観劇に行って二人して寝てしまいました
お義兄様から観劇に誘われた私は戸惑ったのだ。
何しろ、前世も含めて観劇はあまりしたことはなかったのだ。
前世では友だちに誘われてシェークスピアのロミオとジュリエット見に行ったんだけど、私にはよく判らなくって……
特に窓際でお互いを呼び合うあれ!
あんなに大きな声で叫んでいて、何故他の人達に気づかれなかったんだろう?
とか、どうでも良いことが気になって中に入り込めなかったのだ。セリフも理屈っぽいし……
結局途中で寝てしまって、信じられないと後で友達に怒られてしまったのだ……
それ以来劇は見に行っていない。
まあ、今世でも、貴族として一応一度くらい観劇しておいた方が良いかなと思って、今回は行くことにしたのだ。
お義兄様なら途中で寝ても怒られないはずだし……
基本的にお義兄様は私が危険なことさえしなければ文句は言わないのだ。
そんな私を何故か、今日も盛大にアリスは着飾らしてくれるんだけど……お義兄様相手だから何でも良いって、言っているのに!
「なに言っているんですか、お嬢様! レオンハルト様相手のデートなんですから、ちゃんと着飾らないと」
訳のわからないことを言ってくれるんだけど……
お義兄様は私を女だとは思っていないと言うと、
「だからこそ、今日のお嬢様を見て考えを変えられるかもしれないじゃないですか」
と更に訳のわからないことを言ってくれるんだけど……
「お義兄様は私にとってお義兄様なんだけど」
私がそう言うと何故か、アリスは盛大なため息をついてくれた。
そして、迎えに来たお義兄様は、私を見て、また、固まってくれたのだ!
「やっぱり変よね」
慌てて着替えようと思ったら、心持ち赤くなったお義兄様に手を引かれて、
「いや、そのままで良いから」
と言われて、外に連れ出されてしまった。
でも、連れて行かれたのは、皇族の馬車だ。
私は一瞬、ぎょっとしたんだけど、
「えっ、お義兄様、今日はお忍びではないの?」
「たまには正式なお出かけでも良いだろう?」
そう言うと、お義兄様はにこりと笑ってくれた。
そして、私をエスコートしてくれて、皇族のマークの付いた馬車に案内してくれたのだ。
今日の馬車は私の衣装についていた鷹のマーク、つまりお義兄様の専用の馬車だ。
中のクッションは当然ながらふかふかだった。
昔はお母様について慰問とかによく行ったから乗った事はあるけれど、最近はこの前シスに迎えに来てもらって乗って以来だ。
それも、何故か、お義兄様の横に座らされたんだけど、前が空いているから、前に座ろうとしたら、
「いいから俺の隣に座れ」
って言われて座らされたのだ。
劇場は王宮から馬車で20分のところにあった。
さすがに皇族の馬車の中ではキョロキョロすることも出来ずに私は静かに座っていたのだ。
珍しく……そうしたら、
「どうしたんだ? 珍しく大人しいな。熱でもあるのか?」
心配してお義兄様が聞いてくれたが、
「皇族の馬車でキョロキョロするわけには行かないでしょう!」
私が言うと、
「昔はやっていたじゃないか!」
そういえば子供の頃、お義兄様の馬車に乗りたいと駄々をこねて、乗せてもらって孤児院に慰問に行ったことがあった。あの時は子供だったのではしゃぎ回っていたのだ。
「お義兄様、私もいつまでも子供ではありません」
私はムッとして言うと、
「まあ、そうだな」
お義兄様は私を見ると笑ってくれた。
「なんだかな」
私は笑うお義兄様を睨みつけた。
でも、皇族の馬車で行くということは、皇族待遇のお出迎えがあるのではないのだろうか?
私が心配したように、劇場では、支配人始め役者一同のお出迎えがあった。
「レオンハルト殿下、この度は、ようこそ、我が劇場にお越し頂きました」
支配人が、頭を下げてきた。
「キャー、あのりりしい方はレオンハルト殿下よ」
「凄い」
「でも女連れよ」
「誰なの、あの地味な女は?」
皆キャーキャー言ってくれるんだけど。私のこともなんか地味とか言ってくれているし、それはお義兄様に比べたら地味だけど……なんかムカつく。
「お連れの方はどちらさまで」
支配人が聞いて来た。
「彼女は、今は亡き剣聖バージルの娘のエリーゼ嬢だ」
お義兄様が、私の事をエリーゼ嬢だと紹介してくれたんだけど、こんな風に紹介されるのは始めてだった。
「剣聖のお嬢様でございますか?」
そう言われても支配人はよく判っていなかったみたいだ。
お父様が亡くなったのはもう15年も前の話だし、皆忘れているのだ。
「エリーゼの母は前皇后陛下だ」
「ああ、あのサンタルで婚約破棄された」
納得したように支配人が言って、その婚約破棄の言葉にお義兄様の機嫌が極端に悪くなったのを見て、
「も、申し訳ありません。皇后様の連れ子様でした」
這々の体で支配人が言ってくれるんだけど、
まあ、確かに連れ子は合っているんだけど、お義兄様はそれを聞いても機嫌は直らなかった。
「父はエリーゼのことは自分の娘と同等に扱えと言っているのだが」
「も、申し訳ありません」
お義兄様の言葉にもう支配人は真っ青になっていた。
「あのお義兄様。私のことなどどうでもよろしいではありませんか」
「そういうわけにはいかない。父は剣聖にも、皇后陛下にも約束したのだ。必ずエリーゼの幸せを見守ると」
お義兄様はみんなに聞こえるように言うんだけど。
今日観劇に来ていた皆に言い聞かせているらしい。
でも、そんな事言っていても私は実際に連れ子だし。
私は適当なところで切り上げてお義兄様と二階の皇族の席についた。
やっぱり座席は特別席だった。
席に座る前に、皆立ち上がって拍手で迎えてくれたんだけど、私は後ろから見ていようと思ったら
前に強引に出されて、皆に手を振らされることになったんだけど、私なんかが振って良いんだろうか?
お義兄様もさっさと婚約者を決めたら良いのにと思わないでもなかった。
それが済んで劇が始まった。
でも、私もお義兄様も疲れていたみたいだ。
私はまぶたがゆっくりと落ちてくるのを感じていた。
それでも膝をつねったりして必死に起きていようとしたのだ。
でも、役者のセリフが心地よい子守唄に聞こえて……
何回か首を振って起きようとしたら、隣でお義兄様も目を瞑っているのを見て安心してしまったのだった。
安心した私はお義兄様の肩に顔を乗せて、寝てしまったのだった。
次に私とお義兄様が起きた時は盛大な終幕の拍手が巻き起こっている時だった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
完結まであと少し。果たして二人は結ばれるのか?
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