お義兄様が私に服をプレゼントしてくれようとしましたが、その店は王子が公爵令嬢に服を作ってやった店でした
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
誤字脱字報告、良いね、感想等ありがとうございます。
ブックマーク、広告の下の★★★★★して頂けた方には感謝の言葉もありません(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
私はお腹いっぱいになって店を出た。
大きなパフェをお義兄様と一緒に食べた私はお腹いっぱいになって大満足、いや違う、桃のシロップ漬けを最後に食べようと残しておいたのをお義兄様に横から食べられて少し怒っていた。
「エリ、そんなに怒るなよ。横に避けているから嫌いなのかと思ってだな」
「信じられない。私が桃のシロップ漬け好きなの知っているでしょ」
私はお義兄様の言葉に更に切れていた。
昔、お義兄様に同じことされて切れたことがあったのだ。
「ああ、そう言えばそういう事があったな」
お兄様は他人事みたいに言ってくれるんだけど……
「その時も、エリの怒った顔が見たくてとか訳の分からないことを言ってくれてた!」
ムッとして私が言うと
「いや、エリの食べている時の幸せそうな顔に見惚れていたからつい忘れていたんだよ」
うん?
なんかお義兄様が私の顔を褒めているんだけど、今のは褒めたのよね!
今までほとんどけなすことしかしなかったくせに変だ。
前はカバみたいな大口開けて食べているとか言っていたのに……
留学してきれいな女の子に囲まれて、口の悪いお義兄様も、さすがにお世辞を言えるようになったのだろうか?
「それでエリ、次はドレス屋に行きたいんだけど」
「ドレス工房のこと?」
私が聞くと
「そんな所だ」
「お義兄様の物を作るの?」
私が驚いて聞くと
「何故ドレス工房で俺の物を作るんだ! お前のだよ」
お義兄様の言葉に私は驚いた。
「えっ、私のドレス?」
「俺からの卒業祝いだ」
お義兄様は言ってくれたのだ。
「でも、そんなの悪いわ」
私が遠慮すると、
「俺の気持ちだから受け取ってくれ」
お義兄様はそう言うとすたこら歩いていくんだけど、
「あ、あった、あれだ」
お義兄様が指さした店は帝都でも有名なドレス工房の店だった。最近この国にも進出してきたみたいで、貴族の令嬢らが噂していた。帝都では祖父に連れられて何回か行ったことがある。でも、なんか、私にはとても敷居が高く感じられて、好きではなかった。私を見る目も何か見下されているような気がしたし。それに、私はもっと庶民的な店の方が合っているんだけど……
お母様もこの店はあんまり好きでなかったような気がする。
お母様は、この国のお友達のやっていたドレス工房のドレスが好きだったのだ。
私もこの国に来てからは何回か作ってもらっていて、とても気に入っているのだ。
ただ、今回の卒業パーティーの衣装はいくらなんでも私が婚約者なのだから、殿下から衣装が贈られるものだと思っていて、頼んでいなかったのだ。結局、殿下から、衣装はもらえなかったけれど……
最悪、帝都から持ってきた衣装を着て行けば良いと思っていたのだ。
「お義兄様。この店は高いんじゃないの?」
私が遠回しに言うと、
「大したことはないだろう」
お義兄様はそう言うとずんずん私を連れて店の中に入っていくんだけど……
店は重厚な作りで、平民の格好の私達は流石に浮いていた。
「いらっしゃいませ?」
店員が、私達の格好を見て、少し、胡散臭そうに、見てきた。
こういうところも嫌なのだ。もっともこういう所に来るのはちゃんとした衣装を着てこないといけないとは思うのだが……
「オーナーはいるのか」
お義兄様は平然とオーナーを呼びつけるんだけど……
「すみません。オーナーは初めての方にはお会いなさらないのですが」
店員は明らかに私達を怪しんでいる。こんな高価な店に普通は平民の格好では来ないのだ。ここは私達がTPOを間違えている。先程のロベール等のことをいえた義理ではなかった。
「初めてではないと思うぞ。帝都の店でこいつの衣装を頼んだのだが、届いているかなと思って」
えっ、すでに注文していたの? でも私のサイズとかはどうしたのよ? まあ、アリスとかに聞いたら判るとは思うけれど……
「判りました。お名前をお伺いしても」
店員は諦めてあたってくれるみたいだ。
「確か、テルナンの名前で頼んだと思うぞ」
「かしこまりました」
女性の店員が奥に入って行った。
「お義兄様。ここ、高いんじゃないの?」
私が再度言うと、
「何言っている。高かろうが、俺は今は伯爵だぞ。このドレス代くらいいくらでも出る」
お義兄様は言ってくれるんだけど……
「でも、いくらたくさん持っているからと言って、それは伯爵家のお金であって、最終的には領民のお金じゃない! それを私のために使うのは良くないんじゃ……」
「気にするな。このまえドラゴン退治した時の賞金を当てた」
お義兄様がとんでもないことを言ってくれるんだけど……
「えっ、ドラゴン退治って、ちょっとものすごく危険だったんじゃないの」
私が慌てて聞くと
「ちょっとむしゃくしゃしたことがあってな」
「お義兄様。本当に危険だから危ないことはやらないでよ」
私が慌てて注意した。本当にお義兄様は無茶をするのだ。学生の時も良く驚かせられたけれど。
「お前がやる前に注意してくれたらやらないさ」
「約束よ」
私がお義兄様の事を心配して言っていた時だ。
「あのう、お客様。テルナン様ではお預かりしていないそうですが」
先程の店員が顔をしかめて戻ってきた。
「お客様。何処か他のお店と間違われていらっしゃるのではないですか」
ぞんざいに店員が言ってくれるんだけ……ちょっと待って、お義兄様の前でそれやらないで! 絶対に怒りだすから……
私が青くなった時だ。
お義兄様がつかつかと女に向かって歩き出したのだ。
えっ、ひょっとして、お義兄様叩いたりしないわよね?
私はぎょっとしたのだ。女性相手にそんな事したら絶対にもう口を聞いて上げないんだから。
そう思った時だ。
二言三言話していると慌てて、店員がお義兄様に頭を下げだしたのだ。そして、二人して中に入って行ったんだけど……何なのだ?
そう訝しんだ時だ。
「ああら、これはこれは子爵令嬢のエリーゼさんではないの? あなたがどうしてこのようなお店に来ているのかしら? ここはあなたのような子爵令嬢風情が来るお店ではないわよ」
そこには会いたくない、セリーヌ・モンテロー公爵令嬢が侍女を連れて入って来たのだ。
「それとも、アンドレ様に会いに来たの? あいにく今日はいらっしゃらないわよ。先日、ここにアンドレ様が私を連れてきて頂けたの。そして、きれいな衣装をお作りいただけたのよ。本当に素晴らしかったわ。子爵家のあなたなんか絶対に作れない衣装よ」
なんか、セリーヌが言ってくれるんだけど……
ええええ! 殿下は私という婚約者がいながら、他の女に衣装作ってあげてたの! そんな非常識な事するの! まあ、私を卒業パーティーでエスコートしないなんて非常識なことする人とだから、やりかねないけれど……
それもこの帝国資本のお店で……
このお店も信じられない! 私の婚約者が王子殿下だという事は知っているはずだ。なのに、衣装を作るなんて!
私は完全に切れていた。
「これはこれは、セリーヌ様。ようこそわが店にお越しいただきました」
そこにオーナーと思しき女がもみ手をして出て来たのだ。私は帝都では何回か見たことのある顔だ。確か帝都のオーナーの娘だったはずだ。
少し睨みつけたんだけど、私は全くの無視だ。まあ、この格好だから侍女のたぐいと勘違いしたのかもしれないが……
「ああら、オーナー、この店にはどこの馬の骨とも判らぬ貧乏人の娘も出入りするのね」
セリーヌが優越感に浸りながら私の方を見てくれた。
「えっ、いえ、そのようなことは」
オーナーは驚いて私を睨みつけてきたんだけど……
「どちらの方かは存じ上げませんが、こちらは初めての方は紹介者がいらっしゃらないとお受け出来ないのです」
なんかオーナーが言ってくれるんだけど……たしかに私はお母様に比べたら平凡な地味顔だけど、自分の店の客の顔くらい覚えておけよと私は言いたかった。
「そうよね。二度と使わないから」
まあ、元々お金を私が払ったことはないし、払ったのはお義父様やおじいさまだけど……
自分の意見を言う事は言えるはずだ。
私は精一杯の嫌味を言ってやったのだ。
「まあ、使ったこともないのになんてことを言うの」
「本当に」
セリーヌの言葉にオーナーまで笑ってくれたのだ。
ふんっ、絶対に二度と使わない、私は心に決めたのだ。
「エリ、どうしたんだ!」
そこに部屋の奥からお義兄様が現れた。
「えっ、レオンハルト様」
オーナーの顔が青くなったが、もう知ったことでは無かった。
「お義兄様。申し訳ないけど、この店は無理。私帰るから」
そう義兄に言うと私はその店を飛び出すように出たのだ。
「えっ、エリ」
「ちょ、ちょっとお待ち下さい、エリーゼ様」
店主もやっと私を思い出したみたいだ。でも、もう良い。二度と使わない。
蒼白になった店主が追いかけてくるのも私は全く無視したのだ。
婚約者が公爵令嬢の衣装を作って卒業パーティーに出るつもりだと知らされり、その同じ店でお義兄様が自分の衣装を作っていたと判ったり踏んだり蹴ったりのエリーゼ。
刻々と迫る卒業記念パーテイー、果たしてエリーゼの運命やいかに?
続きは今夜です。








