お義兄様は背中に呪いの剣を突き立てられました
AAAの指導者トーマスの変態野郎は、怒りのお義兄様の拳骨を受けて吹っ飛んで行った。
そして、そのまま大きな音を立てて壁に突き刺さっていた。
「エリ、大丈夫か!」
「お義兄様」
私は次の瞬間にはギュッとお義兄様に抱きしめられていた。
お義兄様を抱き返そうにも後ろ手に縛られて抱きつけない。
「お義兄様。手が痛い」
私がぼそりと言うと、
「何! エリは縛られているのか」
お義兄様の機嫌がみるみる悪くなる。
お義兄様は縄をほどこうとしてくれたが、縄は私の腕に食い込んでなかなかうまくほどけないみたいだ。
「おのれ! AAAの変態野郎め」
お義兄様が悪態をついた。
お義兄様はうまくほどこうとしてくれたが、中々うまくほどけないみたいだ。
お義兄様はだんだん機嫌が悪くなってくる。
失敗した。お義兄様は細かい作業は苦手だった……
せっかくトーマスをやっつけるのに、大聖堂一つの破壊で済んだのだ。
まあ、帝都でステンドグラスがきれいな大聖堂は人気の観光スポットだったが、その建物がほとんど全壊状態で天井からお空が見えているけれど……
でも、帝都の他の建物にほとんど被害はないはずだ。お義兄様をここまで怒らせて、この被害で済んだのは奇跡だった。
そこで、私はホッとしたのが間違いだった。
このままでは、怒り狂ったお義兄様がまた、何かやりかねない。
「俺のエリにこのようなひどい仕打ちをしやがって!」
とかぶつぶつ言って、怒りに火が付いているし、下手したらまた、帝都の危機だ!
縄をほどいてくれとお義兄様に頼んだのが間違いだった。
「お義兄様。もういいわ」
私は一応断った。
「もういいってどういう事だ? 縛られたままじゃ痛いだろうが」
ムッとしてお義兄様が言うんだけど、
「えっ、でも、お義兄様不器用そうだし、誰かほかの器用な人に外してもらうわ」
「はああああ! 何を言っているんだ。エリ、他の男に触らせるだと!」
なんか私の不用意な言葉がお義兄様の怒りに火を注いでしまったみたいだ。
何かやばい。このままいったら縄が切れないので、プッツン切れてしまったお義兄様が縄を燃やして外すって言いかねない……
「お義兄様、頼むから縄を燃やしたりしないでよ」
私は注意したのだ。しないで欲しいと!
でも、それは完全に逆効果だった。
「そうか、その手があった」
お義兄様に思いつかせてしまったのだ。
「いや、だから止めてって。私の手も火傷するじゃない! お義兄様不器用だから、微妙な調整出来ないでしょ」
「何を言っている。俺は不器用じゃないぞ! エリの手を傷付けずに縄を燃やすことなんて朝飯前だ」
しまった! お義兄様の変なやる気に火をつけてしまった。
でも、お義兄様の魔力量は半端なくあるんだけど、微妙な調整がいつも、出来ないのだ。子供の頃も火をつけようとして小屋一つ燃やしてしまって怒られていたし……
「あれは子供の頃だ。今は違うぞ」
お義兄様はそう言ってくれるが、絶対にあの性格は変わっていないはずだ。大雑把な性格は。
それに私はお義兄様みたいに恐竜の感覚ではないのだ。お義兄様の熱くないは私にとっては火傷を負うほど熱いのだ。
私は逃げようとしたのだ。
だって、燃やしたら手にやけどを負うじゃない。お義兄様は燃えても、びくともしないかもしれないけれど、一応、私は女の子なのだ。まあ、元々いろんなことしているから人魚みたいに白い手とかじゃないけれど、熱いのは嫌だし、火傷は下手したら跡が残る。
「跡が残ったらお嫁にいけなくなるじゃない」
私が言うと
「大丈夫だ。俺がもらってやる」
とかお義兄様は訳の分からないこと言ってくれるんだけど。
捨てられた犬とか猫をもらうのとは違うのだ!
「じっとしていろ!」
「いや、だから嫌だって。みんなも止めさせて」
私達の周りに来た騎士達もお義兄様と私を囲んでいるだけで、何もしてくれないんだけど……
「ちょっと助けなさいよ」
皆あさっての方を向いて無視してくれるんだけど……
私の抵抗はむなしく、あっさりとお義兄様に腕を掴まれてしまって、ぼっとお義兄様が火をつけて、
縄を燃やしてくれたのだ!
「熱い! 熱いから」
私は叫んだが、止めてくれなかった。
もう、許さない!
次の瞬間、縄は切れたんだけど、私の手も燃えそうになったじゃない!
すぐに、水を浴びせて消してくれたんだけど……
絶対にやけどした!
「もう、何してくれるのよ。火傷したじゃない」
私が文句を言うと
「いや、エリが暴れるからだろ」
「だって、お義兄様は不器用でしょ」
「誰が不器用だ。細かい作業が苦手なだけだ!」
「それを不器用って言うのよ」
「お前、ここまで不眠不休で駆けて来た俺にそれを言うか」
「でも、手を火傷したじゃない!」
私はもう半泣きだった。
でも、私はこんな事で愚痴愚痴言うべきでは無かったのだ。
私達はまだ、動ける敵がいるのを忘れていたのだ。
ブスッ
何かお義兄様の後ろで音がした。
「「れ、レオンハルト様」」
周りの騎士達が慌ててこちらに駆けて来た。
私は何が起こったのか理解できなかった。
「エリ」
そう言ってお義兄様が私に向かって倒れて来たのだ。
「えっ、お義兄様!」
私はびっくりした。パニックになったのだ。
私は倒れて来たお義兄様を受け止めきれずに、そのまま倒れ込んだ。
そのお義兄様の後ろには
「はっはっはっは! 呪いの剣で刺された恐竜皇子もこれで終わりよ!」
気の狂ったようにして笑うセリーヌが立っていたのだ。
そして、お義兄様の背中には禍々しい気配を放っている短剣が突き刺さっていたのだ。
「お義兄様!」
私の金切り声があたり一面に響いたのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
呪いの剣を突き刺されたお義兄様の運命や如何に?
続きは今夜です








