お義兄様と仲直りしました
私は完全に切れて、布団にもぐり込んでいた。
「本当に信じられない! あれだけ、約束したのに!」
私は怒りで頭が沸騰しそうだった。
12歳の時だ。
王宮に血まみれのお義兄様が担ぎ込まれてきたのだ。
「お義兄様!」
私が慌てて、駆けつけた時はお義兄様は虫の息だったのだ。
聞くところによると、ゴブリン退治で巣穴にお義兄様が攻め込んだそうだ。
お義兄様の馬のレッドはその日も早くて、残りの騎士たちが追いつく前に、お義兄様はゴブリンの巣に潜り込んだのだ。その穴の中にサラマンダーが潜り込んでいたのだ。お義兄様は、ゴブリン討伐に夢中で、サラマンダーに気付くのが遅れたのだ。
爆裂魔術で、サラマンダーは、倒したけれど、お義兄様も重傷を負っていた。
私は担ぎ込まれたお義兄様を見て頭が真っ白になった。
お母様が亡くなってそんなに経っていないのに、お義兄様までが死ぬのは耐えられない!
私は医師や癒やし魔術師たちが必死に治療するのを部屋の外で、ただただ待つしか出来なかったのだ。
お義兄様はなんとか一命をとりとめたのだが、私はまんじりとも出来なかった。
そして、意識を取り戻したお義兄様に私は号泣したのだ。
お義兄様はあまりのことに呆然としていたが、その時に約束したのだ。
二度と皆を置いてけぼりにして一人で先に行かないと……
あれだけ約束したのに、それを破って一人で突撃するなんて許せなかった。
「エリーゼ様。ご飯が出来ましたけれど……」
私が出て来ないので、アリスが心配して見に来たが、
「いらない」
怒っていた私は食事なんて欲しくもなかった。
外は結構やかましかった。
いつの間にか帝国がこのアパート自体を買い取っていたみたいだ。
空いている部屋に皆を泊まらせるそうで、馬のいななきも聞こえた。
そう言えばお義兄様の赤兎馬、「レッド」もいるんだろうか?
私はガバっと起き上がった。
そう言えばまだ、レッドには挨拶していなかった。
私は机の上に置いてあったりんごをポケットに入れて、そっと部屋の外に出た。
皆、庭でバーベキューしているみたいでこの部屋には誰も残っていなかった。
私はそのまま、裏の厩に行ったのだ。
厩の中では、レッドは真っ赤だったのですぐに判った。
「レッド」
私が声を掛けると
「ヒヒン!」
レッドは嬉しそうな鳴き声を上げて、近寄ってきたのだ。
「しーーーー」
私が指に手を当てて言うと判ったみたいで静かに寄ってきてくれた。
「久しぶり、元気にしていた?」
私の声掛けに鼻を寄せてくる。
私はレッドを抱き締めたのだ。
そのレッドが私のポケットのあたりに顔を寄せてくるんだけど……
「あっ、ごめん、りんご持ってきたんだ」
私はりんごを取り出してレッドにあげた。
バリバリとレッドがりんごを食べてくれた。
「美味しい?」
私が聞くと頷いているんだけど、本当だろうか?
「いつもお義兄様が無茶ばっかり言ってごめんね。嫌なら拒否して良いんだからね」
私が言うと
「ヒヒーン」
そういなないて私に顔を擦り寄せてきた。
「余計なことはレッドに教えないでほしいんだけど」
後ろからお義兄様の声がした。
「ふんっ、約束を破ったお義兄様とは口をききません」
私がむっとして言うと
「いや、エリ、悪かったよ」
お義兄様が慌てて言うが私は無視だ。
「エリ、本当に悪かったって」
私の真横に来て拝んでくれるんだけど……
そんなのでは許さないのだ。
「ふんっ」
明後日の方を向いてやったのだ。
「いや、エリ、本当に悪かったって」
お義兄様は言うんだけど、
「だって、昔、死にかけた時に、二度と一人では行かないって約束したのに!」
半分泣き声で私が言うと、
「すまん。俺もむしゃくしゃしていて、命なんてどうでもいいって思っていたんだ」
お義兄様がとんでもないことを言うんだけど……
「後で悲しむの私達なのに! どうして、自分の命を粗末にするの?」
ムッとして泣きながら言うと
「いや、悪かったって、本当にすまん」
お兄様が私の前で拝んでくれて、
「もう、ばかばかばか」
私はお義兄様の胸を叩いたのだ。
「悪かった」
お義兄様は叩いている私を抱き締めてくれたのだ。
私はその胸で少し泣いた。
もう学園を卒業する年齢なのに、未だにお義兄様の胸で泣くっていうのはどうかなとは思うけれど、涙が止まらなかったから仕方がないじゃない。
ひとしきり泣いて、私は落ち着いた。
「もう二度と、一人で突っこんで行ったりしたら駄目よ」
私が言うと、お義兄様は頷いてくれた。
「でも、なんで、お義兄様がむしゃくしゃしていたの?」
私は不思議に思って聞いていた。
顔良し、背もよし、身分も良しの3高なお義兄様なのだ。
自分の思い通りに行かないことなんて普通はないと思うのだけど……
「いや、ちょっと」
お義兄様が誤魔化そうとするので、
「ひょっとして失恋したとか」
私は冗談で言ってみたのだ。
そうしたら図星だったみたいで、お義兄様が固まっているんだけど。
「えっ、本当なの。冗談で言ったのに!」
私は驚いた。
地位も身分も顔もいいお義兄様を振る女なんているんだ。
私はまじまじとお義兄様を見た。
「相手は誰なの? 留学先の王女殿下とか」
「いや、その」
私の問にお義兄様がしどろもどろでいるんだけど……
「ぶふっ」
後ろで吹き出した声がした。
「えっ」
慌てて後ろを見ると皆が後ろに揃っていたんだけど。
「エリーゼちゃんにかかったら恐竜将軍も形なしだな」
なんかトマスさんがお腹を抱えて笑っていた。
「お前ら、一体何しに来た!」
お義兄様が怒っていうんだけど。
「いや、デザート」
トマスさんがいちごをお皿に載せて持ってきてくれていた。
「あ、ありがとうございます」
私はそれを一つ口に入れた。
「うーん、美味しい」
この時期のいちごは本当に美味しかった。
「なんか、氷の王子様の威力も、エリーゼちゃんの前じゃ全く通用しないんだな」
トマスさんの言葉に皆笑っているんだけど、
「えっ、どういう事。意味がわからない」
私がキョトンとすると、また皆笑い出すんだけど、何で?
結局、理由はわからずじまいだったんだけど、何か皆がとても残念なものを見るように私を見てくれたんだけど、何故?
義兄の心、妹は知らず。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
次からお待ちかね卒業パーティーに入るはずです。
請うご期待!
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