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0日目(日曜日)
ここまでする気はなかった。
住宅街の夜景を眺めながら、飛田聡志は思った。
夕方、聡志は自宅を飛び出した。聡志に目指す場所はなく、聡志は山に続く道を登った。
日が暮れて、山頂付近を歩いていた聡志は、近づく赤色灯に気づいた。
聡志は道路脇に身を隠そうとした。しかし乗り越えたガードレールの先に、土手はなかった。
聡志は崖を転落した。ただ途中で、木に引っかかった。
聡志はライトで照らされた。
聡志を呼ぶ声が聞こえた。
しかし聡志は、木の枝を枕にして、何も答えなかった。
鈍重な痛みはあった。大事になってしまったとも、聡志は思っていた。
ただ、それよりも、聡志は満足していた。
今年の3月。聡志の中学校でただ1人、県下一の進学校であるK高校に合格した時の、それに似ていた。