謎すぎる感覚
大増5000文字!!!!!!!…………やってみたかった。
「(テレビ)……が老化して納屋から突如出てきたという不可解な事件から55年が経とうとしています。警察の調べによると、55年経った今でも、事件の真相は不明のままで…………」
退屈だ。
「侑人ー。そこの箱取って」
「はいはい。よっこらしょ」
何をやっても面白くない。
「ありがと」
退屈だ。退屈すぎる。なぜみんなは笑っていられるんだろう。
「ふぅ、もうすぐで終わるわ……ねぇ侑人」
「ん?」
なぜそんなに楽しそうなんだろう。
「家の左をさ、まーっすぐ行ったところに森あったじゃない。そのそばの森の小道をずっと行けば池があるらしいの」
「んー。森なんてあったっけ?」
「あったじゃな〜い。立ち入り禁止の森があるところ」
俺はずーっと挑戦し続けてきた。
「あそこの周り、結構景色綺麗だから、暇つぶしにでも行ってきたら?」
バスケとか……野球とか……釣りとか……料理とか……
「んー。そうだな、行ってこようかな」
楽しめるのは最初だけ。
「ねぇ、友佳もいってきたら? 箱開けばっかりで退屈でしょ〜」
「私はいいよ。どうせ後でみんなで外行くじゃん」
「あらそう?」
経てばやる気を失う。
「あれ? どっか行くの?」
「近くにある森だけど、父さんも行く?」
「いや、俺はいいかなぁ」
ずっとその繰り返しだ。
「そっか。んじゃ言ってくるよ」
「あ、立ち入り禁止区域には入っちゃダメよ?
危ないから、ちゃんと小道を歩いていくのよ?」
「分かったよ」
母さんが少し微笑むと「次は見つけられるといいね」と言った。
引越ししたてで、まだ慣れないドアから廊下に出て、
慣れない廊下を歩く。
慣れない玄関で、慣れない靴……いや、靴は前と同じだった。
黒一色のスニーカーを履いて、玄関を出る。
「いってきやーす」
以前住んでた家より開閉音が大きくて、それもまだ慣れない。
目に飛び込む日本海の景色。数秒後に慣れないドアの音がまた聞こえる。
さり気なく振り返って【林岡】の表札を見る。
手に持っていたスマホを起動する
「えーっと、mogul map mogul
map」
地図アプリで画面にこの京都府京丹後市の地図を映し出す。画面をアップして初めて知る。
行こうとしている森の名前が
【丹後丘樹林】ということを。
「へぇー。結構ここから近いんだな」
ながらスマホにはちょっとしたトラウマが植え付けられている。だからある程度道のりを把握して、
京丹後の周りを見ながら歩く。
…………気のせいかもしれないが、なんだか懐かしく
思える。
グレータイルの地面。澄み透った自然の空気。周りに建っている古めかしい住宅。
この場所自体、なんだか……来たことあるような気がするんだ。
前にテレビで見た。デジャブ現象という。
既視感がある風景は、
過去に経験した中にある記憶と類似しているという。
似ていれば似ているほど既視感が強くなるらしい。
今懐かしいと思ってる感覚もただの科学で証明出来る現象に過ぎないということだ。
最も何かがありそうで、何も無い。虚しい感覚だ。
『次は見つけられるといいね』
俺はこの言葉の指す意味を理解している。前からずっと言われてきた。
要は⦅いつまでも夢中になれることを探せ⦆という事だ
母さんも分かってるんだ。
俺が極度の飽き性で、心配させていることを。
そりゃあ俺だって見つけたいよ。ずーっと我を忘れる
ほど夢中になれること。
よくテレビで見る、技を極めた人が目の前で、その人にしか出来ないことをやって見せて、
芸能人に拍手される姿を。
思えば、職人やアスリートは、その夢中になれることを探し出して、極めて、楽しんでいるから続けられるんだなと思う。
一体、俺はいつになれば見つけられるんだろう。
そう考えてた次の瞬間、俺の脳裏に何かが過ぎった。
それが何かは分からないが、間違いなく指していることが何かは分かった…………右を指している。
そう思った瞬間。右を向く。
⦅立ち入り禁止区域 入ったらダメ!!!⦆と言う文字と、絵が添えられてある看板が目に入った。
……なんだろう。この気持ちは。好奇心?
いや、まるで成し遂げなければならないような情……
使命感……なのか?
初めての感覚に少し戸惑う。今までこんなことはなかった。
「この森は、熊や猪が出るので、
立ち入ってはダメです。か……」
熊が出るのか、きっと野生の動物が
たくさん生息しているのだろう。
……あれ?
驚くことに、看板の前に踏みとどまっていた足が気がつけば、1歩……2歩……3歩と立ち入り禁止区域に
足を踏み込んでいた。
立ち入り禁止区域の森に完全に入った状態で
もう一度思う。一体何なのだろう。
まるで誰かに導かれているような。
入ってはいけないのに、
どんどん森の奥へと足を運んでしまう。
何故だろう。
進行を辞めれない。
生い茂っている草の上を歩く。
漂う森の張り詰める空気。
雰囲気だけで圧倒されそうだ。
不思議と恐怖心は感じられない。
これもこの誘導される感覚と関係あるのか?
……あれ? いつの間にか小走りをしている。
頭の中で色々考えてて、体まで追いついてなかった。
どういうことなんだ……
いつもなら絶対こんなことには
ならないはずなのに、そう思いながら小走りする。
体の方はもう無意識と言っていいほどだった。
しばらく歩くと、ある建物が見えてきた。
「……なんだあれ……」
小走りしながら森を奥へ進んでいくと、そこには三角屋根の木造の小屋があった。
なんというか……ボロくて、すぐ壊れそうな小屋だった。建ててからかなり経っているのだろう。
ここで我に戻る。考えてみれば、あれだけ誘引しておいて、このボロ小屋の前で今までの勢いが途絶えるということは……
「ここに……入れってことか……?」
そうとしか思えなかった。そうとしか思わせないようなことが起きたんだ。
ゴクッ
唾を飲み込み、少し腹を括る。
俺はそっと苔のこびり付いたドアノブを握り、左に回す
ドアは左に開け……開かない。
そりゃそうだ、
見るからにドアと敷居の境目にも苔がこびりついている
片手でダメならと、両手で握ってドアを思いっきり引いた。
「おぉりやぁぁぁ!!」
バギ ゴギゴギ
「ひ、開いた……」
小屋の内が姿を見せる。
小屋の内には、もう使われていないであろう農具や、狩猟銃が机の上やら棚やら銃立てに荒々しく置かれていた。
「結構散らばってるな……」
外からも若干見えていたが、所々割れた窓ガラスが緑に染まっている。角は蜘蛛の巣だらけ。
そして奥の三角屋根には、ぽっかり穴が空いている。
三角屋根の5分の1は削ったであろう穴だ。
穴からは木漏れ日が注いでいる。
真下には何かの……土台? いかにも映画で見る。実験施設に設置してありそうなものが置いてある。
中を進んでいく。
そして、棚であるものを見つける。
それは、小屋の中で最も目立っていて、最も輝いている 赤い宝石の付いたアクセサリー。
「流石にもう、誰も使ってないよ……な?」
その輝きに魅了されて、思わずポケットに入れてしまう
そしてまた奥へと進んていく。
「なんだこれ……」
そして真ん中にどかんとある机に上には……スイッチ?
指で押せそうな物が置いてあった。
そのスイッチを見つけた瞬間。俺の頭にまた奇妙な記憶が脳裏を過ぎった。
「お……押せ……ってか……?」
スイッチのある机へ向かって進んでみる。というより勝手に動く。
キシキシと床が軋む。
そこでまたやってくる。
あの誘引されるかのような感覚。
!?……更にその感覚はスイッチに近づく度に強まっていっている。
どういうことなんだ……俺に何をさせたいんだ……どうすればいいんだ!
足は愚か、頭まで⦅スイッチを押す⦆ということ示唆さ
れ、行動に移されそうだ。
いや、もう実際移している。
ゆっくりと体を動かせる。キシキシと軋む床は先程よりも大きい。
震えながらも手がスイッチの方へ動く。
すると突然、俺の中の感情のひとつが動き出した。
「う……嫌だ……嫌だ……!! や、 やめてくれぇ!!」
⦅恐怖⦆だ。
そりゃそうだ。こんなよく分からない感覚で入ったことも無い森へと来て、今勝手に手が動いているんだから。
震えながらも俺の左手がスイッチを掴んで、
掌に乗せる。
「い!!! 嫌だぁ!!! ぅ死! 死にたくないぃ!!!!!!」
恐怖で藻掻く俺。
しかし俺の体は言うことを聞かなかった。
謎の感覚に支配されたも同然。
普通精神が対する物を拒むと、体も拒否反応を起こすはずが、起こさなかった。
左手よりも震える右手をスイッチへと近づける。
俺は知る。今まで挑戦してきたことの中で、
厳しいものはたくさんあったが、
こんなに恐怖心で支配されるなんてことはなかった。
ただスイッチを押すだけ。それだけなのに、こんなにも怖い。
未知な感覚故だろうか。もうそんなことを考えてる余裕はない。
「……はぁ……はぁ……!」
…………気が動転しそうだ……もう精神が持たない。
右手がスイッチへと到達する。震えはさっきの何倍も増しだ。
次のステップで最後だということが分かった。あとは右手に力を入れるだけ。
心も体も支配されている。体は謎の誘引に操られるまま。
心は恐怖。恐怖心は何もかもを鈍らせる。人を無力化させる。今まで出来ていたことが急に出来なくなるたった一つの感情。
カチッ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
死にたくなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
もう失神寸前だ。
恐怖がメーターの規定値を超える。そのとき。
バコン!
「はうえ!?」
クルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!!
……声も出ない。
その音はまだ続いてる。
不思議な音を出して現れたのは、透明な…………チューブ?
チューブは土台のようなものから現れた。
なんということか。俺の心は仰天していた。
あんなに恐怖心を植え付けた感情より、今の驚きの方が勝っている。理由などすぐ分かった。
三角屋根の穴を見てみると、透明なチューブが空まで
ずーーーっと続いている。
ずーーーっとだ。途切れることなく。
「は……はぁ……? なんなんだあれ……」
大きさは何となく、成人男性はすっぽり入れるくらいの大きさだ。
にしても……すごい「な、長ぇぇ……」
もう何が起こっているのかよく分からなかった。
感情の切り替えに追いつけていない。
できる限り頭を整理して、今起こっていることを冷静に処理してみた。
「土台……あの土台はなんなんだ……?」
考えてみれば、こんなに薄い土台から空まで続くチューブを、収納しておけるはずがない。なら土台の下から生えているのか? 土から?
意味がわからなかった。
もし地中にチューブが埋められたとしても、それはなんのために? どんな意味でこんな果てしなく続くチューブがあるんだ。
「これ……人が作ったのか……?」
結局頭を整理しても理解出来なかった。理解出来ない現象が起きてるんだ。
しばらくすると、あのクルルルルという謎の音が止まった。
そして俺は次の瞬間、信じられないものを目にする。
チューブの根の辺りからまたチューブがやや下に、
俺の方向に向かって生えて来た。そして床に着く。
そのとき。
小さい……黒……紫? のような色の何かが現れる。
「な、なんだこれ……」
突如大きくなり始める。
そのチューブに続く黒紫の物体は……段々と広がっていく。
その黒紫の物体は……誰が見ても、地球のものとは思えなかった。
放つ異彩なオーラ。触れれば確実に何かが起こる。
身に何かが起こるに違いない。
逃げようと思ったが、足が動かない。
逃げようと思っても逃げれない。禍々しい外形だった。
更に広がり、遂に三角屋根の高さまで来た。
「お、お前は……一体なんなんだ……」
喋るのも精一杯。
そして次の瞬間。
ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルル
「え!? おぅあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
バタン!
激しい吸引が巻き起こる。俺は仰向けに倒れた。
一瞬何が起こったのか分からなかった。俺の驚愕の規定値をも一瞬で超えてきた。
禍々しい黒紫色の物体は突如勢いよく回り出して、俺を吸い込もうとする。
小屋の物が飛び交う。農具が黒紫の物体に当たるが、弾かれる。何故か吸い込まれはしなかった。
だが、今までの誘引はきっとこの黒紫の物体に俺を吸い込ませるための罠としか思えなかった。
これはもう逃げるしかない。そう決断した。
とりあえず手を床に押し付けて、必死に藻掻く。
そのとき足も動いた。体は自分に還っていた。
今出せる全力の力を出し切って、仰向けから立ち上がる
「ぉおうりゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
何か掴まれるものはと、机やらを捜索して、
近くにあった⦅棚⦆に掴まる。
「ぅ…………!!」
本当にものすごく吸引力だ。
掴まっていても引き剥がされそうだ。
ガタン!
「!?」
その音と共に、棚の位置がずれる。
ズズズズズズ
「ク! クソ!!! やっべぇ!!」
棚ももう持たない。あと少しで横に倒れそうだ。
「く………こんな所で終わんのかよ………」
吸われればその先で待っているのは、
⦅死⦆だと思い込んだ。
「……なんも出来ないままぁ!!!
俺の人生終了かよ!!」
まだ続けて取り組めるもの。本気で夢中になれるものに出逢えてないのに、こんな所で死ぬって……
「はぁ……」
もう終わりだ……全部終わり……ずっと挑戦し続けていれば
いつかは夢中になれることに出逢えると思ってたのに。
やっぱ、人生って結局運なのかもしれないな。
どれだけ努力しても運命には勝てない。
そういう形で構成されてるのかもしれない。
棚が倒れる。その瞬間俺の手が棚から離れる。
真ん中の机の下を通過する。
何にも掴まってない俺は、思うがまま黒紫色の物体に引き寄せられる。
足が黒紫色の物体の中に溶け入る。
「すまん……母さん。父さん。
あんまり親孝行できなかった。
風呂洗いと片付けくらいしか出来なかったな。
いつか大人になって稼げるようになればいろいろして
あげたかったのに……」
もう腰まで浸かってしまった。
「友佳も……ごめん。
お兄ちゃんなのにあんまりお兄ちゃんらしいことしてあげれなかったな。
プレゼントとかいつか贈りたかったけど出来なさそうだ」
何も出来ない俺がいなくなっても、悲しんでくれるんだろう。
本当に良い家族を持ったよ。俺は。
『次は見つけられるといいね』
最後に思い出したのが、母さんのその言葉だった。
顔が浸かり、腕が消え、手も消えた。
ちゃんと内容を考えて掲載したのは初めてですね。
面白かったらコメントください!「良かった」とかでもいいです!