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空気積層石(エアフロート・シェル)

「お手をどうぞ」

「…ど、どうも」


 浮遊フロートから降りると、不思議な景色が広がっていた。

 地面から離れた位置に石の板がいくつも浮いており、空中への階段の様になっている。


「こちらは空気積層石(エアフロート・シェル)という風の層を生み出す魔石の一種が数多くありまして、生み出された空気の層が他の岩や石などを支えているんですよ。試しに乗ってみますか?」

「だ、大丈夫なんですか?」

「はい。あの上の方の岩はここからでは小さく見えますけど、私たちより大きくて重い岩が乗っていますから、人が乗るぐらいでは大したことはないですね」

「そんなに!?」

「大体の実験において、このぐらいの大きさの小石でも100kgほどは耐えられるというデータもあるので、空気の層の上に乗ってジャンプしても大丈夫な程に頑丈なんですよ」


 このぐらい…って、親指と人差し指で作った(まる)で100kg…!?


「この辺りなら、砂埃などが被っていて空気の層の表面が見えると思います」

「確かに…」


 見えるけど。

 差し出された手を取り、恐る恐る空中へと足を踏み出す。


「うわっ!?」


 すっごいふわふわだ…!?


「お、おー…! なんだかすごいですね…!」


 踏んだ感触は、空気の層っていうより文字通りの岩みたいな…踏み固められた道路のような硬い踏み心地なんだけど。

 それがそのまま沈み込んですごいヘンな感じ。

 バランスボールの上に板でも置いて乗ってるかのような…。


「…足裏と身体で感じる感触に齟齬(そご)があって、物凄いチグハグな感じなんですね…!」


 硬いけど柔らかいみたいな…相反する感触が同時にあってメチャクチャ変だ。

 グラグラ揺れる感じはしないし、しっかりと足裏に抵抗が返ってくるけど、透明だから脳がバグりそう…。


「砂とかがあるから空気の層があるのは分かるんですけど、何も知らなかったらぶつかりそうですね…?」

「ふふっ…そういう事例も昔はありましたよ。全力で走っていた人がぶつかって亡くなったとか、怪我をしたとか、崩れて生き埋めになったとか」

「こわ…」


 透明な石や岩が降ってくるって考えると、怖すぎでしょ…!?

 生き埋めになる時は、その様子が見えるから二重の意味で怖いわ。


「まあ中心に空気積層石(エアフロート・シェル)が見えてますから、知っていれば対処は簡単なんですよ。それに…」


 ラシェルさんは空気の層に手を触れると、その手から緑色の光が溢れ出して、空気の層の中へと入って消えていく。


「どうぞ、触れてみて下さい」

「………あれ?」


 さっきまで確かにあった空気の層が消えてなくなり、 中にある石に触れることができた。

すると、空気積層石(エアフロート・シェル)の周りにあった空気の層が消えてなくなり、


「軽い…」


 試しに手に取ってみると、石と聞いていたほど重くはなく、それどころか鳥の羽根のように軽かった。


「その石は、特定の魔力波を用いて干渉すると、周りに張り巡らせていた空気の層を取り込んで軽くなるんです。今見せたのは加工するときの基本で、私たちが乗ってきた浮遊フロートにも使われていますし、何より…その安全装置にも同じ技術が使われていますよ」

「そうなんですか?」


 あの浮遊フロート(黒い板)にも、このペンダント型の魔道具にも、か。


「細かい調整は必要ですけど、とりあえず危険を回避するだけであれば、私どもにとっては大したことがないのは理解できたと思います」

「は、はい。それはもう…」

「では、次に行く…前に。ここで写真を撮っておかれますか?」

「えっと…?」

「ここはですね…」


 ラシェルさんの話によると、ここの空気積層石(エアフロート・シェル)は透明に見えるため、手を振り上げた状態で写真を撮ると、アッパーで石を吹き飛ばしているように見える写真が撮れるのだとか。


「じゃあ、お願いします…!」

「はい。分かりました」


 写真をいくつか撮ってもらったら、浮遊フロートへと戻って空気積層石(エアフロート・シェル)が積み上がった頂点へと案内される。


「ここが空気積層石(エアフロート・シェル)が積みあがった頂点になりますね」

「…下が透明だから怖いんですけど…」

「ふふっ。大丈夫ですよ。お手はいりますか?」

「お、お願いします…」


 空中で待機している浮遊フロートの床から、足を差し出して爪先で感触を確かめる。

 だ、大丈夫。ちゃんとある。

 ラシェルさんが立っていて空気の層があると分かっていても、首から下げているペンダント型の魔道具に安全装置が付いていて保護してくれていると分かっていても…怖いものは怖い。

 魔力が見える人は怖くないんだろうけど、ボクには透明にしか見えないし。

 これならまだガラスとかアクリル板の方が、目を凝らせば見える分だけ安心できるぐらいだ。


「………」

「………ふふっ」

「笑わないで下さい…こっちは必死なので」

「笑ってませんよ?(ニッコリ)」

「………。手、離さないで下さいよ?」

「大丈夫ですよ。お客様の安全は保障しますから」


 ………くっそ、この美女(イケメン)め。

 えーい、安全だと頭では分かっているんだ。

 ………行くぞ!

 3・2・1…!


「っ! ………はぁ…」

「頑張りましたね」

「やめて下さい。頭、撫でるぐらいなら手をもっと強く握ってて下さいよ! 怖いんですから…!」

「ふふっ…分かりました。それでは、写真を撮るために手を離しますね」

「ちょっと話聞いてましたっ!?」

「でも、ここで撮る写真は空中で立っている不思議なものが撮れるのでオススメなんですけど…」

「ぐっ…」


 確かにそういう写真は撮りたいけど…っ!


「も、もう少し待って下さい…」

「今日の予定もありますから、さっさと撮りますよ」

「待っ…!?」

「ほら、大丈夫」

「は、早く…! 早く撮って下さいー!!」

「ふふっ、分かりました。じゃあ両手を左右に広げたポーズを」


 くそぅ、早く終わってくれぇー!!


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