裏話
「今日はリデルの練習にお付き合いくださいまして、誠にありがとうございました」
「気にしないでください。こちらも安くツアーに参加させていただきましたし」
「そう言っていただけると幸いです。リデルは、勉強熱心で色々な知識を持ってはいるのですが、上がり症で人前で話すことが苦手なので、どこかで経験を積ませられれば…と思っていたのですが」
今回のツアーの初めの方は、ラシェルさんも顔に出ているぐらいだったけど。
「始めはそうだったかもしれませんけど、最後の方は慣れもあってか大分詰まらなくなりましたし」
「私たち案内人相手でも緊張してしまっているので。注目されることに慣れるか、せめて顔見知りがいる状況なら仕事ができるのかも…と。色々と考えては試しているところだったので助かりました」
「いえ、その…案内人の方は個性的な人が多いですから、そんなに気にしなくても大丈夫だと思いますけど…」
種族も別々だし、冒険者証の翻訳機能の所為なのか、話し方も様々だ。
そこに一人、オドオド喋る案内人の人がいても私は気にならないし。
「…そうですね。少し様子を見た方が良いかもしれませんね」
ラシェルさんも、先輩としての顔するんだなぁ。
ちょっと新鮮。
「それはそれとして…次はどうされますか?」
「次は…そうですね」
冒険者証を操作して、ツアーの情報に《アクセス》していく。
「うーん…」
炎と溶岩によって形作られる場所、宙に浮かぶ階段『天空の回廊』とその先にある『天界』、雲が地面になっている天空の白浮島、全てが四角い領域『箱の世界』、毒と瘴気に満たされた世界、光と闇の生み出す自然体験、ダンジョン攻略アトラクションと魔法体験、様々な世界の植物を展示した植物園、魔物と触れ合いができる生物園、天まで届く世界樹観光と樹霊種の家で宿泊体験、etc…。
「………」
悩む…。
どこも魅力的なんだよなぁ…。
「…この場所でお願いします」
「承りました。それでは…」
いつも通り、いくつかのことを決めた。
「またのご来訪をお待ちしております」