パーティー会場の真ん中で、お義兄様にキスされました
「レオンハルト様!」
アガットはお義兄様を見て喜んで叫んだのだ。
お義兄様の氷のような視線をものともせずに……さすが図太いファッションお化け! 私はその度胸の良さにというか、鈍さに感心した。
後でそれをセッシーに言ったら、「本当だ。鈍さはエリー並ね」と、なんかとんでもないことを言ってくれたんだけど、意味がわからない!
「私はアガットみたいに図太くはないわよ」
と言ったら「どっこいどっこいじゃない」と返されてしまって、横にいたアリスやセドリックにまで頷かれてしまったんだけど……解せぬ!
「この娘がレオンハルト様の文様を勝手にドレスにつけていますの! レオンハルト様の了解も得ずにそんな事をしたら、レオンハルト様に叱られるって皆で注意していたところなんです」
そこまで平気で言ってくれたのだ。
「何を言っているかよく判らないのだが……」
相も変わらずお義兄様の声は氷のように冷たかった。
私がお義兄様に言われたら、絶対に震え上がっていた。それほどの冷たい声と視線なんだけど、図太いアガットはびくともしていない。
「だから、この娘がレオンハルト様の文様を勝手にドレスに刺繍しているのです」
アガットは勝ち誇っていっているんだけど……
「何を言っているのだ。カルディ侯爵令嬢、はっきり言っておく。このエリが着ている衣装は私がエリに贈ったのだ」
「えっ、レオンハルト様が!」
お義兄様の声にさすがのアガットも驚きのあまり、固まっていた。顔も心持ち青くなっている。
「そんな、今まで誰一人衣装を贈られた事のないレオンハルト様が衣装を贈られたなんて……それもこんな貧相な娘に」
ぶつぶつアガットは呟いていた。最後は許せない暴言を吐いてくれたんだけど。誰が胸が無いのよ! 許せない!
私がきっとしてアガットを睨みつけた時だ。
「そうだ」
お義兄様まで頷いてくれたんだけど、私は怒りのあまり思わず思いっきり足を踏んずけてやろうかと思った。
「それだけエリーゼの事を俺は大切にしているという事だ」
お義兄様が言ってくれた。さすがの私もそう言われたら、踏めない! 足を踏むタイミングを失してしまった。
「まあ、そうなんですのね」
しかし、アガットは何か思いついたようだ。また、顔に赤みが戻っていた。しかもろくでもないことを考えてくれたみたいだ。
「さすがお優しい、レオンハルト様ですわ。身寄りのないこの娘を憐れまれたのですね。しかし、レオンハルト様のお優しい行為はこの娘の為になるのですか?」
「何が言いたいんだ、カルディ侯爵令嬢?」
早速話題を変えてきたアガットにお義兄様の視線がまた冷たくなった。
「本来、あなた様の継母の連れ子に過ぎないこの娘にそこまでのなさけをかけられることの意味があるのですか?」
「いい加減にしろ!」
お義兄様の大声が響いた。
会場中にお義兄様の罵声が響いたのだ。
さすがのアガットもその声に飛び上がったのだ。
「侯爵令嬢風情がエリーゼを貶める発言をするな。エリーゼは剣聖バージルの血を引く唯一人の娘だ。我が、育ての母上、今は亡き皇后陛下の血も受け継いでいる。血筋で言えば貴様よりも余程尊かろう」
お義兄様が言ってくれるんだけど……
「な、何を仰るのです。レオンハルト様。我がカルディ侯爵家は帝国建国以来の文官の血筋。そしてずうーっと帝国に忠誠を誓ってきたのです」
「それを言うのならばエリーゼは帝国の建国以来の武の名門ロザンヌ公爵家の血を引き継いでいる」
「しかし、エリーゼの母親は」
「貴様がエリーゼを呼び捨てにするな! エリーゼ・ロザンヌは剣聖より伯爵位を継いでいる。無位無官の貴様が軽々しく呼ぶな」
「な、なんですって」
さすがのアガットも驚いたみたいだ。
開いた口が驚きのあまり開きっぱなしになっていた。
そう、伯爵位はいらないって言ったのに、お義父様が強引に私に継がせたのだ。
「それと、モイーズ・トローム。お前はローレンツの婚約者であろうが! 何故エリーゼを擁護しない! 今日の先ほどの貴様の発言、ローレンツが知ればただではすまぬと思うぞ」
お義兄様が言ってくれたが、
「えっ、そんな、殿下」
モイーズが戸惑って声を出そうとしたが、氷のようなお義兄様の視線にそれ以上一言も話せなくなっていた。
「それと、その方らにもはっきりと申し伝えておく。エリーゼは一生涯俺が擁護する。だからこそ、この衣装なのだ。俺の持てる全ての力をもってして守るのだ。もし、エリーゼに手を出すものがいれば、そのものの生命の保証はしない。その身に覚え込ませておくことだな。侯爵令嬢」
お義兄様が笑って言ってくれた。しかし、目は笑っていなかったのだ。
「まあ、鈍感なその方の事だ。これだけ言っても俺がどれだけエリーゼを大切にしているか判るまい。身で示すしかないようだ」
お義兄様はそう言うと、私の前にかがんでくれたのだ。
お義兄様の見目麗しい顔が近付いたと思ったら、なんと、私の唇にお義兄様の唇が重なったのだ…………
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
まさかのキス。
続きは今夜です。
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