お義兄様と楽しく踊ったら、王子に婚約破棄されました
「本当に、もう、お義兄様は何やってくれるのよ!」
私は完全に頭にきていた。
あの後、お兄様の傍若無人さにおそれをなした学園長の怯え切った挨拶には、完全に皆は興ざめしていた。怒り狂った王子の「帝国のいかなる圧力にも負けない」と言った皮肉も面の厚いお義兄様はびくともしなかった。
その後の帝国から来たお祖父様の名代でもある外務次官で従兄弟のパウル・ロザンヌお兄様の挨拶は、お義兄様の態度に必死に言い訳してくれていた。
「ふんっ、そんな言い訳なぞ、する必要はないのに」
お義兄様は憤っていたが、少しは言い訳しろと私は言いたかった。
そして、ムカついた私は取ってきた目の前の大量の食料を自棄食いしていたのだ。
「凄い、エリーゼ、大きな口がカバみたい」
シャロットの一言にさすがの私も一瞬固まった。
でも、もうカバでも良い。
もうこうなったら、カバでも良いのだ!
絶対に王子との婚約は無くなった。折角今まで私なりに頑張って来たのに!
まあ、王子が公爵家のセリーヌを伴って入ってきた事で無いことは判っていたが。
もう少し穏便に済ませたかった。
このままでは婚約破棄、断罪コース一直線ではないか!
私は完全に切れていたのだ。
「エリーゼ、今まで本当に楽しかったわ」
「私もよ」
クラスメート達が次々に卒業の挨拶にきてくれた。
「あなたは、立派なお兄様と帝国に帰るの?」
皆、その私を心配してくれるんだけど。
「私としては、例え、何があってもこの国に残るつもりよ」
私としては例え、王子に婚約破棄されても、この国にいたかった。
なんか、後ろから鋭い視線が私に降り注がれるが無視だ。
「しかし、エリーゼ様、一度はお帰りにならないと、お義父様が黙っていらっしゃらないのでは」
後ろから、侍女のアリスが忠告してくれた。
たしかにやばいかも。
休みの度に、何故帰って来ないと、文句の手紙がよく来ていた。こちらの国で、店の立ち上げとか、友達と旅行とかで、とても忙しかったからなんだけど、さすがに今回は帰らないと不味いかもしれない。
私が、考えていた時だ。
いきなり、音楽が鳴り出したのだ。
舞踏会の時間になったみたいだった。
普通は、殿下と私が最初に踊って、その後に舞踏会が始まるんだけど……
広場の中央を見ると、アンドレ王子が、セリーナと踊り出そうとしていた。ついに、アンドレは、私に遠慮しないことにしたらしい。
まあ、ここに来るのにセリーナをエスコートしてきた時点で判っていたことだけど、改めてこの現実を見せられて、私はショックを受けていた。
でも、その時だ。
茫然としている私の手を、いきなりお義兄様がとって立ち上がってくれたんだけど……
「えっ?」
「踊るぞ」
お義兄様が言ってくれるんだけど、確かに帝国の卒業パーティーはお義兄様と私が最初に踊り出したけれど……あれは帝国だからであって、ここはサンタル王国なんだけど……
「エリ、今日はお前が皇帝陛下の代理だ。属国に好きにさせてはおけん」
「いや、皇帝陛下の代理は私と言うよりはお義兄様でしょう」
「なら一緒だ。付き合え」
お義兄様はそう言って笑うと、私を連れて強引に踊り出したのだ。
私は反論する間もなくお義兄様に付き合わされて踊らされたのだ。
私はお義兄様とは散々踊ったから息もぴったりだった。
昔は私も踊るのが下手で、相手の人の足をさんざん踏んだから皆私とは踊りたがらなかったんだけど、お義兄様だけは私に付き合ってくれた。そして、私がお兄さまの足を間違えて何回踏んでも怒らなかった。
お義兄様は勉学に執務に鍛錬と忙しいはずなのに、私が踊れるようになるまで何回も付き合ってくれたのだ。
お義兄様は運動神経も良くて、下手な私にも合わせて踊ってくれるので、私はとても踊りやすかったのだ。
アンドレ王子はお兄様と比べると下手で、偶に足を踏まれたりして最悪だった。
その点お義兄様は完璧に私に合わせてくれて、久しぶりに踊ったけれど、本当に楽しい!
アンドレ王子の事は気になるけれど、強引なお義兄様といると、悩んでいる暇も無かった。
お義兄様は上背もあって、見た目も麗しい。そんなお義兄様が踊っているといつも注目を浴びるのだ。その隣に地味な私がいても本当に目立つのだ。
「まあ、エリーゼのお兄様、素敵」
「なんで、あんなに優雅に踊れるの」
「凄い。うちの殿下とぜんぜん違う」
クラスの皆がお義兄様を褒めてくれていた。
「踊るの下手なエリーゼも上手く見えるから凄い!」
最後のムカつくコメントは絶対にシャロットだ。
アンドレ王子は私達の踊りが気になったのか、こちらをチラチラ見てくるんだけど。
そんなよそ見して良いのか?
私が思った時だ。アンドレの足とセリーナの足が絡まったのだ。二人はもんどり打って盛大にコケてくれた。
どっと私のクラスを中心に失笑が起こった。
ふんっ、私をないがしろにするからだ。
いい気味だ!
思わずニコリとしてしまった。
「さあ、エリ、行くぞ」
「えっ?」
お義兄様が私に声をかけると同時に私を回転させてくれたんだけど、いや、それ、苦手だから!
何とか回れたけれど、
「お義兄様」
むっとしてお義兄様を睨みつけると、
「出来るじゃないか」
と言って、笑ってくれるんだけど、本当にもう意地悪だ。
でも、そのおかけで全くアンドレらの事を忘れていた。
音楽が最後のクライマックスに来た。
そして、最後のフィニッシュだ。
二人でポーズを決める。
私達は見つめ合って微笑み合ったのだ。
私達はきちんと踊り切ったのだった。
「キャーー」
「ブラボー」
「凄い」
皆一斉に拍手してくれた。
なんか、3年間、このサンタル王国でやってきたことが全部報われた気がしたのだ。
コケて地面に座り込んでいるアンドレらなんて誰も見ていなかった。
ふんっ、人をコケにするからよ、と私が少しも思わなかったと言ったら嘘になるけれど。
まあ、でも、完全にどうでも良くなっていたのだ。
久し振りにお義兄様と踊って本当に楽しかった。
しかし、私はゲームの強制力を甘く見ていたのだ。
多くの人の駆けてくる音がした。
「きゃっ」
入口あたりで生徒たちの悲鳴が聞こえる。
どうしたんだろうとそちらを見ると、続々と騎士たちがこの会場内に入り込んできたのだ。
慌てて、トマスさん等が私達の周りについてくれるが、その周りをぐるりとサンタル王国の騎士たちが囲んでくれたのだ。
そして、騎士たちに守られてアンドレが前に出てきた。
「エリーゼ・アルナス、貴様との婚約をここに破棄する」
アンドレは高々と宣言してくれたのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
ついに、エリーゼは騎士たちに囲まれて婚約破棄を宣言されてしまいました。
エリーゼの運命や如何に!
続きは今夜更新予定です。
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