お義兄様視点3 母上が流行り病で亡くなって泣く妹を慰めるために抱きしめました
俺は初めて、学園の卒業パーティーを心より楽しめた。
これも全てエリのお陰だった。
でも、エリは後で
「お義兄様が他の人と踊らないから、私が王女様や侯爵令嬢に睨まれたじゃない」
と文句を言ってきたが、
「元々二人の前で俺にケーキを食べさせたのはお前だろう」
と反論すると、
「だってあの王女、私の前ででかい胸を見せびらかせるんだもの。無いものの苦労を知らないのよ。本当に失礼しちゃうわ」
ブツブツ文句を言ってくれていた。
まあ、俺としては隣国の王女と仲良くなる気もないし、それで問題はなかった。
「でも、レオンにエスコートされたエリはとても可愛かったわよ」
と母上が言ってくれたが、それは俺も認めるところだった。
「お兄様酷いよ。俺もエリと踊りたかったのに、ずうーっとエリと踊りっぱなしで」
俺のすぐ下の弟で1年生のローレンツが文句を言ってきた。
「まあ、今日は俺の卒業パーティーだからな」
俺はドヤ顔で言ってやったのだ。
「レンツお義兄様。良ければ来年は踊ってあげるから」
エリのその言葉に俺は少しムッとしたのだが、その理由は良く判らなかった。
「じゃあ、エリ、俺もね」
「姉様。僕も」
三番目のマルクスと六歳の一番下の弟のシスまで言い出して話はグダグタの中で適当に終わった。
そして、それは俺達の幸せな最後の食卓だったかもしれない。
そのすぐ後だ。帝都に流行り病が流行りだしたのは。
流行り病が流行りだしたと思ったら、あっという間に皆その病にかかっていったのだ。
俺等もかかったとは思うのだが、バカは風邪引かないのことわざ通りに、脳筋3兄弟の俺達や親父はびくともしなかった。
そんな中、母上が突然倒れたのだ。
一番小さい弟のシスが体調を崩していて、母上はしばらくそのシスの看病をしていた。
そんな中、母上がいきなり高熱を出して倒れたのだ。
母上はどちらかと言うと体がそんなに強くない。
母上は子どもたちに病気が移らないように直ちに自らを隔離したのだ。
シスの面倒をよく見ながら、それまでは元気にしていたエリも青くなった。
「単なる風邪かもしれないし、大丈夫だから」
俺はエリを慰めたが、エリはとても不安そうだった。
「お義兄様、お願いだから、エリが寝るまで傍にいて」
エリは上目遣いに俺を見てきた。
成人している男がたとえ妹といえども同じ部屋に二人でいるのはどうかとは思ったが、俺は泣きそうになってすがってくるエリを突き放すことなんて到底出来なかった。
俺はエリが安心して寝つくまでベッドの傍で手を握ってやったのだ。
エリの手は小さい時から温かかったが、それは大きくなっても変わっていなかった。
その温かさは俺の心の底まで暖めるほどだった。
その翌日だ。俺が母上の部屋に呼ばれたのは。
母上は高熱を出してゼイゼイ言っていた。
「母上!」
俺は慌てて母上に駆け寄った。
途中で侍女たちが止めようとしたが、俺は無視した。
俺は言動で何をしでかすか判らないと騎士や侍女たちの一部からも怖れられていた。
そんな俺だから流行り病も俺を怖れて逃げ出すだろう。俺はそう信じて疑わなかったのだ。
「レオン!」
母上が俺の手を握ってくれた。それは病人の手にしては力強かった。
「エリをお願い」
母上は俺の手を握って頼んで来たのだ。
俺は大きく母上に頷いたのだ。
言われるまでもなかった。3歳の時から俺はエリの面倒を見てきたのだ。たとえ母上が亡くなったとしてもエリを見捨てるつもりは毛頭なかった。
「母上、大丈夫です。私のこの命のある限り、一生涯エリの面倒は必ず見ます」
俺ははっきりと母上に誓ったのだ。
それを聞くと母上は安心したように眠ってくれた。
母上が亡くなったのはその翌々日だった。
俺達は知らせを聞いて、慌てて母上の病室に行った。
母上は真っ白な顔をして、ベッドの上に横たわっていた。
「お母様!」
エリの悲鳴が聞こえた。
俺はエリを慌てて支えたが、エリは気を失っていたのだ。
エリはそれから高熱を出して3日間目を覚まさなかった。
余程ショックが大きかったのだろう。
父に次いで母まで失ったのだから。
俺は誰がなんと言おうが、エリが目を覚ますまで枕元にいてやったのだ。
「お義兄様」
だからエリが目を覚ました時、真っ先に俺の姿が目に入ったはずだ。
目を開けたエリの目が死んでいた。
「お義兄様、お母様は?」
エリの問いに俺は首を振るしか出来なかった。
「そうなの……」
エリは目をつぶった。
その両目から涙が伝わっては落ちた。
俺はハンカチでその涙を拭いてやった。
「お義兄様」
エリが俺の膝に抱きついてきた。
俺はその泣いているエリの頭を抱きしめてやったのだ。
母上の葬儀は国葬で行われた。
母上は我が母に遠慮して皇后位につく事を良しとされなかったが、亡くなった後に父の皇帝から皇后位を贈位されたのだ。
そして、国葬の後、母上は剣聖バージルの横に埋葬された。皇后エミリーとして。
バージルの後ろに我が母の皇后の墓があった。父は亡くなったら皇后の横で母の後ろに葬ってもらうつもりらしい。
その葬儀の間中、エリは弟のシスの手を繋いで気丈夫にも耐えていた。
その夜だ。俺はエリのことが心配で寝れなかった。
そっとエリの部屋を覗くとエリ付きの侍女のアリスが心配そうにドアの外から中を窺っていた。
近付くと中から押し殺したようなエリの泣き声がした。
俺が近付くとアリスは驚いて俺を見たが、俺が扉を開けるのを咎めなかった。
中ではベッドに突っ伏してエリが泣いていた。
「大丈夫か?」
俺が聞くと
「お義兄様!」
驚いてエリは涙を拭って俺を見た。
「お母様がもういないんだって思ったら、急に涙が出てきちゃって、泣き止もうとしても止まらないの」
俺はそう言って泣くエリを抱いてやった。背中をトントンしてやる。
昔はそうやってエリを良く寝かしてやったのだ。
「お義兄様。エリはもう子供じゃない!」
エリがムッとして言ってきた。
「ああ、そうだな。エリはもう大人だ」
俺はそう文句を言うエリに頷いてやったのだ。
「大人になったのに、涙が止まらなくて」
「良いんだよ。エリ、泣きたい時に泣けば」
「お義兄様」
エリは思いっきり俺に抱きついて泣き出したのだ。
俺はその背中をまたトントンしてやった。
「お義兄様。今日は昔みたいに一緒に寝てくれない?」
エリが俺に頼んできたのだ。
そう言えば俺はエリが小さい時は、特にシスが生まれたばかりの頃は母上がシスにかかりっきりだった事もあって、さみしくしていたエリと良く一緒に寝てやった事を思い出した。
「他の奴には内緒だぞ」
俺はそう言うとエリのベッドに入ってエリに添い寝してやったのだ。
エリは俺の胸で泣くだけ泣くといつの間にか寝ていた。
俺はそっとそのエリの涙の跡をハンカチで拭いてやった。
「エリ、俺はどんな事があってもお前の面倒は見るからな」
俺はそうそっと呟くと、そのエリを抱いてその日は寝てやったのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
後一話くらいお義兄様視点で書いて、また話をエリーゼ視点に戻します。
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