捕まったところは大聖堂の地下室でした
私は夢を見ていた。
場所は戦場みたいだった。
お義兄様がレッドに乗って凄まじい勢いで駆けていた。
鬼気迫るものがあった。
私にはお義兄様が怒り狂っているのが判った。
どうしたんだろう? 何に怒っているんだろう?
そして、お義兄様の周りには、誰もいなかった。お義兄様が全速力でレッドを走らせているのだ。
レッドは神馬の中の神馬なので全力で駆けたら、ついてこれる馬なんていないのだ。
当然一人で突っ走ることになる。
あれだけ言ったのに、またしてる!
私はむっとした。
あれだけ味方を置いて一人では突っ走らないと約束したのに!
そんなお義兄様の前に大軍が現れた。
そして、その大軍の中にお義兄様がたった一騎で突っ込んでいくのだ。
ただ一人で……
「ウォーーーーー」
雄叫びを上げながら……
待ち構える敵の大軍の中にただ一人で突っ込んでいくのだ。
そんなの無謀だ!
「お義兄様! 止めて!」
私は大声で叫んでいた。
はっと目を覚ました。
床が見えた。
白い床だ。
「うっ、痛い」
起き上がろうとして後ろ手に縛られているのが判った。
「目を覚ましたのね」
上から声がかけられた。それはどこかで聞いた事のある声だった。
しかし、縛られているのでその声の方を見られない。顔を向けようとして無理だった。
「ふん、無様なものね」
そう言うと、女が髪の毛を掴んで起こしてくれたのだ。
「痛い!」
髪の毛が抜けそうでとても痛かった。
目の前に、とても見知った顔があった。
「セリーヌ!」
そう、そこにはセリーヌ・モンテロー元公爵令嬢がいたのだ。
確か、公爵家はおとりつぶしになったはずだ。なんでセリーヌがここにいるんだろう?
それも私の髪を掴んで……本当に痛いのだ。
「痛いわ。離して!」
私はセリーヌに頼んだ。
「あっそう」
セリーヌはあっさりと髪の毛を離してくれた。
でも、私を支えるものがなくなって私はそのまま床面に激突したのだ。
バシン!
「痛い!」
まあ、大した距離は無いけれど、衝撃が体中に走った。
私は顔も少しうっていた。
痛い!
私は涙目になった。
「ふんっ、どう、囚われた気分は」
セリーヌがそう言って笑ってくれたのだ。こ、このセリーヌ。なんてことしてくれるのよ!
私は怒鳴り散らしたかった。でも、ここは我慢だ。
「なんでこんな事するの?」
私は一応冷静に聞いていた。
「はあ、なんでですって」
でも、その言い方も悪かったみたいだ。
「うっ」
お腹に衝撃が来た。
思いっきりセリーヌに蹴られのだ。
「よくもそんな事が言えたわね。あんたのせいで私がどうなったと思っているの? お父様は殺されて、私達は平民に落とされた。それがどんなものか判っているの」
セリーヌは聞いてきたけれど、
「何言っているのよ。サンタルでは私はほとんど平民として生活してきたわよ」
私が言い返すと、
「そうだったわね。あなたは元々身分卑しい子爵家の出だものね」
セリーヌが笑って言ってきたけれど、子爵家でも一応貴族なのだ。公爵家とは比べ物にならないけれど、平民じゃない! まあ、ここでセリーヌと喧嘩してもまた蹴られるだけでいい目には会わないだろうから黙っているけれど。
「自分が出来るからって人にさせるなんて、よくもしてくれたわ。子爵家と公爵家では違うのよ」
なんか見当違いなことを言っているけれど、そこは無視した。
「そんな時よ。あんたら帝国にひどい目に合わされた人たちが作ったAAAという、組織にスカウトされたのよ」
「AAAに!」
聞いたことはあった。反帝国組織だ。帝国に滅ぼされた貴族の末裔とかが集まって作った組織で、お義兄様の実のお母様がそのテロで殺されたと聞いていた。
「そうよ。だから、あなたももう終わりよ」
そう言うとセリーヌは高笑いをしてくれたのだ。
「どう? 囚われの身になった気分は、気持ちが良いでしょう」
そう言うと靴で私の顔を踏みつけてくれたのだ。
汚い靴で踏むなと余程言いたかった。
が、ここで下手な刺激をするのは良くない。
「セリーヌ、そのくらいにしなさい」
そこに男の声が聞こえた。
「はい。トーマス様」
セリーヌは足を退けてくれた。
そして、私を一応座らせてくれたのだ。
その私の眼の前に私の見知った顔があった。私の目は驚愕に開かれていた。
「お久しぶりですな。エリーゼ・ロザンヌ様」
その男はにこやかに挨拶してくれた。
「トーマス・シュナイダー卿」
そう、そこには帝都の教会の大聖堂のトップ、トーマス・シュナイダー卿がいたのだ。
「あなたがAAAのトップだったの」
なんで帝都の教会のトツプがAAAにいるの?
私には理由が判らなかった。
「ほう、そこまで判りましたか。それでは生かして返すわけには行きませんね」
男は笑って言ってくれた。まあ、教会なんてめったにこないからあまり知らないが、その濁りきった瞳をギラつかせた男の顔はあまり見たいものではなかった。
それに元々顔をさらした段階で生かして返すつもりなんてないんだろう。
「私を捕まえてどうするつもりなの?」
「なあに、あなたには恐竜皇子をおびき出す、囮になってもらうんですよ」
「お義兄様をおびき出す?」
「そうです。今東方で反乱が起きています。あなたのお兄様は鎮圧に向かわれています。そこへあなたの誘拐の報が入ればお兄様は心配して帰って来られるでしょう。
そして、あなたを餌に恐竜皇子をおびき出すんです。
あなたさえ人質に取っていれば恐竜皇子は手も足も出せないでしょう。
恐竜皇子はここで我々に殺されるしか無いのですよ」
トーマスはそう言うと高笑いしてくれた。
なんかトーマスはとんでもないことを言ってくれるんだけど。
「お義兄様があなた達にやられるわけないじゃない!」
私がきっとして言い返したのだ。こんな所で、そんな事は言ってはいけなかったのだ。
「黙れ、小娘」
次の瞬間、凄まじい衝撃が私の顔に走った。
私はトーマスに顔を殴られてふっとばされていたのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
捕まってしまったエリーゼとお義兄様の運命やいかに?
続きは今夜です。
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