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バネトビ草 と 煙砲茸(スモークバルーン)

 写真を撮り終わった後、これからの予定を丁寧に説明しながら、周りの景色の解説を始めるラシェルさん。

 そんなことより早く降ろして欲しかった…。


「では、次に行くためにちょっとした体験をしていきましょうか」

「体験?」

「失礼しますね」


 ラシェルさんが指を振るうと、ボクの周りに透明な膜が張られて包まれる。


「じゃあ行きますね」

「え?」


 ラシェルさんが一言残して浮遊感を感じる間もなく、空気積層石(エアフロート・セル)の積み上がった頂点から跳躍した。


「うわぁぁぁああああっ!!」


 飛び過ぎっ…!

 空気積層石(エアフロート・セル)の巨岩地帯を抜けて落ちる───と思ったら、ふわりとした浮遊感とともに、流れていた景色が停滞する。


「大丈夫ですよ。これがありますから」

「それって…」


 ラシェルさんの手にあったのは、さっき魔力を注いで空気の層を取り払った空気積層石(エアフロート・セル)


「これがその魔道具(ペンダント)に含まれている機能の一つですね。落下の際に速度を緩和してくれるので、もし落ちたとしても大丈夫ですよ」

「そ、それを確認させるためにわざわざ…?」

「それもありますけど、もう一つの物をご案内したかったので…すみません」


 もう一つ?

 話している間に地面が近付き、グルグルと渦を巻きながら上を向く植物がはっきりと見えてくる。


「よく見ていて下さいね?」


 ラシェルさんがその植物の上へと着地すると、それに合わせて縮んでいく。


「え? うわぁ…!」


 と思ったときには、再び空へと飛び上がっていた。

 改めて下を見ると、植物がビヨンビヨンと左右に頭を揺らしていた。


「これって?」

「ふふっ、もう一つ行きますよ」


 答え合わせをしようとラシェルさんの顔を見ると、進路先を手で示した。

 そこには、風船のように膨らんだ袋のような物があり、同じようにラシェルさんが着地すると、白い煙とともに勢いよく上へと高く舞い上げられた。


「おーっ!」


 こっちはさっきよりも高い。

 下を見れば、袋が白色の煙のようなものを吐き出して(しぼ)み続けている。


「先程の、渦を巻いた植物はバネトビ草と言いまして、上に乗った物をああやって遠くへと飛ばす性質がありまして、虫系や獣系の魔物が飛ばされることで生息圏を広げるのに利用することもあるんですよ。ほら、あんな感じに」


 ラシェルさんの示す方向を見ると、黒い丸や青い丸が打ち上げられては風に流されていくところだった。

 空気の層に立つのが怖過ぎて見えてなかったけど、さっきから際限なくあっちこっちで飛んでいる。


「あれだけ飛ばされて大丈夫なんですか?」

「ええ、魔物ですから身体が頑丈なものも多いですし、滑空ぐらいはできるような魔物が多いですからね。あ、丁度見ることができそうですね」


 渦を巻いた植物───バネトビ草の根元から一匹の緑色の芋虫…いや、ダンゴムシかな。それが登っていくところだった。


「ちなみに、あの渦を巻いている部分が根になっておりまして、それを登る時に揺らされて周りの葉から落ちる小さな新芽が、虫系の魔物の節や触覚、獣型の魔物の毛に絡まって運んでもらうんですよ」

「共生関係になっているんですね」

「そうなんです。そろそろですかね…」


 話している間にも白い芋虫が頂点へと登っていき、そのたびに渦を巻いた根の部分が重みで地面に圧縮されていく。

 根が弓の弦を絞ったかのように震え、解放される時を待つ。

 緑色のダンゴムシが渦の中心…根の先端へと辿り着くと、跳ね飛ばされて空高く舞い上がる。

 風の影響もあってか、遠くへと飛ばされて落ちていく。


「け、結構飛んでいきましたね…」

「今のは風魔法を使って距離を稼いでいたみたいですね」

「道理で…」

「それで、その次に乗ったのがあちらの袋みたいなものですね」


 地面から白い糸で繋がっている風船のようなものがあった。


「あれは煙砲茸(スモークバルーン)というキノコですね。あれは、成長するときに風の魔力を取り込んで傘に貯め込むんです。そして、ある程度育つと傘を空中に浮かべて飛ばす準備をするんですよ。その状態で周りから刺激されると…」

「破裂してああなる…ってことですか?」

「正解です。吹き出した煙みたいなものは、胞子の塊なので吸い込むと体内に定着したりして危ないんですけど…」

「え!?」

「そのペンダント型の魔道具はそういった毒や混乱、幻覚などの症状も防ぐ機能もありますから」

「いや、怖いんですけど…」

「大丈夫ですよ。今のところ、体内で定着して亡くなったり後遺症が残った方はおりませんので(ニッコリ)」

「………」


 怖いわっ!


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