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お義兄様に助けてもらいました

私は構えていたけれど、いつまで経ってもゲンコツは落ちてこなかった。


「貴様、何をしている!」

そして、氷のような冷たい声が響いたのだ。


そこには背の高い金髪碧眼の精悍な顔立ちで帝国の軍服を着た貴公子が、男の手を押さえてくれていた。

私はその貴公子を見た瞬間固まってしまった。


「邪魔をするな! 俺は帝国の貴族だぞ」

男が後ろを振り向いて叫んだ。


「それがどうした?」

貴公子は冷たい声で言い放っていた。


「あなた、この方の制服は帝国の士官の制服よ」

連れの女が慌てて言った。

「何だと」

男は慌てて制服の貴公子を見た。


「これ以上事を荒立てると憲兵に突き出すが」

貴公子は冷たく男に言い放ったのだ。


「くそっ、覚えておけよ」

男は私に言い放つと慌てて出て行ったのだ。女が慌てて後からついて行く。


「憲兵に突き出した方が良かったか」

貴公子は男の後ろ姿を見ながら呟いていた。


「皆さん。帝国の人間がお騒がせした。お詫びとして今日の料理代金は全て私が持つ。好きなだけ飲み食いしてくれ」

貴公子が男前な発言してくれた。


「えっ!」

「本当に?」

「兄ちゃん、太っ腹!」

貴公子の言葉に歓声がわく。


「大丈夫か…………お前、エリじゃないか!」

貴公子は私を見て固まっていた。


「お義兄様!」

そう、彼は一番上の義兄だったのだ。

な、何で義兄のレオンがここに!


私は後ろで唖然とこちらを見ていたアリスとセドリックに白い目を向けると、二人共必死に首を振っていた。彼らが呼んだのではないらしい。


「ちょっと来い」

私は強引に義兄にレストランの柱の陰に連れて行かれたんだけど……


義兄にはいろいろと黙っていたのに……

手紙では何もかもが順調にいっている風に誤魔化していたのだ。


仕方がないから私は開いている個室にレオを案内したのだ。


「で、どういう事だ、エリ!」

なんかレオ義兄様は怒っていた。これはとてもやばいやつだ。

私はニコリと笑ったのだ。こういう時は笑って誤魔化すしかない。


「笑ってごまかせるとでも」

兄が更に氷のような冷たい声で言ってくれるんだけど……

私、命なくすかも……


でも、ここは笑顔で誤魔化すのだ!


「嫌だわ。お義兄様。これも社会勉強のうちなんです」

私は精一杯笑顔で答えていた。


「何が社会勉強だ! どういう事だ、エリ! 子爵家のタウンハウスにお前を訪ねたら、いきなりいないと言うではないか。その使用人がこのレストランならいるかも知れないと言うから来てみたらお前が給仕なんてしているし、どういう事なんだ、アリス!」

私が答えないからか、今度は矛先を私の侍女に変えてきたんだけど。


「申し訳ありません。レオンハルト様。私がついていながらこのようなことになってしまって」

「アリスは関係ないわ。私が無理やり頼み込んだのよ」

仕方無しに私はアリスを庇った。


「どういう事なんだ。エリ。頼み込んだというのは」

お義兄様は今度は私の方を向いた。


「いえね、私って、実のお父さまが爵位も持たずに戦死してしまったから基本は平民じゃない」

「えっ、何を言っている? お前は今は子爵ではないか」

私の言葉に義兄は言うんだけど、

「でも、それは無理やりこの国の子爵だった伯父様から爵位を取り上げたんでしょう」

「そんな話は聞いていない。お前の祖母が祖父がなくなったから、お前に子爵家を継がせて第一王子に嫁がせると聞いただけだぞ。それにお前が嫁げばその叔父とやらが爵位を継げばいいだけではないか」

義兄はそう言ってくれるけれど、まあ、そのとおりなんだけど、今のままでは私がアンドレ第一王子と結婚して王妃になるのは中々難しいと言わざるを得ないのだ。お義兄様への手紙ではそんな事は噯にも書いていないけれど。


「まあ、そうならない可能性もあって、将来的に平民になるかもしれないでしょう。その時に手に職をつけておけば良いかなって」

私は真面目に答えたのだ。


「アリス、セドリック、何かエリは勘違いしているようだが貴様らがそう思い込ませたのか?」

義兄は二人を氷のように冷たい声で責めだしたんだけど。

「いやいや、滅相もございません。エリーゼ様には何回もお諌めしたのですが、聞いて頂けず」

「元々こうと決められたらそれに向けて突っ走られる性格ですから」

ちょっと待った。なんか二人にめちゃくちゃ言われていない?


その言葉に義兄は頷いているんだけど、ちょっと頷かないでよ、お義兄様!



「それで給仕をしているのか?」

頭を抱えたまま義兄が言ってくれるんだけど、


「全て社会勉強なのです。面倒くさい礼儀作法マナーとか貴族のたしなみよりは余程実践的かなと」

私が言うと兄は更に頭を抱えてくれたんだけど、後ろでアリスとセドリックも同じ様に頭を抱えているのは何故?


「いや、たとえ、お前がこの国のクソ王子と婚姻しなくても平民落ちすることはないぞ。父が伯爵位くらいならいつでも準備すると言っているし、お前の祖父も公爵家に戻って来いと言っている」

「そのようなお気遣いはとても嬉しいのですが、これまでもお義父様やお祖父様にはとても良くしていただいています」

「いや、しかし、エリも父や俺達にとても良くしてくれたではないか。これはお前への当然の褒美だと思うぞ」

「いえ、お義兄様。もう私は十分に頂いております。これ以上の事をして頂くのは心苦しくて」

「ふんっ、相も変わらずエリは頑固だな」

「お義兄様こそ」

私達は目を合わして睨みあったのだ。


そして、どちらともなく吹き出していた。


私の後ろではアリスとセドリックが、ホッとしていた。

「アリス、セドリック、何を安心しているのだ。貴様らには後でゆっくり、何故こうなったのか聞かせてもらうからな」

「お義兄様! 二人への命令権はお義兄様にはないはずよ」

私が義兄にムッとして言う。


「いや、エリ、俺は兄としてだなお前の事が心配で」

「だめです。私のいないところで二人に話しかけるのは禁止です。もし破ったら絶交ですからね」

「いや、そんな」

義兄は私の言葉に絶句していたが、私も譲れないところもある。お義兄様にはこれくらい脅しておかないと本当に言うことを聞いてくれないのだ。


「良いわね、二人とも!」

「いえ、しかし」

「セドリック!」

「はい、判りました」

何か言いたそうな二人にも私は釘を刺したのだった。



ここまで読んで頂いてありがとうございます。

これから卒業パーティーに向かって話はどんどん進んでいきます。

明日は2話更新予定です


私の初書籍の案内がこの10センチくらい下に。買ってね(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾

更になろう内で2番人気『モブですら』、3番人気『皇太子に婚約破棄されました』への作品リンク貼ってます。

この話の全てのページがそうなっていますので、よろしければお読み下さい。

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

次の話

『悪役令嬢に転生させられた地味令嬢ですが、ヒロインの方が強くて虐められているんですけど……』https://ncode.syosetu.com/n7240kb/


この話の

次の作品はこちら

『婚約破棄されたので下剋上することにしました』https://ncode.syosetu.com/n0747ju/


この話が電子書籍化されました

表紙画像
1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■【3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】
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表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
2巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


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3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

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ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

この話のスピンオフはこちら


『【なろう500万字達成記念】知らない男から婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの学園を止めさせると叫びだしたんだけど』
https://ncode.syosetu.com/n3697jc/



私の最新作はこちら

『男爵令嬢に転生したら実は悪役令嬢でした! 伯爵家の養女になったヒロインよりも悲惨な目にあっているのに断罪なんてお断りです』https://ncode.syosetu.com/n7673jn/


アルファポリスのレジーナブックスにて

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2023年6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
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手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

なろうの掲載ページ『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

第一部は書籍化の規約上3分の1残して後は他者視点で繋いでいます
「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。

私の

2番人気の作品はこちら

『モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~』https://ncode.syosetu.com/n8311hq/

私の

3番人気の作品はこちら

『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』https://ncode.syosetu.com/n8911gf/

この話の

次の作品はこちら

『王太子に婚約破棄されて両親を殺した野蛮王に売られそうになった時、白馬の騎士様が助けてくれました』https://ncode.syosetu.com/n6878ix/


前の前の作品『傭兵バスターズ』元剣聖と悪役令嬢率いる傭兵団の冒険活劇https://ncode.syosetu.com/n3697jc/


この話の

前の作品はこちら

『天使な息子にこの命捧げます』https://ncode.syosetu.com/n9455ip/

― 新着の感想 ―
[良い点] レオ義兄様の登場はとても心強かったです。 義兄様かっこいい♪ 笑顔で無理を押し通そうとするエリーゼも可愛いですね。 エリーゼの笑顔ならなんでも誤魔化せる! …はず?(笑
[一言] ここまで読んで感じたのは、エリーゼは架け橋になりたいと頑張っているつもりのようだけど、それが自分が舐められる事態に繋がっている事が解っていないんだな、と。 大事にしたくないとか言ってるけど、…
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