バルディメス城 城内
やっと終わったぁぁぁぁ……!
何がとは言いませんが、訳あってあんまり小説書けない日が続いてしまいまして、少なからず待ってくれてた方すみません。
鋭い目の女性が剣を、門柱に設置してあるセキュリティ装置のようなものに翳す。確か、心喋刃だっけか。
ピピピ
いかにもというロック解除音がなった。
そして――――
ガチャリ
大きい門の鍵が開くような音がした。
ギギギギギと音を立てて中の方に開いていく。
心喋刃を肩に担いでいる鋭い目の女性の顔を見る。
左の頬を上げて微笑んでいる。
ギギギギギ。
門の扉を見ると、扉が開ききっていた。
そして、門の隙間からうっすらとは見えていたが、城の中が現れる。
目の前には小さな橋が架けてあった。その橋の下に流れている水流は、曲がるようにして右にも左にも続いていた。
橋の奥には、これまた大きい扉があった。
「驚いたか?」
「…………はい」
鋭い目の女性はそう言って門を潜り目の前の橋を渡る。
俺はずっと門の前を1ミリも動かず、城全体を眺めていた。初めてみるこの壮観さは今だけしか味わえないと思った。
「行ーくよ」
カイアさんがそう俺に言った。
前を見ると、鋭い目の女性はもう橋の10分の7は渡っていた。
俺も足を橋に動かす。
「バルディメス城、初めて見るんだよね?」
後ろにいたカイアさんが問いかけてきた。
「ああ、うん。初めて見る」
「そっか」
そう言った数秒後。
「すごいでしょ? バルディメス城」
自分のもののように自慢をしてきた。
でも、それは事実だった。
「うん……ほんとにすごい。こんなでっかい城初めて見る」
正直な気持ちを言うとカイアさんは、満面の笑みを浮かべた。すごい嬉しそうだ。
橋に足が触れる。そして渡り始める。
どのくらいだろうか。ざっと50mくらいはあるだろうか。
俺は橋の下に通っている水流の見る
この水流はどこから来てるのだろうか。向こうに続いているのは分かるが、どこかの川から流れてきているのだろうか。
そう水流をよく観察していると、水の中に何かいるのが分かった。
よーく見ると、それは小さな魚っぽい生き物がいた。
「ん……?」
なんだろうか。魚っぽい形ではあるが、色が特殊……というか、あまり見ない色だ。赤と青と緑が混ざりあっている。カラフルとも捉えられる。
「あれはリグブレドルっていうの」
「リグブレドル?」
また知らない名前が出てきた。
「そう、ジールファタンみたいな暖かいところに生息する生き物なの」
「そーなんだ」
「逆に、涼しいところにはリグブレドルの色違いが生息するの」
「へぇ、色違いか」
「でも、色と名前が違うだけで体の構成とか、他はほとんど一緒」
「へー……」
この世界も、環境に応じて住む生物とかも変わってくるって訳か。
リクブレドルという魚類を見ながら、俺は橋を渡りきり城の大きい扉の前に立つ。
鋭い目の女性は既に城の扉の前に立っていた。
「覚悟はいいか?」
「か、覚悟……?」
「まぁ、覚悟する必要もねえな。なんせ今から会う奴は重度のあれだからな」
覚悟以前に、城に来た理由が人に会うためだったことに今気づいた。
鋭い目の女性は1歩前に足を踏み出した。すると
ガチャリ
通常の扉の開閉音よりもゆっくりな音を出して、扉が開ききった。
城内が姿を現す。
「わぁ……」
今まで驚きすぎて声ではそれほど驚いてないが、内心かなり驚いている。というか感銘を受けている。
今までこんなにも⦅中世の城⦆のような内装を見たことがなかった。日本の城とは全く違う、豪勢で迫力がある。
中央の奥には曲線の階段がある。そして壁、床、天井
全てが金色で覆われている。
壁にはゴッホとかピカソが書いてそうな絵画が飾ってあって、天井にはかなり大きいシャンデリアが1つ中央にぶら下がってる。
この城内の形は六角形に近く。いかにも城の中って感じだ。
そしてびっくりするぐらい城内が広い。
「それじゃ、行くぞ」
そう言って鋭い目の女性は城内へせっせと入っていく。
俺とカイアさんもそれに続く。
なんだかもう信じられないな。いや、信じてるから前に進めてるのか? もうそれさえ分からなくなってきてる。
あれ? 俺なんでここにいるんだっけ…………
そうだ、あの小屋でスイッチ押したらこの世界に辿り着いてたんだ。
え? それってやばくないか? 普通に考えて……
ああそうだった。さっきもこういう考えに至って結局
混乱しちゃったから、考えるのやめてたんだ。
……まぁいいか。今はとりあえず、目の前の出来事に励もう。
そう考えてるうちに、俺たちは階段の1段を上っていた。
1段を機にどんどんと階段を上る。
この階段はあの宿舎の床と違って、音が著しく鳴り響く。
俺が履いている靴は至って普通の青いスニーカーだ。
ハイヒールでも履かない限り鳴らなさそうな音を鳴り響かせながら、15段くらいある階段を登りきった。
すると、登りきった階段の先にはあのワープ装置があった。
宿舎にあったワープ装置と、形はなんら変わらなかったからすぐに分かった。
だが、サイズが宿舎のものよりかなり大きい。
俺たちはそのワープ装置まで近づく。
「侑人、お前あの装置を知ってるか?」
ワープ装置に指を指し、そう言った。
「あ、はい。ワープするんですよね?」
「ああそうだ。モバデバという装置だ」
そう言うと鋭い目の女性は、説明しなくても大丈夫そうだな というような顔をした。
モバデバ……確かカイアさんがそう言ってたな。このワープ装置、モバデバって言うのか。
モバデバの目の前に行くと、鋭い目の女性がモバデバに乗った。
サイズが大きいから、俺とカイアさんもすんなりとそのモバイルの枠に入れた。
……あれ……
「ワープしない?」
「ああ、そこまでは知らないのか」
そう言い、鋭い目の女性は右手を顔よりも斜め上に掲げて、そのまま人差し指を出す。その人差し指を下に向かってサッと下げる。すると。
「……出た」
その鋭い目の女性の前には、もはやデジタルを超えた
番号が表記されてるパネルが生成されてきた。
生成されたパネルには1〜10の数字が表記されてあった。
「モバデバには2種類あるんだ。設置されている建物の階が2階までならこういうパネルは出ない。だが2階以上ある建物はこういうパネルがないと、階を選べない」
そう言いながら、鋭い目の女性は最上階手前と思われる
9階のボタンを押す。
「ワープするぞ」
「あ……」
気がつくと、俺の景色は変わっていた。
眼前にあった金一色の壁や大きな扉はもうそこにはなかった。
さっきの目立つ色のオンパレードとは違って、この階は地味な色のオンパレードだ。
壁や床、天井全て褐色系だ。
俺から見て本棚が右にも左にも、満遍なくダーッと並べられていた。
これはこれで壮観だ。
中央には5段くらいの階段がある。
そして本棚に囲まれた机が1つ置いてあって……ん?
「誰か……いる?」
「お出ましだ、侑人」
「え?」
お出まし……? なんのことだろう。
そう言い、俺たちは机に向かう。
向かっていると机の椅子に座っている誰かが立って右からこちらに向かってくる。
「あの、あそこで立ってる人は……」
そう言いかけ、その誰かに近づく。すると。
「あ……あなたは……!」
「やぁ、どうも」
机にいた誰かは、あの中庭で逢った男の人だった。
読んでくれてありがとうございます。
次話でやっと話が見えてくると思います。




