承認してからお義兄様が私に対してめちゃくちゃ甘くなったんだけど……
ちょっと過保護な感じで、私を抱いて移動しようとするのはやめて欲しい。
私も二本の足があるのだ。
転けたら大変だとかお義兄様が言うけれど、私は赤ちゃんじゃない!
私はそう思ったのだ!
翌朝も早くから私のところに来て、すぐに出立する準備をしろと叩き起こしてくれたし……
それなら前日から話して欲しい。
私は寝ぼけ眼でアリスに青いドレスに着替えさせられて、お義兄様に抱えられるように王宮の馬車に乗せられたのだ。
お義兄様は第1軍の総司令官の立派な衣装を着ている。
完全な正装だ。
そして、そのまま馬車はあっという間に到着した。
というか、お祖父様のところなんだけど……
着いたら驚いた様子のお祖父様とお祖母様が迎えてくれた。
そのまま応接に連れて行ってくれた。
「どうなさったのですか、殿下? 王宮から急に前触れが来たと思ったら、準備する間もなく到着されて、家内と二人で驚いて迎えに来た次第ですが」
お祖父様が驚いて聞いてきた。
「公爵、やっとエリに了解を得られたんだ。それで公爵の了解を得に来た」
お義兄様は喜んで言うんだけど……
ええええ! 私達の婚約の話なの?
それで私は正装させられたの?
でも、昨日の今日じゃ何が何でも急ぎ過ぎなんじゃないの?
私は驚いてお義兄様を見た。
「それはそれはようございましたな。しかし、あまりにも急すぎるのでは」
お祖父様もそう思ったみたいで呆れた顔をしているんだけど……
「俺もそう思ったが、外務卿がまた良からぬことを計画しかねんからな。俺としてはすぐにでも婚姻を上げたいくらいなのだ」
「いや、しかし、皇族の婚姻ともなりますと1年くらいはかかるのではないですかな」
お祖父様がやんわりと嗜めると、
「公爵、私としては1日も早く婚姻を上げたいのだが」
「殿下。エリの気持ちもありましょう。鳩が豆鉄砲を食らったように驚いております」
お祖母様が横から言ってくれるんだけど……
「エリ、俺としてはすぐにでも婚姻したいのだが」
お義兄様が私に迫っていってくるんだけど……
「お義兄様。私も昨日までお義兄様のことはお義兄様としか思っていなかったし、もう少し、時間が欲しいわ」
私がやんわり断ると、お義兄様が悲しそうな顔をして、
「エリはそう言うが、俺は母上が亡くなってから6年間も待ったのだ」
そう言ってぐんぐん迫ってくるんだけど……近いからお義兄様!
「お義兄様。少し落ち着いて。私は逃げたりしないから」
「そんな事言って、この前は俺に断りもなくサンタルに行ったではないか!」
お義兄様が私に迫って文句を言ってくるんだけど……
「そんな事言われたって、お義兄様のことはお義兄様としかその時は思っていなかったし……」
「判らせればよいのか」
「ああ、もう判ったから」
お兄様が更に迫ってくるので私は慌てて頷いた。
「エリ、そんな事言うならもう、既成事実を作って……」
「お義兄様、落ち着いて」
私はそういうお義兄様をどうどうとしたのだ。
胸をペチペチと叩く。
「殿下、そう焦られますな。男はどんと構えていることこそ重大ですぞ」
お祖父様が言ってくれた。
「その方はそう言うがな。いきなりいなくなられて俺はあの時のショックがいまだに忘れられぬのだ。エリの父の仇討ちを必死でしていたのに、仇討ちの本人にいきなりいなくなられた時のショックはいまだに忘れられん」
「だからもういなくなったりしないって」
私はお義兄様の前で断言して上げたのだ。
「エリ!」
お義兄様がいきなり抱きついてくるんだけど。
「ちょっとお義兄様」
「殿下、我々も居りますから」
咳払いをお祖父様とお祖母様がする。
「まあ、仲の良いことは喜ばしいことですが」
「左様でございます。殿下。エリをよろしくお願いします」
二人に挨拶されたんだけど。
「そう言ってもらえると嬉しい。それでこれはその署名いただく書類だ」
お義兄様はおもむろに封筒に入った書面をお祖父様の前に差し出した。
「なになに、婚姻承諾書…… 殿下、これは婚姻の承諾書ではありませんか」
お祖父様が驚いてお義兄様に突き返したんだけど。
「すぐの婚姻など許せませんぞ」
「すまん。書類を間違えた」
そう言ってお義兄様は笑って婚約の承諾書を差し替えたんだけど、絶対にわざと間違えたんだと思う。
サインを貰うと挨拶もそこそこにお義兄様は私を連れて王宮に帰ったのだ。
「何もそんなに慌てなくても……」
お祖父様に呆れられていた。
そして、私を抱いて宮廷を今度は奥へ入っていった。
「お義兄様。皆が見ているから頼むから降ろして」
「まあ、そう言うな。皆にエリが俺のものになったと見せびらかせないと……」
お義兄様は皆に見せびらかすように私を抱いて奥へ入っていくのだ。
皆、私達を生暖かい目で見送ってくれたんだけど……
そして、なんと謁見室の前まで私を抱いて入っていくんだけど……
「で、殿下」
驚いた顔で近衛騎士が私達を見た。
「父は中だな」
「いや、そうですが、中には外務卿が」
「お義兄様!」
「構わん。入るぞ」
強引に私を抱いて中に入ってくれたのだ。
「な、どうしたのだ。レオンハルト」
謁見の間で外務卿相手に話し込んでいたお義父様が驚いてこちらを見た。
「殿下!」
外務卿も驚いてこちらを見ている。
「これは外務卿。御息女の婚約おめでとう」
そう言えばこの前私がボートでぶつかったことが原因でアガットがラペルズ国王の後妻に決まったのだ。
「いや、私はまだ認めたわけでは」
「な、なんと。何なら俺が代わりに婚姻承諾書に署名してやろうか。ラペルズ国王はとても喜んでおったぞ」
「で、殿下ですな。余計なことを画策されたのは」
外務卿は苦り切った顔をするが、
「アガット嬢も一国の王妃に成れて良かったではないか。昔から散々王妃になりたいと申しておったからな」
お義兄様が言うけれど、おそらく、アガット嬢はこの帝国の皇后になりたかったと思うんだけど……
その言葉に外務卿は嫌そうな顔をしてくれたけれど……
「それよりもどうしたのじゃ。レオンハルト。我々は忙しいのじゃ。惚気ならば外でしてほしいのじゃが」
お義父様がお義兄様を睨みつけると
「そうですか。では単刀直入に言います。ロザンヌ公爵の承諾のサインをもらってきたので、父上もサインを下さい」
そう言うと、お義兄様がいきなり婚約承諾書をお義父様に突き出したのだ。
「レオンハルト、これはエリの婚約承諾書ではないか」
お義父様が驚いて言った。
「ちょっと殿下、こういうことは重臣らの承認も必要では?」
慌てて外務卿も言ってきた。
「父上は、エリ本人の承諾とロザンヌ公爵の了解さえ取れれば良いとおっしゃられましたよね」
「いや、それは申したが、何もこんな急には」
「何を言っているのです。良からぬ佞臣がまた、私達の邪魔をするか判ったものではありませんからな」
そう言うと、お義兄様はお義父様から釣り書のような物を取り上げたのだ。
そこには見目麗しい王子様の姿絵が映っていた。
しかし、ビリビリお義兄様はそれを破り裂いたのだ。
「ちょっと殿下」
外務卿が慌てて止めようとしてお義兄様はそれを燃やしてしまった。
「何まですかな。これは?」
二人を睨みつけている。
「いや、これはだな。ラスミール王国に見目麗しい王子がいるとのことで」
「今度はラスミール王国を制圧すればよろしいのですか? やれというのならばやりますが」
お義兄様の氷のような声が謁見室に響いた。これはやばいやつだ。
「お義兄様。手に火が」
お義兄様の手に大きなファイアーボールが出来ているので慌てて私が触って消す。本当にお義兄様は怒ると手が付けられないのだ。
「外務卿。その方も不敬罪で燃やしてやろうか?」
「で、殿下、滅相もございません」
もう外務卿も真っ青になっていた。
「判った。サインすれば良いのであろう」
お義父様が呆れてサインしてくれたのだ。
「へ、陛下。重臣達の承諾をとらなくても」
お義兄様が燃やしそうな視線で外務卿を睨みつけていた。
私は燃やしそうになるお義兄様の手を掴んで火を消すのに大変だった。
「これ以上領土を増やされてものう。内務からはしばらくレオンハルトの行動を制限してほしいと言われておるしの。まあ、エリとの結婚はレオンハルトの望みなのじゃ。東方十カ国の平定の恩賞ならば安いものじゃ。それにエリもそのまま宮廷にとどまってくれたら儂としても言うことはないわ」
お義父様はそう言ってサインしてくれた。
「ありがとうございます。ついてはエリとの婚姻ですが……」
サインを貰って喜んだお義兄様が、すぐに婚姻したいと言いだしたのだ。
それを抑えるのがまた大変だった……
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
続きが気になる方はブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
また、新作始めました
『王太子に婚約破棄されて両親を殺した野蛮王に売られそうになった時、白馬の騎士様が助けてくれました』https://ncode.syosetu.com/n6878ix/
リンクは10センチ下にあります
こちらもよろしくお願いします








