お義兄様は疲れて寝ているだけでした
「お義兄様!」
私の叫び声とともに、騎士たちが一斉に雪崩込んできた。
仁王立ちして笑っていたセリーヌは
「退けっ」
と叫んだ騎士たちに一瞬で蹴飛ばされ、踏み潰されてしまった……
「「「レオンハルト様!」」」
皆がお義兄様の周りに集まる。
「スピーー」
「お義兄様!、ちょっと、死んじゃ嫌!」
私はお義兄様に押しつぶされながら泣き叫んでいた。
私の周りにはトマスさん等が飛んできた。
「おい、レオンハルト、大丈夫か!」
やっとトマスさんが私の上からお義兄様を抱き起こしてくれた。
「スピーーーー」
誰よ。こんな時に寝ているのは!
と睨みつけようとしたらそのいびきはお義兄様だった。
「「「「えっ?」」」」」
皆がお義兄様を見る。
ポトリ、と禍々しいオーラを出していたナイフがお義兄様から抜けて落ちたんだけど……
見る限り鎧が厚くてお義兄様にほとんど刺さっていなかったみたいだ。
少しかすり傷がついている。
でも、少量の毒でも、刺されば危険なものはあると聞くんだけど……
「このナイフは眠り薬でも塗られていたの?」
「いや、それはないと思いますが、そもそも、レオンハルトは毒には耐性があるでしょう」
トマスさんの言う通りだ。お義兄様には中々毒は効かないのだ。
「じゃあなんで寝ているの?」
「単に疲れたんじゃないですか」
「「「……」」」
私達はそのトマスさんの言葉に脱力してしまった。
私達はそのまま宮殿に帰ったんだけど、それからが大変だった。
「エリーゼ! 良かった。無事だったのか」
お義父様が泣きついてきたし、
「姉上、良かった、無事だったんだね」
弟まで抱きついてきたんだけど……
「本当に姉上、食べ物でつられたらいけないってあれほど言っていたのに!」
「そうだぞ、エリーゼ。知らない人に食べ物見せられても、ついて行ってはいけないとあれほど言っていただろうが……」
この二人には私はどういう風に思われているのだろう!
「そんな事するわけ無いでしょう。子供じゃあるまいし」
私は少しムっとした。
「お嬢様、良かった」
そんな私にアリスが抱きついてきた。
「あれほど言ったではないですか? 知らない人に食べ物につられてついて行っては行けないと」
なんでどいつもこいつも私が食べ物でついていくと思っているのよ!
私はいい加減に切れだしたんだけど……
「いい加減にしてよね。私がそんな事するわけ無いでしょ。近衛の一人に眠り薬をかがされたのよ」
私は否定したのだ。
「だから食べ物を見せられてその近衛に近づいたんでしょ」
「違うわよ。お義兄様の無事を聖堂で祈っていたらいきなりやられたのよ」
私が言うと、
「なんと、神様にレオンハルト様の無事を祈られたのですか?」
「その様な慣れないことをするから」
「というか、レオンハルトは不死身じゃからの。そんな事をする必要はなかったのじゃ」
3人共めちゃくちゃ言ってくれるんだけど。
「もう3人共良いです」
私はムッとして言うと私の隣のお義兄様の部屋に専用の扉を開けて入ったのだ。
私とお義兄様の部屋は何故かコネクティングルームになっていて、部屋の間に専用の扉がついていたのだ。
昔は寝られないときとかお義兄様の扉を開けてお義兄様の部屋によく行ったんだった。
「なんだ、エリ、寝れないのか?」
「うん、隣に行って良い?」
そう私が聞くとお義兄様は布団をめくってくれたのだ。
私はよくお義兄様の横で寝たのを思い出した。
お義兄様は私が寝ると私の部屋に連れてきてくれていたのだが、偶に二人して寝てしまって翌朝、アリスのお小言を二人して聞くこともよくあった。
お義兄様を見ると幸せそうに寝ていた。
心配して泣き叫んだ私が馬鹿みたいだったじゃないとその幸せな寝顔を見て私は少しムッとした。
それで、鼻をつまんでみた。
「うーーーー」
お義兄様はうなされて首を振ってくれた。
まあ、これで許そう。
聞く所によるとお義兄様はとても無理してくれたそうなのだ。
私の誘拐の話を聞いて、東方にそのまま寝ずに駆けて通して、反乱軍を殲滅。
その後も少し仮眠しただけで、トンボ返りでここまで寝ないで駆けてきたんだけとか……
だから予想よりも帰ってくるのが早かったのだ。
「お義兄様、私のために無理してくれてありがとう!」
私はそう感謝するとお義兄様の頬にチュッとキスをしたのだ。
お義兄様の寝顔はとても幸せそうで、微笑んでくれていたのだった。
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