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お義兄様が私にお母様の馴染の店でパーティーの時の服を贈ってくれました

「おいっ、エリ、待てって!」

私にお義兄様が追いついてきた。


「ごめん、お義兄様。せっかく用意してくれたんだけど、あの店は嫌!」

私はお義兄様に我儘を言ったのだ。


「ああ、すまん。さっきの女は第一王子の幼馴染の公爵家の娘だったか」

「そうなの。なんでも、第一王子殿下にあの店で衣装を作ってもらったそうよ」

本来ならば、この国のためにはお義兄様にはその事は言わないほうが良いのに、私は何も考えずにこぼしていた。もう、なんか、すべてが嫌になっていたのかもしれない。


クラスの皆とは仲良く出来ていたし、学園内ではいじめとかもあったけれど、平民のクラスの皆が守ってくれた。

でも、主目的の恋愛の方は全然駄目で、王子とはほとんど話すことすら出来なかった。婚約破棄からの断罪を避けようとしてきたんだけど、このままじゃ、避けられない。


なんかとても悲しくなってきた。


「そうか、それはすまなかったな。そのような店で頼んで、悪かった。だからもう泣くな」

お義兄様が言ってくれるんだけど……


「えっ、泣いてなんていないわよ!」

思わず目に手を当てると濡れていた。


「ほら、涙拭いてやるから」

私の目元にお義兄様がハンカチを当ててくれるんだけど。うーん、なんか、子供の時みたいだ。

お義兄様があまりにも意地悪だから泣いた時があって、その時のお義兄様の慌てようったら無かったんだど……


私はちょっとだけ、ぴしっとお義兄様の服を掴んでその胸に顔を寄せていた。


お義兄様がその時みたいに背中にトントンと手を当ててくれるんだけど、

「私は子供じゃない!」

私がムッとしてお義兄様を見上げると

「そうだな」

と、全く子供扱いしてくれるんだと……


ムカついたから涙をお義兄様の服になすりつけてやった。


「そろそろ、大丈夫か? 悪かったな、あんな店に頼んで」

「ううん、お義兄様が悪いんじゃないわ」

「しかし、あの店も信じられないな。エリの服を頼んだのに、その恋敵のドレスも作るなんて、普通は断るぞ」

「そこまで考えが回らなかったんじゃないの。相手はこの国の王族だし」

私が言うと

「いや、しかし、お前は公爵家の令嬢で、その祖母があの公爵夫人なんだぞ。今回の件を公爵夫人が聞いたら二度とこの系列の店は使わないと思うが」

お義兄様は言うのだが、祖母は女の子が私だけというのもあり、とても可愛がってくれているのだ。その私と恋敵と一緒に衣装を作ろうとしたと聞いたら絶対に二度とこの店は使わないだろう。


まあ、私のことも無視してくれた店だから、余り気にしてはいないんだが。



「それでだな、エリ、もう一軒頼んであるんだけれど」

そこで、お義兄様が私に微笑んできたんだけど。


「えっ、お義兄様。二軒も頼むなんて、それって本当に無駄遣いなんじゃない!」

私が指摘したが、


「いや、今回その服を使わなかったとしても、また使えるかなって。何しろ、エリの卒業記念だからな。エリには俺の卒業パーテイーの時にいろいろ苦労をかけたから、その借りは返さないと」

お義兄様も卒業パーティーの時に、私に大変なことさせたという意識はあるようだ。


「そうよね。あの時は本当に大変だったんだから」

私は遠い目をした。お義兄様の女よけを務めた私は、隣国の王女殿下やら公爵令嬢等から本当に鋭い視線で睨みつけられたのだ。


「ああ、本当に悪かったよ。だから、何も言わずに受け取ってくれ」

お義兄様はそういうと、目の前の扉を叩いた。


「えっ、ここってお母様のお友達のドレス工房じゃないの」

私は驚いた。何回か服を作ってもらったこともあるし、ここにはクラスメイトのマガリーもいるのだ。いつの間に、お義兄様は頼んだんだろう?



「あっ、ようこそいらっしゃいました。伯爵様。物は出来上がっておりますよ」

お母様の友人のドレス工房の女主人が明けてくれたのだ。


「おばさま!」

「さあさあ、エリーゼちゃんも上がって、娘のマガリーもいるから」

私はお義兄様と中に入れられたのだ。


中には真っ青な色のドレスに金糸で星が一面に刺繍されたドレスが置かれていたのだ。


「凄い。この星の刺繍を全面にするのって、とても大変だったんじゃないの?」

私が驚いて言うと


「そうよ。エリーゼ。私も必死に刺繍したんだから」

横からマガリーが言ってくれた。


「さあさあ、一度袖を通してみて。一応あなたの採寸はこの前させてもらったけれど」

「この衣装のための採寸だったんですね。私は普段着をなにかつくっていただけるんだとばかり思っていました」

「ごめんなさいね。エリーゼちゃん。伯爵様からはエリーゼちゃんには秘密にしておいて欲しいと伺ってたから、仕方がなかったのよ」

私達は別室に移ってドレスを着せてもらった。


「ぴったりね」

おばさまが目を細めて言ってくれた。


「この衣装なら、皆あなたに釘付けになるに違いないわ。お母様が生きていらっしゃったらどれだけ喜ばれたことか」

おばさまは感無量で私を見てくれた。


「まあ、大工房のドレスには負けるかもしれないけれど……」

「そんな事無いわ。このドレスは本当に凄いです。本当にこんな立派な衣装を作って頂いてありがとうございます」

私がお礼を言うと、

「これで御兄様の心もバッチリと掴めるわね」

叔母様が理由のわからないことを言ってくれるんだけど。


「どうぞ、伯爵様」

ノックの音に叔母様が言ってくれるんだけど。


お義兄様は入ってきて固まっているんだけど。


「どうしたのお義兄様」

そんなに変だったろうか。私が不安になって聞くと


「いや、あまりにもきれいで声が出なかった」

お義兄様は言ってくれるんだけど……だから私を褒めるのはおかしいんだって! 本当にお義兄様は熱があるんじゃないだろうか?

私は不安になった。



ドレスは後で届けてくれることになって、私はお義兄様と家路についた。


お義兄様は今も私の手を引いてくれている。なんだか、子供の時みたいだ。お義兄様は私が迷子になるといけないからと家の中でも手を引いてくれていたんだけど、それは流石に過保護すぎただろう。


まあ、でも、明日のことを考えると憂鬱だ。明日はエスコートしてくれるものもいないし、やっぱり最悪だ。


「しかし、エリもきれいになったな」

「えっ」

私はまじまじとお義兄様を見上げたのだ。


「どうした。やっとお兄様の良さが判ったのか?」

お義兄様が何か変な事を言ってる。


「ううん。何かお義兄様らしからぬことを言ってるから、熱でもあるのかなと」

「失礼な。お兄様はいつでも正常だぞ」

「だって、私の顔の事を、褒めてくれたことなんて今まで無かったし。きれいなんて初めて聞いた。これまではお菓子食べる時の口の大きさがカバ並みだとか、胸がペチャパイでまだまだ子供だとかそんなことしか言われたことないし」

私が膨れてお義兄様に言うと、


「いや、そうだったかな」

お義兄様が頭をかいて誤魔化してくれるんだけど……


「そんなお義兄様が私のことを褒めるから熱でもあるんじゃないかと」

「ふんっ、俺も少しは大人になったんだ」

お義兄様は威張って言ってくれるけど、それは今までガキだったと認めたってことだろうか?

今、言うとまた何かとうるさいから言わないけれど……


「それよりも、エリ、明日は卒業パーティーなんだろう」

お義兄様が忘れたい事を聞いてきてくれた。そこは触れないのが大人なのに!


「それはそうだけど」

「セドリックに聞いたら、エスコートする奴がいないそうじゃないか」

「えっ! セドリックと話したの?」

しまった! セドリックに口止めするのを忘れてた!


「そこでだな。なんなら、俺がエスコートしてやるが……」

「えっ、お義兄様がしてくれるの? そんな暇があるの?」

私は驚いて、聞いていた。最悪、お義兄様に頼もうかとも思ったんだけど、色々あるから、止めていたのだ。それにお義兄様はいつも忙しいし。下手したらもう帰るのかなと思ったのだ。絶対にこんな所で私なんかの相手を潰している時間はないはずなのに!


「大丈夫だ。その分十二分に仕事はしてきた」

お義兄様は言ってくれるんだけど、本当だろうか? 副官の人達とか必死に探しているんじゃないだろうか? 

それに、もし、私がその場で私が婚約破棄なんかされた日には、下手したら流血事件になってしまうじゃない!


「お義兄様、暴れたりしない?」

私はとりあえず釘を刺しておいた。


「はああああ! 俺がパーティーでいつ暴れた。俺の卒業パーティーの時も、静かにしていただろうが」

お義兄様は言うんだけど、

「でも、今朝も、ロベールに噛みついていたじゃない!」

私が言うと、

「ロベール? ああ、あのいけ好かない侯爵家のボンボンか。まあ、お前と出られるなら、出来る限り、静かにしている」

「出来る限りなの!」

「判った。俺の時の卒業パーティーみたいにする」

「本当に!」

「ああ、あの時は俺に相手がいなかったから、お前に迷惑をかけたからな。今度は俺がお返しをする番だ」

お義兄様がしおらしく言ってくれるんだけど、お義兄様の場合、相手がいなかったって言うのは絶対に嘘だ。相手がいすぎて、どちらをとっても禍根を残すから、私にしただけなのだ。

まあ、美しく着飾った隣国の王女様から公爵令嬢や侯爵令嬢がお義兄様に群がっていたから、野暮ったい幼い私がいて、丁度良かったのかも知れないけれど。


「あの時は本当に大変だったんだからね」

私がムッとして言うと、

「だから、今度は俺がお返しをするって」

「うーん」

まあ、しかし、相手がいないのだから、それしかないんだけど、


お祖父様や弟がいれば、エスコートしてもらったんだけど、いなかったし、ここは仕方がないだろう。私は頷いたのだ。

しかし、この判断は早すぎたのだった。


ここまで読んで頂いて有難うございました。

さて、卒業パーティーはどうなるのか?

続きは明日です。朝か遅くともお昼に更新します。

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