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ああ、私はなんて優しい女神なのでしょう

 異世界を救った男子高校生が戻ってきたのを見て、私は慈愛たっぷりの笑みを浮かべた。


 ここは神々が暮らす世界の端っこのさらに端っこ。


 上下左右、人間世界でいう白色が広がっているだけの、だだっ広い空間だ。


「ありがとうございます。寛治かんじさん。あなたのおかげで、あなた方に救ってもらう予定だったすべての世界が救われました」


 私は時空をつかさどる神として、興奮冷めやらぬといった様子でこちらを見上げている寛治くんにねぎらいの言葉をかける。


 彼にとって、五つもの世界を救ったことは想定外だっただろうが、私にとっては想定内だ。他の四人は達成不可能で、ここにいる彼だけが達成可能。そういう条件をもとに、彼らに行ってもらう世界を選定したのだから。


 目の前にいる寛治くんにとって、この過程はとても重要だった。


 彼を――いや、今回私のもとにやってきた彼らを真の意味で救うためには、こうするべきだったのだ。


 あ、奏平そうへいくんの事情はちょこっと世界選びのときに考慮したけどね。


「いいって別に。それより、あの約束は守ってくれるんだろうな」

「ええ。もちろん。あなたには恩義がありますから。みんなには真実をばらしません」

「くれぐれも頼むぞ」


 私が与えたミッションをためらいなく達成させられるのに、みんなにはそれを黙っていてほしいと頼む。


 この矛盾にこそ、彼の本当の心が隠されている。


 だからこそ。


 私は神様として、こうすることを選んだ。


 もちろん、彼らと私の利害が一致したってのもある。ただで助けるわけなんかない。世の中がそういう風にできていることは誰だって知っている。


 彼らから願いを叶えたいと頼んできたのだから、私はそれに対する対価として、彼らの境遇を利用して、私の管轄する悪に染まりかけた世界を救ってもらった。


 それだけの関係性に過ぎないのだから、本来であれば、そのとき彼らが叶えたいと願ったことを叶えてあげれば、もうあとは知らんぷり。


 その後の彼らの人生なんてどうでもいいのだ。


 けどまあ、私とかかわった人が不幸になるのは嫌だし、それに。



 ――彼らはものすごく面白そうだ。



 だからこうやって世界選びから色々と気をつかった。


 直接願いを叶えるのではなく、願いを叶えるために能力を与えるという手法を選んだ。


 だって、そうしないと彼らに真の幸せはやってこないから。


 ああ、私はなんて優しい女神なのでしょう。


 もちろん、私は能力を与えただけなので、幸せになる機会を生かすも殺すも、彼ら次第なんですけどね。


「あっ、もうすぐ皆さんが戻ってきますね。早く倒れたふりをした方がよいのでは」

「そうだな。嘘は絶対にばらさないでくれよ」


 最後にそう念を押した寛治さんは、私の「わかりました」という返事を聞いた後で、人間世界の言葉で表現するなら床? の上に倒れ、目を閉じた。


 そんな彼を見つつ、私は少しだけ考える。


 叶えたいと思っている願いを叶えることが幸せとは限らないのですよ、と伝えた方がよかっただろうか、と。


 だって、人間はいつだって自分のことを〝分かってなさすぎる〟からね。


 数多くの小説の中から、この作品を選んでいただき、誠にありがとうございます。


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 たったそれだけのことが、作者に感動と勇気と意欲をもたらします。


 よろしくお願いいたします。

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