ドレス工房のオーナーをお義兄様とお祖母様が断罪しました
お祖母様がドレス工房の人を連れて来たので、私達は慌てて、お祖母様のところに行くことにしたのだ。
「セッシーはどうするの?」
「私は帰るわ」
「えっ、もう帰るの?」
私がセッシーの言葉に慌てて聞き返した。セッシーとは三年ぶりなのだ。まだ何も話せていないのに!
「だってレオンハルト様がいらっしゃるなら、お邪魔になると思うもの」
セッシーが訳の分からない事を言うんだけど……
「えっ、別にお義兄様はいつでも会えるから気にしないで良いのよ」
私が言うと、二人で何か話しだしたんだけど……
「ほら、レオンハルト様。エリーには全然響いていないじゃないですか!」
「いや、やはりエリは鈍くてだな……」
「ちょっとそこ、聞こえているわよ。誰が鈍いのよ!」
私がムッとして言うと、
「こっちの話よ。レオンハルト様、本当にがんばってくださいね!」
「ああ、すまんな」
なんか二人で納得しているんだけど、私は全然納得できない!
「それより早く行かなくてよいの?」
セッシーに言われて
「そうだった」
私達は慌ててお祖母様のもとに向かったのだ。
お祖母様は気が短いのだ。
「エリーゼ!」
「お祖母様!」
部屋に入るなり私はお祖母様に抱き締められた。
「エリーゼ、久しぶりだね。大きくなって」
お祖母様は私を慈愛のこもった目で見てくれた。
「お祖母様もお元気そうで」
私がそう言うと、
「まあ、年だけどね。何とかやっているよ。お前も今回は色々大変だったね」
「ごめんね。お祖母様。いろいろと失敗してしまって」
私が謝ると、
「今回の件は本当にサンタルの奴らが悪いよ。お前は何も悪くない」
私の横でお義兄様がウンウン頷いているんだけど。
「そもそもレオンハルト殿下がついていながら、この様になるなんておかしくないですか?」
お祖母様がお義兄様に文句を言うんだけれど……
「申し訳ありません。お義祖母様」
お義兄様はお祖母様に謝りだした。
「まあ、あなたには今回の件は良かったかもしれないけれど、婚約破棄されてエリーゼは傷物になったのですよ」
お祖母様が言い出した。
「全責任は私が取らせて頂きますので」
「私はあなたを信頼していますからね」
「お任せ下さい」
ちょっとそこの二人、何を私のわからない話をしているのよ。
私がムッとして二人を見ると、
「エリーゼ。殿下の仰ることをきちんと聞くのですよ。殿下に全てお任せしておけば、何も問題はありませんからね」
「でも、お祖母様。お義兄様にはお義兄様のご都合もお有りでしょうから」
私はいつまでもお義兄様の世話になるのは良くないと暗に言ったのだが、
「殿下。孫はまだこの様に申しておりますが……」
「お義祖母様、もうしばしお待ち下さい。必ず納得させますから」
「よろしくお願いしますね」
この二人は一体何の話をしているんだろう?
いい加減に聞きたくなってきた私だが、その前に、お祖母様の横にいるドレス工房『リエド』のオーナーが目に入ってきた。
「そうだった」
お祖母様は私の視線を見て気付いたようだった。
「実は、私が使っているドレス工房の『リエド』のオーナーが、サンタル王国でそそうをしたから謝りたいって言って来たから連れてきたんだけれど……」
「エリーゼ様。この度はサンタル店の者が大変失礼したと娘から連絡がありまして、誠に申し訳ありませんでした」
後ろにいた、リエドのオーナーが謝ってきた。
でも、すぐに顔を上げてくれたんだけど……
謝る気があるんだろうか?
それに謝るところはそこじゃない!
「なんでも、新しく雇った店の者がエリーゼの顔も知らずに色々と失態をしでかしたって聞いたんだけれど、まあ、エリーゼの怒るのも無理はないけれど、新人のやった事だったら許してやっても良いんじゃないかと……」
お祖母様が言ってくれるが、私もお祖母様の顔を立てたいところだけど、許せない事もある。
「新人ですか? 確かに新人はお義兄様の事を知りませんでしたけれど」
「そうだな。俺の事は知らなかった」
「申し訳ありません」
今度は青くなってオーナーはお義兄様に謝っていた。私と違ってお義兄様を知らないのはまずいと思ったんだろう。
「でも、俺がお前の店を二度と使わないと決めたのはそこじゃない」
「えっ」
オーナーはお義兄様からはっきりと二度と使わないと聞いて、目を見開いていた。そこまで考えていなかったようだ。
「お前の所の娘がエリーに対して許せないことをしたからだ」
「はい。娘様からは一見様はお断りだとはっきり言われました」
私はオーナーを見てはっきりと言ってやったのだ。
「えっ」
私の言葉にオーナーが固まった。ちゃんと聞いていなかったみたいだ。
「何だって、リエド、話が違うじゃないか。お前の娘は私の孫の顔も知らないのかい」
お祖母様が怒り出した。
「いえ、公爵夫人様、娘は勘違いをしていたんだと」
苦しい言い訳をオーナーは始めたんだけど、
「それに私よりもサンタルの公爵令嬢の方が大切だとはっきりと仰っていらっしゃいましたけれど」
「な、何だって!お前の所は辺境の公爵家の方が我が家よりも大切だと言うんだね」
お祖母様が完全に切れた瞬間だった。
「いえ、そのような事は決してございません」
マダムも必死に言い訳しようとしてきたが、
「エリは当時、サンタルの王子と婚約していたのだぞ。その王子が公爵令嬢の服をその店に頼んできたら普通は断るのが筋ではないのか」
お義兄様が当然の事を指摘したのだ。
「な、何だって、リエド! お前の所はそんなことまでしてくれたのかい。我が可愛い孫娘の婚約者の浮気相手の衣装を作るなんてどういう事だい」
「いえ、公爵夫人、それは何かの手違いで」
「手違いも何もないだろう! そんな事をするなどもう二度とお前の所とは付き合わないから」
「そんな、公爵夫人様。そこを何とか」
「ふんっ、最近クラパレード公爵家にも出入りしているそうじゃないか。向こうは可愛い娘がいるんだろう。我が家はこんな婆しかいないから、今後はそちらに贔屓にしてもらえば良いだろう」
「そ、そんな、あそこの令嬢は謹慎処分を受けたところで」
「そんな事は知ったことじゃないわ」
お祖母様の言葉にオーナーは蒼白になって何度も頭を下げていたが、お祖母様はオーナーが土下座しても許すことはなかったのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
次はお義兄様とのデート? です。果たして二人は甘い感じになるのか?
今夜をお楽しみに!








