AAAトムの視点3 反乱を先に起こさせて、第一皇子が鎮圧に向けて帝都を出た所で連れ子の小娘を誘拐することにしました
俺は両親を残忍な帝国の皇子に嬲り殺しにされて以来数十年、ついにその帝国に仕返しするチャンスを得たのだ。長年恨みに思っていたこの恨みの全てを叩きつけてやる。俺は心に決めたのだ。
確かにここ数年間は帝国に長年抵抗していた東方10カ国の大半を帝国に占領されるという、とんでもない事態になっていた。しかし、見方を変えれば帝国を守る領土が増えた分、帝国の戦力が分散されたとも言えるのだ。すなわち各個撃破しやすい。
帝国の全軍20軍のうち、東方には現在6個軍団がいる。それも4皇子のうちの2皇子がそこにいるのだ。
帝国は皇帝を除けば恐竜の第一皇子が最強で、後は占領行政の第二皇子と実際の内政面の第三皇子が取り仕切っていたが、戦力的に大したことはない。
皇帝はかつては強力なカリスマがあったが、15年前に東方で負けてからはそのカリスマ性は薄れていた。
一番のネックは東方10カ国連合軍を実質1人で壊滅させた第一皇子だ。かの皇子の強さは半端ではなかった。魔術剣術ともに世界トップクラスだ。さすが野蛮な帝国の長男と言えよう。
しかし、その第一皇子のアキレス腱が、か弱い前皇后の連れ子だというのが笑えるところだ。
俺も遠目に見たが、あんな胸の無いお子ちゃまのどこが良いのかと驚くほど、貧相で地味な顔立ちなのだ。
その連れ子を誘拐して人質にし、第一皇子の足かせにする。第一皇子の行動を制限出来れば、我らにとってこれ程優位になることはない。
今回、その連れ子を誘拐して、第一皇子を誘い出し、第一皇子を殺す。これが最大の目的だった。
その上で第2段階として、東方10カ国に反乱を起こせば、第一皇子のいない帝国軍など、赤子の手をひねるようなものだ。上手く行けば残りの2皇子を始末できる。こうなればしめたものだ。
最後は皇帝さえ殺せば、残りはまだ幼い第四皇子だけだ。上手く行けば帝国は内乱状態に突入して崩壊する可能性さえあるのだ。
今回は万全を期した作戦のはずだ。
その為に15年間準備してきた諜報網の全てを使ったのだ。
そして、皇后の連れ子の誘拐は春の宮廷舞踏会の時に合わせて行うことにした。
春の宮廷舞踏会の参加者は多い。業者や使用人の数まで入れれば外部の人間だけで1万人超える規模の人間が参加するのだ。どうしても警備が手薄になるはずだった。
今回、我々は帝都にいるAAAの100名強の人員を当てることにした。
最近ガサ入れが多くなって人員の不足が目立ってきていたのだが、残りの大半の戦力を動員したのだ。
完璧なはずだった。
宮廷にはこの15年かけて侍女やコック、清掃員、騎士として約30名もの人員を潜り込ませていたのだ。それも一人ずつ別々にだ。それだけ時間をかけてきたのだ。
多くの者が帝国に親兄弟を殺された者だ。
今回の誘拐にはそのうちの20名を当てた。
確実に成功するはずだった。
それが失敗してしまうなんて思ってもいなかった。実質的に誘拐する実行部隊は手練れの5名を選んだのだ。
我々が想定したいくつかのうちの作戦場所の一つのトイレに連れ子が侯爵令嬢と入ったので、別働隊が、そのトイレを警備していた騎士達を他の事件が起こったと誘い出したのだ。その隙に警備のものが誰もいなくなったトイレに実行部隊を突入させた。
そして、連れ子を縛ってワゴンの中に閉じ込めて宮廷外に連れ出す予定だったのだ。
しかし、どうしてか判らないが、実行部隊はトイレから出て来なかったのだ。
あのか弱そうな、連れ子と侯爵令嬢しかいないのを確認していたにも関わらずだ。
そして、第一皇子が飛んできたのだ。
作戦の失敗に気づき、逃げようとした見張りの部隊もほとんどが捕まってまってしまった。
唯一逃げ出した見張りの侍女によって失敗が判明し、搬送用の馬車が慌ててアジトに戻って来た。
最悪なことにその馬車がつけられていたのだ。
馬車が帰ってきた日の夜、騎士団が突入してきた。
そのアジトが占拠され30名以上の者が捕まってしまったのだ。
帝都のわが組織は大打撃を食らってしまった。
我らは作戦の変更を余儀なくされたのだ。
そして、第2段階として準備していた10カ国の反乱はいつでも起こせるようになっていた。
我らが第一皇子の暗殺に成功するか、重症を負わせれば即座に決起できるようになっていたのだ。
そして、困ったことに10カ国からは帝国の追及が激しくなってきて、あまり待てないと言ってきたのだ。
俺は決断を迫られた。
反乱を起こさせて第一皇子が鎮圧に向かうと同時に、連れ子を誘拐して第一皇子を引き返させる。
第一皇子を帝都に足止め出来ればそれに越したことはないのだ。
第一皇子さえいなければ帝国軍など大したことはない。第一皇子を足止めしている間に10カ国が再び独立できればそれでよいのだ。
ただ、ネックとしては第一皇子が連れ子のことを見向きもせずに、そのまま鎮圧に向かってしまうことだけが懸念事項だった。が、そうなったらなったで、連れ子の使い道はいろいろあろう。
チエナに人質として売り払っても良いのだ。
それに、あの第一皇子の執着ぶりから言って絶対に引き返してくるはずだった。
それに、第一皇子が鎮圧に向かっていなくなれば、宮廷の警備も穴が開いて、誘拐しやすくなるはずだ。
俺達はそれに賭けることにしたのだ。
上手く行けば、俺の両親がされたように、第一皇子の眼の前で泣き叫ぶ連れ子を切り刻んでやって殺してやっても良いのだ。
俺はニヤリと笑った。
やっと父と母の仇を討つ時が来たと。
心の中で両親に伝えていたのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
エリーゼの運命やいかに?
続きは今夜です。








